発表されるやいなや注文が殺到、納車まで2年待ちと言われている新型日産フェアレディZ。MTとATの2台を借り出し、その出来栄えをモータージャーナリストの島下泰久がチェックした。ひと目見てZとわかる初代のイメージ新型フェアレディZの登場は、まさかのサプライズだった。何しろ先代の登場は2008年にまで遡り、しかもそれ以降はほぼ放置に近い状況が続いていたし、近年の日産はゴタゴタが続き、経営状態も良いとは言えなかったから、正直に言って新型の登場は、ほとんど期待していなかったのだ。
それが今、目の前に黄色と青の2台の新型フェアレディZが並んでいるのだから、何とも感慨深いものがある。振り返れば2003年、先々代のZ33は、経営危機に陥りルノーと合併した日産で、当時のカルロス・ゴーンCEOの鶴の一声で復活。新生日産の象徴となった。そして、今度も。日産の、いや日本の誇るスポーツカーは、どうやら常に復活のアイコンとして登場するという星回りにあるらしい。すでにデザインは何度も見ているし、テストコースも走らせたが、見慣れた箱根の景色の中で改めて対面した新しいZは、思ったよりもコンパクトに見えた。ネガティヴな意味ではなく、スポーツカーらしい凝縮感、引き締まった感じを、しっかり身につけていたという話である。それにしても、通りかかるクルマからの注目度の高さは尋常じゃない。まとったそのオーラには、復活のストーリーの影響もあるに違いないが、それだけでなくやはりデザインに力があるということだろう。Zといえば結局は初代の印象が強いということで、スタイリングにはそのイメージが色濃く反映されている。知る人なら、そこかしこに思わずにやりとするディテールを確かめることができるだろう。
とりわけ気に入ったのはサイド・ビューである。新型Zの形式はRZ34で、基本骨格は先代Z34の流れを汲む。このZ34は、冒頭に記したZ33に対して軽量化のためホイールベースを切り詰めコンパクト化を図っていたのだが、そのサイド・ビューを見ると、長いノーズとタイトなキャビンのバランスが驚くほど初代S30型に近いのだ。これも歴史の巡り合わせというものだろうか。もっとも、今のクルマはどうしても天地方向に分厚くなりがちだから、サイド・ウインドウ上部を走るフィニッシャーや抉られたサイドシルなど、クルマを薄く見せるため涙ぐましい努力がなされている。テールランプはZ32型のイメージだが、これもそもそもS30型がモチーフだけに違和感は無い。長い歴史を持つクルマだけに引き出しは豊富なのだ。室内はよりクラシカルな雰囲気。デジタル・メーターを使い、大画面のインフォテインメント・システムも備わるが、細身で大径のステアリング、ダッシュボード上の3連メーター、そして全体に囲まれ感の強いレイアウトが、そう思わせる。昔でいう男の仕事場的な雰囲気である。ハードウェアの目玉はエンジンだ。従来のV型6気筒3.7リッターに代わって搭載されるのは、3.0リッターツインターボ・ユニットで、最高出力は405psを発生する。トランスミッションは改良型の6段MT、そして9段に進化したATを組み合わせる。一方、車体は基本骨格を継承しながら剛性アップを敢行。特に、エンジンそれ自体とパワーアップで必要となった冷却系により重量が大幅に増えたフロント・セクション、そしてリアの大きな開口部周辺を中心に、しっかりと固められている。
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