2022.08.27

LIFESTYLE

4mの高台に建つのは全面ガラス張りの家! 仲良し夫婦が那須の別荘地で送るミニマル・ライフ

メルセデス・ベンツSL500はご主人用、シトロエンC3は奥様用。

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歳月をかけて準備

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Kさん夫婦が窪田さんに出会ったのは十数年前のこと。住宅雑誌の記事で、窪田さんの建築が目に留まった。いつか家を建てる際は、窪田さんに設計を依頼することを奥様は強く希望。建築家紹介イベントに同氏が参加することを知り、2人でこの建築家を訪ねた。直接に会って分かったのは、魅力的な人柄であること。以来自分たちのペースで家を建てる準備を開始。まずは那須の土地を手に入れ、必要な資金の算段をして窪田さんを再訪。去年の5月にこの家は完成した。



ちなみにK邸があるのは、別荘地。別荘ライフや大自然を楽しむためではなく、平屋を建てたいがために選んだ。別荘地は付近に民家があるので防犯上安心なうえ、管理が行き届いているので暮らしやすいのだ。もっともクルマがないと生活ができない場所でもある。SLは左ハンドルなので、運転が心配という奥様がいくつもの候補から自分用に選んだのがシトロエンC3だ。若くして起業したKさんを、長いこと、会社勤めをして支えてきた奥様。定年退職した今は、趣味の油絵教室に通う、芸術的センスに溢れた人でもある。

ミニマリストの家

さて、完成したK 邸は、リビング・ダイニング・キッチンがほぼガラス張りで、細い鉄の柱が薄い屋根を支え、屋外に幅1mほどの白くて薄い縁側がある独創的なもの。訪れて驚くのは、生活感がないことだろう。「いつもこんな感じで暮らしています」と話すように、今回の撮影時に外したのはティッシュ・ボックスとソファのクッションだけ。吟味してモノを選んでいるKさん一家は、もともと持ちモノが少ない。





さらに窪田建築のディテールが、SF映画のセットのような雰囲気を増幅させている。照明は白くて平らな天井を柔らかく照らす間接照明だけ。エアコン、スイッチ類は目に触れないようデザインされている。電源も壁のコンセントからではなく、二重床になったパネルの間からコードが顔を覗かす徹底ぶりだ。

「妻が熱望した窪田建築ですが、内心、暮らしにくいのではと心配した部分もありました。ところが生活してみるとそれは杞憂で、よく考えられた住宅だと気づいたものです」

窓際の天井に埋め込まれたハニカム状のロールスクリーンが、夏は日差しを、冬は寒さを遮ってくれるのだ。また、エアコンは強力なうえ、床暖房も効果的。リビングの一角に設けられたベッドルームの引き戸は、閉めるとプライバシーが保たれるだけでなく、空調の効果を上げている。

窓ばかりの家で暮らして発見したのは、南北に往来する飛行機が見えること。眺めていると、なぜか心が安らぐそうだ。雪の積もった朝の光景も、感動的だとか。別荘地なので人通りが少ないうえ4mほどの高台にあるので、中を覗かれる心配はほとんどない。窓の掃除も大変そうだが、今まで一度も行ったことはないとか。取材時、汚れには全く気付かなかった。



ここは別荘地なので気の利いた飲食店は点在するが、どこも歩いて行けない距離にある。食事はお酒と一緒に楽しみたい2人は、外食はせずに自宅で料理を作っている。時には白い縁側にテーブルと椅子を出し、お月見をしながらお酒と食事を楽しむこともあるそうだ。

東京で長く暮らした関西出身のKさん夫婦にとって、東京より北は馴染みのないエリア。那須で暮し始め、いろいろと出かけているそうだ。「新しい遊びの拠点を獲得した感じです」とKさん。「いつも夫婦で話をしていますが、クルマの中での会話は普段と違うものになるので、なかなか良いものですよ」とも。二人乗りのクルマのある、新しい家での大人のシンプルな生活。なんとも素敵だ。

文=ジョー スズキ 写真=田村浩章

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■建築家:窪田勝文 1957年山口県生まれ。日本大学卒業。若い頃からカーデザインに関心が高く、プロダクトのようにプロポーションとディテールに拘った、白くて軽やかでミニマルな住宅が特徴。山口県の岩国を拠点にしつつも国際的に知られる。西日本を襲ったゲリラ豪雨で愛車のポルシェ911を失うが、再購入を計画中。

■最高にお洒落なルームツアー「東京上手」がYouTubeチャンネルでスタート!
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。第1回配信は、エンジンでも紹介したことのある国際的建築家、窪田勝文さん設計の山口県のミニマリスティックな住宅。最新のルームツアーは、詩人でもあり建築家でもあった立原道造が1938年に設計した「ヒヤシンスハウス」を紹介中。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなライフスタイル番組は必見の価値あり!


(ENGINE2022年8月号)

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