2022.07.24

CARS

幕府=トヨタ自らが明治維新を起こした サプライズに溢れた新型クラウンの全貌

豊田章男社長自らが登壇したトヨタの新型クラウン発表会はサプライズに溢れたものだった。正統派セダンからSUV風の4ドア・クーペに大きな変貌を遂げただけでなく、噂されたセダンの廃止が否定され、さらに、これまでのクラウンの通例がいくつも打ち砕かれたのだ。

16代目は明治維新

プレセンテーションで豊田章男社長はこれまで15代続いたこれまでのクラウンをトヨタと同じく愛知にルーツを持つ徳川幕府に、また16代目の新型を「明治維新」に準え、クラウンの変革とその必要性を説いた。



マイナーチェンジ計画を一蹴

新型クラウンの開発を担当したミッドサイズ・ビークルカンパニーの中嶋裕樹プレジデントは2年数ヶ月前にマイナーチェンジの提案を豊田社長に一蹴されたという。そこから始まったという16代目の開発で初めに形となったのが今回発売される「クラウン・クロスオーバー」だった。

その商品化を承認した豊田社長は同時にセダン開発を促したという。そこで開発陣は多様化するニーズに即したラインナップとするべく、ハッチバック・タイプやワゴン・タイプのSUVも試作。当初は豊田社長に「調子に乗ってるな」と言われたものの、その後、ゴーサインが出て、すべてラインナップが新型クラウン・シリーズに加わることになった。

セダンを超えるセダンを目指した「クロスオーバー」、スポーティなSUVの「スポーツ」、ショーファードリブンも想定した正統派フォーマル・モデルの「セダン」、そして2007年に消滅したワゴン・ボディに使われていた名前を復活させた実用的SUVの「エステート」。この4車種が、今後1年半の間に順次投入されるという。









迅速な開発のカギは?

このスピーディな開発を可能にした一因がモジュラー構造を導入したTNGAだ。たとえばクロスオーバーは、カムリやRAV4、ハリアーなどが用いている大型FF車向けのプラットフォームである「GA-K」のSUV用とセダン用の部材をミックスして新たなプラットフォームを構築。こうした手法で短期間に異なる要件を満たす複数のシャシーを完成させたのだ。

また、2016年に導入されたカンパニー制の貢献も大きいという。担当する製品群を細分化したことで、意思決定のスピードアップと担当車種に専念したチーム運営が可能になったとされている。



トヨタの黒船になる

さらに、4タイプもの車種開発を可能にしたもうひとつの要因は本格的な海外展開だ。過去にも国外販売の実績があるクラウンだが、地域は限定的だった。しかし、この16代目は約40の国と地域で年間20万台規模の販売を展開する見込みだという。発表会では、仕向地ごとの脱炭素政策を見据えた多彩なパワートレインが設定されることも示唆された。

豊田社長は型破りという言葉を幾度となく口にした。クラウンという伝統の型を守るため、それを妨げる型にハマった固定観念を打ち破ったのである。駆動方式やラインナップ、さらに販売エリアまで見直した新型は、まさに型破りだ。維新の時を迎えた日本を代表する高級車ブランドは今、新たなステージへ向け始動した。



文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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