2022.06.21

LIFESTYLE

ノラ・ジョーンズも熱狂! ニューオーリンズ出身の4人組、タンク・アンド・ザ・バンガスの魅力に迫る

タンク・アンド・ザ・バンガス、3年ぶりの2作目『レッド・バルーン』を発表。

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「アメリカで最も素晴らしいライブバンド」と絶賛されるタンク・アンド・ザ・バンガス。ノラ・ジョーンズといった大物アーティストをも熱狂させる、彼らの音楽の魅力に迫る。

変幻自在の表現力


タンク・アンド・ザ・バンガスの2作目『レッド・バルーン』が素晴らしい。タンク・アンド・ザ・バンガスは、米ルイジアナ州ニューオーリンズ出身の4人組。地元の教会やライブハウスで力をつけ、早い段階で有名なニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバルに出演したあと、2017年のタイニー・デスク・コンサート(アメリカの公共ラジオ放送NPRによるライブ映像配信の大人気シリーズ)に6000組以上のエントリーの中から選ばれて出演。多幸感に満ちたパフォーマンスが絶賛され、「アメリカで最も素晴らしいライブバンド」と言われるようになった。

彼らの音楽性は、ファンクにネオソウルにラップにジャズ、さらにライブではグランジロックなんかも煮込まれたガンボスープのようなもの。バンドの顔はタンクことタリオナ・ボールで、豊かな身体を揺らして教会のプリーチャーのように歌ったり、子供のような声色で歌ったり、激しくラップしたり、繊細にポエトリー・リーディングしたり。変幻自在に声を操る彼女の表現力は、聴く者の心を一瞬でつかんでしまうのだ。

そんなバンドのライブをニューオーリンズで観たノラ・ジョーンズもファンになり、ノラとタンクは親友に。ノラは2019年の2曲のシングルでタンクをフィーチャーし、つい先頃のニューオーリンズ・ジャズ・フェスでも共演した。また、タンクは若き天才マルチ・プレイヤーであるジェイコブ・コリアーの作品や、現代R&B/ジャズのトリオであるムーンチャイルドが今年2月に出した新作にも参加。才能と人柄のよさで交流の幅を広げている。



ライブの熱量を感じさせるアルバム

3年ぶりの新作『レッド・バルーン』は、ライブにある熱量を前作よりも遥かに感じられるのがまず、いいところ。彼らのライブの面白さは、怒涛のファンクになったり、グランジっぽくなったり、ゆったりしたネオソウル感が出たりと場面場面で変わるところにあるのだが、そうした展開の自由さと躍動感がズバっと反映されているのだ。例えば陽気なパーティー・チューンがあったかと思えば、ゴリッとしたラップ曲が続き、ディスコやシティ・ポップ風味の曲があったかと思えば、後半はスティーヴィー・ワンダーの影響が色濃い美しいスローで癒したり。同郷のトロンボーン及びトランペット奏者であるトロンボーン・ショーティや、ソウル歌手のレイラ・ハサウェイらゲストの加わり方も有機的だ。またアメリカ社会の深刻な問題に切り込んだり、混迷を極めるこの時代に生きることの意味を考えさせたりする歌詞も深みがある。楽しく踊りながら、大事なことにも気づかされる、そんな傑作だ。


文=内本順一(音楽ライター)

(ENGINE2022年7月号)

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