2021.12.27

LIFESTYLE

人類が上陸して200年! 南極の現在を伝える1000ページの大著を読み解く

富士山よりも分厚い氷床に覆われた南極大陸。この極寒の大陸が抱える問題、そして魅力を様々な角度から伝える本が発売された。

謎に包まれた極寒の大陸

アメリカのオットセイ猟師、ジョン・デイビスが人類史上初めて南極に上陸したのは1821年2月のこと。それから200年の歳月が流れたが、いまだこの極寒の大陸は多くの謎に包まれたままだ。

そんな南極大陸の姿を、あらゆる角度から解析した英語の書物がスイスの出版社より刊行された。イタリアの建築家、ジュリア・フォスカリさん、そして環境問題に取り組む非営利団体、UNLESSによって編纂された『ANTARCTIC RESOLUTION』。1000ページ、重さにして3kg以上もある大著である。タイトルを直訳すれば“南極大陸を分析する”といったところだが、一方でRESOLUTIONという言葉には、この大陸にまつわる様々な問題に向き合うための“決意”といった意味合いも含まれている。



皇帝ペンギンの8割が死滅

本書には約150人もの専門家の寄稿文がまとめられており、地球温暖化がもたらす影響についても繰り返し言及されている。温暖化対策が進まなければ、海面水位の上昇をもたらすだけでなく、皇帝ペンギンが2100年までに8割死滅する、といった生態系への深刻な影響などについても論じられている。



だがこの本がユニークなのは、科学や環境面からのアプローチだけでなく、歴史や地政学、文学、映画、生活など、多面的な視点から南極の姿を浮き彫りにしていることだ。中でも珍しいのは、後半300ページ近くを占める南極建築のアーカイブ。1899年にイギリス人によって建てられた4.5m四方の小屋から、ミサワホームが近年、開発した移動式施設まで、190以上もの建造物が写真と図面で紹介されている。120年以上に及ぶ南極建築の歴史を網羅した本など見たことがなく、宇宙基地のようなドーム型の建物など、写真を見ているだけでも面白い。



もっとも本書は近年、活発化する大国の南極進出に警鐘も鳴らす。今世紀になってから20以上の新しい施設が誕生したが、その多くが研究目的よりも大使館のような役割で建てられているという。

地球上の陸地の10%を占めるこの大陸を、いかにして人為的な汚染から守っていくか? そんな差し迫った問題を提起しながら、南極の魅力を余すことなく伝える貴重な一冊である。



文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2022年1月号)



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