2021.11.21

CARS

祝復活! 乗って感涙の11代目のホンダ・シビック!!

2022年で生誕50周年を迎えるシビックがフルモデルチェンジ。ターゲットは「ジェネレーションZ」と呼ばれる20~30歳代の若者だという。そんな新型を初代のデビューをも知る熟練ジャーナリストの高平高輝氏が試乗した。

シビックの栄枯盛衰を見てきた中高年世代

1972年にデビューした初代から数えて11世代目に当たる新型シビックは名付けて「爽快シビック」というらしい。なるほど、清々しく軽やかで洗練されている。試乗会での短時間の試乗ながら、相当力の入った秀作であることは間違いないと見た。しかしながら、である。我々中高年はほぼ半世紀にわたってシビックの栄枯盛衰とともに育ってきた世代であり、いわば出戻りシビックでホンダが狙うのはジェネレーションZ、つまり20~30歳代と聞いて、ハイそうですかと素直に納得するほどナイーブではない。それよりむしろシビックって何?



あるいはニュルブルクリンクでルノー・メガーヌRSと最速タイムを競っているあの超硬派のタイプRでしょ? と捉えられるのではないかと心配するのだ。

もう間もなく誕生から50周年を迎えるシビックは累計生産台数2700万台を誇るホンダの代表車種である。実は現在もCR-Vと並んでホンダのセールスを支える大黒柱であり、2020年は年間68万台を記録した堂々のグローバル・モデルだ。だが、ひるがえって日本国内に目を向ければ、ご存知のように軽自動車のNボックスばかりがもてはやされ、ベーシック・カーとしてはフィットがある。シビックはせいぜい月販1000台程度で、忘れられたと言っては可哀想だが、正直言って存在感は希薄である。何と言っても先々代の9代目が国内販売されず、およそ7年間にわたって国内市場を留守にした(英国工場製のタイプRだけが限定販売された)長き不在が痛かった。仕方がないこととはいえ、11代目の新型シビックは最初からハンデを負っての登場と言えるだろう。



実は大人のハッチバック

新型シビックは今のところ5ドア・ハッチバックのみでガソリン・ターボ1種類、6段MTとCVTが用意され、LXとEXの2グレードといったシンプルなラインナップだ。ハイブリッド・モデルとタイプRは遅れて来年発売予定だという。従来型を改良しつつ踏襲した1.5リッター4気筒直噴ターボ・エンジンは、182psと240Nmを発生、以前はCVT仕様のみ最大トルクがやや低かったが新型ではすべて同一のスペックとなった。先代では6段MT仕様がおよそ3割にも達していたからか、新型はシフト・レバーやブラケットなど細部にまでさらに手を入れてシフトフィールに気を配ったという。

確かに最近では珍しく気持ちのいいMTだ。若者受けするかどうかは分からないが、オジサン世代のマニアにとっては未だにマニュアル変速機の開発に注力してくれるというだけでまことに有り難い。中速域でのパンチに溢れるエンジンは扱いやすく、また回しても頭打ち感がほとんどない健康的なフィーリングだが、いささか回転落ちが鈍いのが玉に瑕。それが気にならないCVT仕様(こちらもスピードコントロールしやすい)を選ぶか悩みどころである。



そのパワートレーンからもボディからもラフなバイブレーションやノイズが伝わってこないことが新型最大の特長かもしれない。新型は従来のプラットフォームを受け継ぎながらホイールベースを35mm延長(全長は+30mm)、もちろんボディの高剛性化と軽量化を狙った改良が加えられ、サスペンションでは徹底したフリクション低減が図られているが、実際に乗り心地はストローク感があるのにフラットでしなやか、かつ大きめの段差でもまったくアゴを出さないタフさも備えたもので、予想以上に洗練されていた。ハンドリングもピーキーではなくリニアであり、ひと言で言えば大人のハッチバックといった風情だが、しつこいけれども失礼ながらZ世代がこの美点に有難みを感じるかどうかには自信がない。ないけれども若者にこそこういうクルマに乗ってほしいと思う。



新型シビックは運転支援系安全装備やカーナビ、ETCまでほぼすべて標準装備であり、LXで約320万円、EXで約350万円の本体価格はライバルと比べても決して高くはないのだが、長年にわたってシンプルなベーシック・カーとしてのイメージが染みついているオヤジ世代にはちょっと引っかかるのかもしれない。一喜一憂することなく、ここからがシビックの再スタートである。

文=高平高輝 写真=望月浩彦

■ホンダ・シビックLX・6段MT(CVT)
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4550×1800×1415mm
ホイールベース 2735mm
トレッド 前/後 1535/1565mm
車両重量 1330kg(1360kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16Vターボ
総排気量 1496cc
ボア×ストローク 73.0×89.4mm
エンジン最高出力 182ps/6000rpm
エンジン最大トルク 240Nm/1700-4500rpm
変速機 6段MT(ベルト式CVT)
サスペンション形式 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 235/40R18 95Y
車両価格(税込) 319万円

(ENGINE2021年12月号)

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