2021.12.13

CARS

日本経済を滅ぼす「電気自動車」推進の落とし穴とは? 気鋭のモーター・ジャーナリストが警鐘を鳴らす! 

EVは地球温暖化を防ぐための唯一の回答なのか?2冊の本でEVにまつわる嘘を明かしたモーター・ジャーナリスト、岡崎五朗氏によるレポート。

欧州が切れるカードはEVだけ

人類にとってカーボンニュートラルはもはや避けて通れない目標になった。二酸化炭素による地球温暖化、それによる気候変動説を覆す証拠が今後出てくる可能性もゼロではないが、確率的にはかなり低い。難しいのは、二酸化炭素は人間の生活、すなわち経済活動そのものだということだ。呼吸しても暖をとっても肉を焼いてもモノを作っても移動しても二酸化炭素は出る。各国のGDP伸び率と二酸化炭素排出量増加率がほぼ比例していることからもそれは明らかだ。逆の見方をすれば、温暖化防止だけを盲目的に追求すると生活が成り立たなくなるということである。

そこでいま世界で話し合われているのが、経済的繁栄と二酸化炭素削減をどう両立していくのかという問題だ。いや、この言い回しはいささか美化しすぎだろう。現実は、いかに他国を出し抜き自国に有利なルールを作るかという狐と狸の化かし合いである。たとえば石炭。もともと石炭の使用量が少なかったり、停止間近の老朽化した石炭火力発電を多く抱えていたりする国は石炭をやり玉に挙げるが、国によってはそう簡単にはやめられない事情があるし、最新技術を駆使すればかなり二酸化炭素排出量を減らすこともできる。しかしそんな主張は一向に顧みられず、環境系NGOはおろか国家レベルで石炭=悪というレッテル貼りが行われているのが実態だ。

欧州が推し進める脱エンジン、EV化の流れも同じ文脈である。そもそも走行段階と製造段階で使う大量の電力はどこから調達するのか? とか、価格、航続距離、充電時間、発火リスク、バッテリー原料の不足などなど、EVにはクリアすべき問題が山積している。それらをなかったことにし、長所だけを語って事を進めようとするのはあまりに誠実さに欠ける議論だ。ところが、ディーゼルの失速とハイブリッド開発の失敗で切れるカードがもはやEVだけになった欧州は、温暖化防止という誰もが反対しにくい理由を旗印に、ハイブリッドやプラグインハイブリッドにすら反環境車のレッテルを貼り、EVだけの世界を作りあげようとしている。



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