2021.10.23

LIFESTYLE

ショパン・コンクールで小林愛実が入賞の快挙! 新時代のショパン弾きのニューアルバムを聴く

ピアニストにとって必須の演目といえばショパン。10月21日に結果が発表されたショパン国際ピアノ・コンクールでは2人の日本人が見事、入賞を果たした。その一人、小林愛実さんを含む、3人の若手ピアニストの意欲的な新譜を聴く。

ショパン・コンクール、再挑戦で4位に入賞

ショパンの祖国ポーランドのワルシャワで5年に一度開催されている、世界最高峰のコンクールと称されるショパン国際ピアノ・コンクール(以下ショパン・コンクール)。昨年開催予定がコロナ禍で延期となり、今年10月に開催された。これに先駆け、3人の若手ピアニストがもっとも得意とする作品を録音した。

まず、小林愛実は前回のショパン・コンクールのファイナリスト。上位入賞が果たせず、自身の納得いく結果が出せなかったため再挑戦し、見事4位入賞を果たした。8月にリリースしたのは、コンクールでも演奏した「前奏曲集」だ。



「《前奏曲集》は大好きな作品ですが、中期の作品ならではの難しさがあります。全24曲はひとつずつストーリーがあり、テクニックも表現力も内容もまったく異なる。それらを瞬時に変えて対応し、全体を俯瞰して考えなくてはなりません。それが精神的にもとても難しいところで、何度演奏しても完璧な演奏には近づけません」

こう語る彼女だが、演奏は長年弾き込んだ熟成した音楽。その成果がコンクールでの結果にも結びついた。

Seong-Jin Cho チョ・ソンジン:94年ソウル生まれ。07年浜松国際ピアノ・コンクール優勝。11年チャイコフスキー国際コンクール第3位。15年ショパン国際ピアノ・コンクール優勝。ミシェル・ベロフ、アルフレート・ブレンデルに師事。「ショパン:ピアノ協奏曲第2番、スケルツォ全曲」(ユニバーサル)(C) Christoph KostlinJan Lisiecki

これぞ響きの美学

2015年のショパン・コンクール優勝者、チョ・ソンジンの演奏の聴きどころは、なんといっても“ルバート”である。ルバートとは音と音の間を少し揺らす、間を取るという意味。それがチョ・ソンジンの手にかかると、ごく自然に流れるような音楽として聴き手の心にまっすぐ届けられる。ショパンは弟子に教える際、ルバートの大切さを説いたという。



チョ・ソンジンの「スケルツォ」とピアノ協奏曲第2番は、ときに若いピアニストではなくベテランのピアニストの様相を醸し出し、作品の奥深さを伝える。

「僕は響きの美しいピアニストが好きなんです。自分自身もそれを目指しています」

彼が弾くピアノ協奏曲第2番第2楽章は、まさに響きの美学だ。

ヤン・リシエツキ:95年カナダでポーランド人の両親のもとに生まれた。幼少のころから世界各地のオーケストラと共演。ポーランドではショパンの研究を行う。11年、ドイツ・グラモフォンと契約。「ショパン:夜想曲全集」(ユニバーサル)(C) Stefano Galuzzi

みずみずしいグルーヴ感

ヤン・リシエツキは11年、15歳の若さでドイツ・グラモフォンと録音契約を結び、13年にはショパンの「12の練習曲作品10&25」をリリースして新しいショパン弾きとして世界に名を知られるようになった。



今回の「夜想曲全集」は、彼特有のゆったりとしたテンポでじっくりとていねいに弾き進められるため、一音一音が聴き手の心の深淵に響き、感動を生み出す。

「ショパンは静謐でおだやかで哀感に富む音楽ですが、ときにグルーヴ感も必要」

まさにこの言葉通り、リシエツキのショパンはそこかしこにみずみずしいグルーヴ感がただよう。新時代のショパン弾きの登場である。

文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

(ENGINE2021年11月号)

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