2023.01.02

CARS

あなたは、日産のスポーツカーは好きですか? フェアレディZとGT-Rはなぜこんなにクルマ好きを惹きつけるのか

フェアレディZバージョンSTとGT-Rニスモ・スペシャル・エディション

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日本のスポーツカー文化を牽引した日産

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そんな東洋の神秘が傍らにある一方で、その誕生から米国留学が前提だったのがフェアレディZだ。世界の自動車メーカーが挙って米国市場に活路を見いだしていた60年代、ZはジャガーEタイプやポルシェ911といった名車を傍らに開発された。

その流麗なファストバックフォルムが実現した背景には、当時彼の地で危険視されていたオープンボディのバリエーションを早期に諦められたことも関係しているだろう。新しいZのデザインには過去6代の様々なモチーフを散りばめているが、大枠においてはこの初代S30型が印象を決定的なものにしている。

北米市場を獲るZと日本のレースで勝つGT-R。日産出自かプリンス出自かという違いも含め、持ち場を明確に違えたことで、同級の動力性能を備えながらも共存の道が拓けたことはこれまた幸運だったのかもしれない。かれこれ半世紀以上の間、日産は日本のスポーツカー・カテゴリーを牽引し、苦しい時もいずれかが孤軍奮闘することで確たる存在感を示し続けてきた。



大振りにも程がある

そして2022年、クルマ回りでは電動化喧しいこの期に及んでなお、ZとGT-Rはここにいる。片や400psオーバーのFR。片や世界に伍する600ps。いずれも現在受注停止状態というオチはつくものの、スポーツカー専業ならいざ知らず、総合メーカーの今日的ラインナップとしては大振りにも程がある。

その上で、走りのキャラクターは大きく異なっている。新しい日産のスポーツカーのあり方を意識して味付けしたというZは、走り出しから動きがしっとりと滑らかだ。操舵や制動などの応答性に遅れなどの不満はなくも、ゲインの立ち上がり始めがじわりと優しく、その僅かな間合いがドライバーには扱いやすさや人懐っこさとして伝わってくる。緊張を強いられることなく405psと五感を通して対話するには、これはあるべき穏やかさだろう。この辺りのセットアップは、タイヤのグリップ限界が低かった時代の911カレラやボクスターによく似ている。

試乗車は最上位グレード、バージョンSTの6段MT仕様。鮮やかなオプション・カラーのイカヅチ・イエロー(8万8000円)の外装色に赤と黒のデュオ・トーンとなる内装の組み合わせ。外装色は9パターン用意されており、初代Zのイメージ・カラーだったマルーンの設定も。


対してGT-Rはモノコックの剛性やトラクション能力の圧倒性でもって、水をも漏らさぬ勢いでパワーの粒を推進力や旋回力に逐次変換するという執念に満ち溢れている。当然フィードバックは硬質で、路面に食い込み掻っ捌くような感触は他の4WDスポーツとはひと味異なるものだ。でも、そのキャラクターを究めに究めたことによってGT-Rには、有機的な温もりが芽生えたのも確かだ。本来コンマ1秒を削り取るべくギチギチに締め上げられているはずのニスモでさえ、走らせると芯に感じるのは冷徹なデジタル的フィードバックではなく、アナログ的ないいもの感だったりする。

目指した道は違えど、根底にあるのは人とクルマとのコンタクトの強さ。この点はZもGT-Rも同じだ。トヨタともホンダとも違う、時に暑苦しいほど密なそれにこそ、日産のスポーツカーの核があるのだろう。思えば自分が乗ってきた日産車にも、そういう濃さがあったものだ。

文=渡辺敏史 写真=神村 聖



■日産GT-Rニスモ・スペシャル・エディション
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動  
全長×全幅×全高 4690×1895×1370mm  
ホイールベース 2780mm  
トレッド(前/後) 1600/1600mm  
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1590kg(900kg:690kg)  
エンジン形式 水冷V型6気筒DOHCターボ  
排気量 3799cc  
最高出力 600ps/6800rpm  
最大トルク 652Nm/3600-5600rpm  
トランスミッション 6段デュアルクラッチ式自動MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル  
サスペンション(後) マルチリンク+コイル  
ブレーキ(前後) 炭素繊維強化樹脂製通気冷却式ディスク  
タイヤ(前後) 255/40ZR20/285/35ZRF20  
車両本体価格 2464万円  

■日産フェアレディZバージョンST
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動  
全長×全幅×全高 4380×1845×1315mm  
ホイールベース 2550mm  
トレッド(前/後) 1555/1565mm  
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1720kg(940kg:780kg)  
エンジン形式 水冷V型6気筒DOHCターボ  
排気量 2997cc  
最高出力 405ps/6400rpm  
最大トルク 475Nm/1600-5600rpm  
トランスミッション 6段MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル  
サスペンション(後) マルチリンク+コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前後) 255/40R19/275/35R19  
車両本体価格 646万2500円  

(ENGINE2022年12月号)

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