ルイ・ロデレール社の醸造責任者、ジャン・バティスト・レカイヨン氏。2015年にはワインメーカー・オブ・ザ・イヤーも獲得したシャンパーニュ界のリーダー的存在だ。
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240年以上の歴史を誇る老舗シャンパーニュ・メゾン、ルイ・ロデレール社が、同社の顔ともいえるスタンダード・キュヴェを35年ぶりに刷新した。その決断を後押ししたのは、世界的な気温の上昇だった。
変わらぬ味わいから、変わる味わいへ
ブドウ栽培が可能な北限に位置するフランス・シャンパーニュ地方。冷涼な気候ゆえ、安定したブドウづくりが難しかったこの土地では、毎年、変わらぬ味わいを目指し、収穫年のブドウにこだわらない、いわゆるノン・ヴィンテージ・シャンパーニュを造り続けてきた。1776年に創業したシャンパーニュ・メゾン、ルイ・ロデレール社もそのひとつ。同社が35年前に発表したスタンダード・キュヴェ『ブリュット・プルミエ』は、一貫性を重視したそのスタイルにより、多くのシャンパーニュ愛好家を長年、魅了し続けてきたのである。

だがそんな伝統的なスタイルを見直す契機が、意外な形で訪れた。地球温暖化である。過去30年間の平均気温は、1961年から1990年までの平均気温に比べて1.3度上昇。この気温の変化に加え、ルイ・ロデレール社が2000年以降、進めてきた有機栽培農法が功を奏し、熟度の高い、高品質なブドウを毎年、安定的に収穫できるようになったのである。そこで同社は35年ぶりに、スタンダード・キュヴェを刷新することを決意。『ブリュット・プルミエ』に変わる新たなメゾンの顔として『コレクション242』を発表したのである。

収穫年のブドウの個性を反映
『コレクション242』の最大の特徴は、その年に収穫されたブドウの個性をシャンパーニュの味わいに最大限、反映させることにある。従来のノン・ヴィンテージ・シャンパーニュは、どの年のブドウを、どのようにブレンドしているのかさえ明らかにしていなかったが、『コレクション242』では、2017年ヴィンテージのワインを56パーセントの比率でブレンド。シャンパーニュの風味に独自のスタイルや深みをもたらすリザーヴワイン(原酒)の収穫年もバックラベルに記載することにした。結果、誕生したのは、毎年のように味わいの変わる、新しいスタイルのシャンパーニュ。その記念すべき『コレクション242』を飲んでみると、2017年に収穫された熟度の高いシャルドネが香る、心地よい口当たりの逸品に仕上がっていた。

ちなみに”コレクション”の後にくる3桁の数字は、創業年から数えて、何度目の収穫によるブドウが使われたかを表しているそうだ。となると来年以降は243、244、245、246……に。毎年の味わいの違いを飲み比べられるようになるのはもちろん、いずれは自分の好きな熟成度合いのボトルを選べるようになるのも、シャンパーニュ・ファンにとっての大きな楽しみとなる。

文=永野正雄(ENGINE編集部)
(エンジンWEBオリジナル)
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