2023.01.02

CARS

あなたは、日産のスポーツカーは好きですか? フェアレディZとGT-Rはなぜこんなにクルマ好きを惹きつけるのか

フェアレディZバージョンSTとGT-Rニスモ・スペシャル・エディション

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ともに長い長い歴史のある、フェアレディZとGT-Rという2つのスポーツ・モデルを有する日産にとってのスポーツカーとはいかなるものか。ZとGT-R、日産の2台の最新スポーツカーに乗った渡辺敏史がリポートする。

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第一印象は、期待より心配だった

2007年の春、R35型GT-Rの事前取材の機会に恵まれた僕は、ニュルブルクリンク近隣、ムラと呼ばれる一角の小綺麗なガレージに赴いた。

日産が長期に渡って借り上げ、開発拠点として使っていたそこに収まっていたのは、フルラッピングの上、前部にはピタピタのノーズブラが被せられた4台のうすらデカいハコグルマだ。そう、漏れ伝わるスクープ情報よりも俄然ハコ。911イーターとも噂されるスーパースポーツが、こんなに四角くて大丈夫なわけ? と、第一印象は期待より心配だったことを思い出す。

アルカンターラのトリムや、外装の空力付加物やトランクなどがカーボン素材になるのはニスモだけ。さらにルーフそのものもカーボンに置き換えられている。ホイール・リムの赤いラインと、ボンネットがクリア塗装となるのはスペシャル・エディションの証。


旬を迎えた白アスパラガスここで売ってますよ――と、そこら中の道端に出された看板を横目に、アウトバーンに入ると速度無制限区間へ。助手席に乗っていたのは今も日産のトップガンとしてスポーツモデルの開発に携わる実験部の松本孝夫さんだ。

間合いを見てアクセルを踏んづけた、どこの馬の骨ともわからない僕の横で見た290km/hはさぞや怖かっただろう。が、そんな不安はお首にも出さず、もう一本いっときます? と松本さんはお気遣いになられる。でも僕は、そのお試し一本でなんだかもう、色々な衝撃が押し寄せてきて、おかわりをねだる心持ちにも至らなかった。どころか、これは大変なことになるんじゃないのという心配の側がやはり先立ってくる。



恐ろしいまでのトラクション、踏めば踏むほど地面に押し込まれるようなダウンフォース、だけどそのハコが空気の壁に染み入るようにすうーっと速度を上げていき……と、そのパフォーマンスは4桁万円からの値札を掲げる欧州のあれこれを明らかに上回る。それを日産は桁違いの半値以下で売ろうとしているのだ。

スーパースポーツの民主化といえばいかにもな正論だが、その対価も民主化させてしまうというのは、歴史伝統云々も引っくるめてブランドのロイヤリティとしている彼らにしてみれば面白くない話だろう。特にニュルを根城とするポルシェにしてみれば、庭でなにやってくれちゃってるのという話でもある。



そういう空気も読まずに破格の値札で突っ込んでいったGT-Rが世にそのユニークネスを認められたのはご存知のとおりだ。それには幾つかの要因があったと思う。

まず凝りに凝ったトランスアクスルベースの4WDシステムにも、縦置きという過去の文脈が引き継がれていたこと。それを包み込んだフェラーリやポルシェには絶対真似できないハコ型にも必然とともに過去との連続性があったこと。そしてその過去と今を繋げるコンテンツがネットを通して世界に広がったこと――。

幸運だったのは3つめだろう。ごく一部のクルマ好きにしか知られていなかったGT-Rというものの存在が、漫画や映画、あるいは記事や動画を介して瞬く間に世界に広がっていく。この、第二世代までは考えにくかった環境によってエキゾティシズムが最大化されたことで、GT-Rはゴジラなどと呼ばれ今までとは異なるポジションに押し上げられた。



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