2022.05.26

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50年の歳月を重ねても色褪せない オーデマ ピゲの不朽の名作 Vol.1

50年前に誕生した製品が、ほとんど姿を変えずに継承され、しかも右肩上がりに人気を集め続ける状況は極めて稀だろう。スイスの名門「オーデマ ピゲ」が1972年に発表した「ロイヤル オーク」は、数少ない例外的マスターピースだ。そんな不朽の名作の魅力を2回にわたって紹介する。

2回目の記事はこちら!

時代を切り拓く腕時計、ロイヤル オーク


需要と供給は、経済活動の基本であり、その均衡がとれたところが適正価格となる。ラグジュアリー商材の場合、需要は多いが供給は少ないため高価格帯が均衡点となるが、近年はそのバランスさえも崩れる事例も少なくない。

例えば自動車業界では半導体不足によって満足に生産することができず、需要ばかりが高まる状況にあり、業界全体の問題として解決が望まれている。同様に高級時計も需要が増しており、特にラグジュアリースポーツウォッチというジャンルが元気だ。日常的に使える防水性や堅牢さといったスペックに加えて、ラグジュアリーな薄くて仕上げの美しい外装を持っているのが特徴で、オンやオフ、フォーマルやカジュアルなど幅広いシーンやスタイルに合わせることができる。その汎用性が評価され、店頭にも並ばない人気が長く続いているのだ。

特に1972年にデビューし、このジャンルを作り上げたオーデマピゲ「ロイヤル オーク」の人気は圧倒的であり、50周年を迎えた今年も入手はかなり困難だといわれる。それはこのモデルの誕生の経緯と大きく関係している。


1972年
後に〝時計界のピカソ〞と呼ばれる天才デザイナー、ジェラルド・ジェンタが一日で描き上げたという「ロイヤル オーク」のスケッチ(※ 命名は1971年のこと)。平面と斜面を巧みに組み合わせたケースや八角形ベゼルなどの大胆なアイデアは、ほとんどそのまま採用された。1972年の4月15日に発売をスタート。

2022年 ロイヤル オーク オートマティック

初代モデルをイメージした「ナイトブルー、クラウド50」のダイアルカラーを採用。ケース径は 37㎜なので初代よりは小さいが、刻みの方向まで完璧にデザインされたビスのデザインなど、アイコニックなデザインは全く変わっていない。近年は小径モデルへの人気も高く、ジェンダーレスで楽しめそう。ムーブメントは、約60時間 のパワーリザーブを備える高振動ムーブメントCal.5900を搭載。自動巻き。SS、ケース直径37㎜。280万5000円。


50周年の節目に、ディテールをリニューアル。ラグ部分のベヴェリング(斜面)の面積が広くなり、ポリッシュ仕上げがより際立つようになった。


着用感を高めるため、ブレスレットの厚みが徐々に薄くなるように変更。またそれに合わせてラグの形状は台形型になっている。


ロゴ周りも変更され、APロゴを廃止して、アプライドの「Audemars Piguet」のみとなった。さらにこれまではモデルによって異なっていたインデックスのデザインとサイズが統一された。


50周年を記念する特別なローターを採用。スケルトン構造なので、ムーブメントの細部がよく見える。

天才デザイナー、渾身の一作

プロジェクトの始まりは1970年のこと。イタリア市場から“革新的なスティール製ウォッチ”を作ってほしいという要請を受けたオーデマ ピゲは、そのデザインを時計デザイナーのジェラルド・ジェンタに依頼した。彼は一晩でスケッチを完成させたのだが、実は依頼を受ける際に、革新的な“防水ウォッチ”だと勘違いをしていた。しかしそれが、ロイヤル オークの個性を大きく決定づけることになる。

防水ウォッチということは、強固なケース構造を持つ必要があるためスポーティなデザインとなる。また搭載ムーブメントとしてドレスウォッチに使われる高級ムーブメントのキャリバー 2121を想定していたため、ケースサイズも当時の標準を大きく上回る39㎜というサイズを提案した。そしてケースやベゼルを力強い八角形とし、ベゼルごとビスで固定することで薄型ケースでありながら防水性を引き出すことを提案した。これはジェラルド・ジェンタが幼少期に見た潜水士のヘルメットの形状をイメージしたものだ。

この大胆なデザインは賛否両論だったが、当時のCEOは可能性を感じてプロトタイプの製造を決定。しかしそこからが困難だった。ロイヤル オークのケースやベゼル、ブレスレットは平面と斜面を組み合わせており、しかもヘアラインやポリッシュ仕上げを施して立体感を表現し、メリハリのある輝きを作り出す。しかし硬いステンレススティール素材では、こういった加工ができなかったため、プロトタイプの製作には加工しやすいホワイトゴールドを使ってディテールの検討を重ね、1972年に「ロイヤル オーク」は発売された。

現在は加工機械が進化しているが、それでもケースとブレスレットは製造だけでも約5時間。さらに162の工程があるという仕上げ作業にも同等の時間がかかる。つまり一つの時計の外装を作るだけでも、最低でも10時間もかかるのだ。

前置きが長くなったが、ロイヤル オークは、その独特な形状の外装パーツの製造と仕上げに対して、膨大な時間をかけている。しかも丁寧に磨きを施した自社製ムーブメントを搭載している。そのため、ロイヤル オークを増産することはまず不可能であり、手に入れることが極めて困難になっているのである。

オーデマ ピゲにかんする詳しい情報はこちら!

2回目の記事はこちら!


多くの傑作デザインを世に残した天才デザイナー、ジェラルド・ジェンタは、1931年スイス生まれ。ジュエリーデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、その後時計デザイナーに。2011年没。


発売当時の広告ビジュアルからも、その美しい造形美に注目が集まっていたことが分かる。


薄型なのでねじ込み式にはできず、ベゼルとケースの間にパッキンを挟み、ビスで固定することで防水性を高めた。苦肉の策ともいえる戦略が、特徴的なデザインを生んだ。


当時も今も、丁寧な手仕事が必須。

ロイヤル オークの真髄に触れられるエキシビションも開催中

『ロイヤル オーク 時を刻んだ50年』
希少なヴィンテージモデルやデザイン画、技術資料、歴史がわかる写真や動画、広告ビジュアルなどを展示し、ロイヤル オークの足跡を学べるイベントを開催。八角形ベゼルの精密な磨き工程を見学できるコーナーも用意される。

会期:~6月5日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
   東京都港区赤坂9-7-6
   (東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
開館時間:11:00~19:30(19:00最終受付)
入場料:無料(予約優先)
『ロイヤル オーク 時を刻んだ50年』の詳しい情報はコチラ!

『こんなロイヤル オーク、見たことない』
アイコニックなデザインを守りながら、バリエーションを増やしてきたのもロイヤル オークの魅力。コレクターが所有している希少でユニークなモデルたちを展示しており、まさに未知との遭遇を楽しめるイベントとなっている。

会期:~2022年度末
会場:オーデマ ピゲ ブティック 銀座
   東京都中央区銀座6-5-13 B1F
開館時間:12:00~19:00(18:30最終受付)
入場料:無料(予約優先)

オーデマ ピゲにかんする詳しい情報はこちら!
オーデマ ピゲ ジャパン
Tel.03-6830-0000

※ご紹介している時計は2022年度発売予定ですが、入荷未定となっております。

2回目の記事はこちら!

文=篠田哲夫 撮影=近藤正一
(ENGINE2022年7月号)

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