2022.04.28

LIFESTYLE

2022年の洋楽シーンで注目すべきはこの3人! 実力派女性シンガーたちの傑作を聴く

NYを拠点に活動する日系アメリカ人のミツキ。

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独立系のレーベルに属し、オリジナリティあふれる音楽を発表し続ける3人の女性たち。その新たなる傑作を聴く。

日系アメリカ人のミツキ

2022年はポップもロックもフォークも“インディ”のアーティストの勢いが目立っている。単純に独立系レーベルに属しているというだけでなく、ジャンルにも時代性にもとらわれることなくオリジナリティの強い音楽を表現しているアーティスト。とりわけそういう孤高的スタンスの女性が傑作を生んでいるここ最近だ。

まず、日系アメリカ人のミツキ。前作が多くのメディアで年間ベストに選出されて、一躍インディ界のスターとなった。が、個的な表現が思いがけず衆目に晒されることとなり、「このまま続けていたら感覚が麻痺してしまう」と感じて無期限で活動を休止。音楽から離れた2年を経て「すべてを受け入れ、すべてを許す」という境地に至り、再生の思いで発表したのが新作『ローレル・ヘル』だ。



「暗闇へと慎重に踏み出そう」と歌い始める1曲目は重苦しいながらも彼女の決意が窺える。一方、80年代的なエレクトロ・ダンスポップも数曲あり、吹っ切れて強くなったこともわかる。隔離生活が続くなか、「(人々を)励ますような曲を作る必要があった」と語っているが、彼女は自分自身の再生のためにもこのアルバムを作る必要があったのだろう。





トルコ系イギリス人のニルファー・ヤンヤ

ニルファー・ヤンヤはロンドン出身のトルコ系イギリス人。3年前のデビュー作が各メディアで絶賛されたが、新作『ペインレス』は曲作りにおいてさらに驚くほどの進化を示している。ニュー・オーダー、ニルヴァーナ、レディオヘッドといった90~00年代のオルタナティブロックをリファレンスとしながらも、メロディは予測不可能な展開を見せるものが多く、不穏さのなかにも聴く者をドキドキさせる刺激がある。重さと軽やかさの塩梅が独特で、インディ的なのに妙にポップ。聴く人によっていろんな解釈が成り立つ歌詞も、物憂げなヴォーカルも、ますます魅力的だ。





ニュージーランド出身のオルダス・ハーディング

オルダス・ハーディングは、ニュージーランド出身。UKの老舗レーベル、ラフ・トレードの年間1位に選ばれた2017年の2作目で注目された。その当時から生楽器を軸としたアシッド・フォークの幻想的なサウンドと、ケイト・ブッシュが引き合いに出されるシアトリカルなライブ表現が奇妙なほどにユニークと言われていたが、4作目となる『ワーム・クリス』はこれまでよりも穏やかな雰囲気を纏った風通しのいいアルバム。質の高いバンド・アンサンブルと可愛らしさもある歌声が絶妙に合わさったフォーキー・ポップ作だ。とはいえ、MVは相変わらず摩訶不思議だが。

3人の才女の新たな傑作をぜひ聴いてほしい。

文=内本順一(音楽ライター)

(ENGINE2022年5月号)

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