2021.12.06

LIFESTYLE

13万円の絵画が510億円に! ドキュメンタリー映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』が浮き彫りにする美術界の暗部

2017年に美術品史上最高額で落札された絵画『サルバトール・ムンディ』。その驚くべき過程を当事者たちが生々しく語るドキュメンタリー映画が話題を呼んでいる。

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本当にレオナルド・ダ・ヴィンチの作品なのか?

2017年11月、ニューヨーク・クリスティーズのオークションで、1枚の油彩画が美術品史上最高額の約4億5000万ドル(約510億円)で落札された。その1枚とはイエス・キリストを描いた『サルバトール・ムンディ』。画家はレオナルド・ダ・ヴィンチとされる。だがその12年前、この作品が名もなき競売会社のカタログに掲載され、ある美術商によりたったの1175ドル(約13万円)で落札されていたことは美術愛好家の間で広く知られた話である。



映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』は、この“世紀の発見”をめぐるドキュメンタリー。野心的な美術商によって買われたボロボロの絵は、高名な修復士の手で蘇り、ロンドンのナショナル・ギャラリーに出品されたことで真作としてのお墨付きを得る。だが実際のところ、ダ・ヴィンチ作なのかどうかは不明のままだ。



その後、510億円で落札したのはサウジアラビアの王子だったことが判明したが、映画では13万円だった絵に40万倍もの値がつけられるようになった過程を詳細に描いていく。一攫千金を求めて絵に群がるディーラーやコレクター、秘密裏に行われる金銭取引、作品の展示を巡る外交的な駆け引き……。当事者たちの生々しい証言から浮き彫りになるのは、人間の思惑や欲望が絡み合う美術界の暗部。芸術作品に対する見方が変わるドキュメンタリーだ。


『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』
“男性版モナ・リザ”としても知られる『サルバトール・ムンディ』(世界の救世主の意)。描かれたのは1500年頃で、大きさは65.6cm×45.4cm。ロンドンのナショナル・ギャラリーで展示された後、スイス人の美術商からロシア人の大富豪の手に渡った時期もあるが、この売買は富豪が美術商を詐欺と訴える騒ぎに発展した。映画ではこれらの当事者がインタビューに応じている。なお11月、スペインのプラド美術館が同作は工房作であると判断したことが報じられた。監督はフランスのアントワーヌ・ヴィトキーヌ。100分。TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中。

(C)2021 Zadig Productions (C)Zadig Productions - FTV

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2022年1月号)



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