「統計データをもとに企画したクルマはもう通用しない！」新型トヨタ・クラウンを手がけた男が語る「クラウン・クロスオーバー」誕生秘話

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新型トヨタ・クラウンとチーフ・デザイナーの宮崎満則さん

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変わったのはトヨタそのもの

それにしても、クラウンに限らず最近のトヨタのデザインには何か突き抜けたようなムードが漂っている。そういう意識はあるのだろうか。

「ムードはすごくいいです。今は若いデザイナーがすごくレベルが高くて、今回のクルマも20代後半～30代前半の人間に、彼らを信じてコンセプトだけでなく実際のクルマもある程度任せたんです。それを自分を含めたベテランの責任でまとめ上げるというかたちですね。その結果、本当に突き抜けたものになったな、と思います。最近では個々のデザイナーがというより皆がアイディアを持ち寄って力を結集させてという方向になってきています。海外のデザイン・スタジオであるCALTYやED2などの拠点や、うちの中の若い人のアイディアを「これいいね」ってサイモンさんと一緒にまとめ上げて行ったんです。実はこうしたところが今回、一番大きかったかもしれません。設計や生産技術の方々も同じだと思います。その辺りがトヨタのデザインが変わったね、と言っていただけるところなのかなと思います」

色々な偶然が重なり、しかしやはり絶対的には必然としてここに導かれた感もある新型クラウン・クロスオーバー。新しいのはカタチだけでなく、実はその中身もであり、またトヨタそのものだったと言っていいのかもしれない。

「昔から、一生懸命作ったデザインも実車になると必ずタイヤが内側に引っ込んでしまう。でも日本の道路事情などを考えると、そうならざるを得ないって、ずっと諦めていた部分があった。ですが今回は企画段階から思ったことができそうだということになり、そして実際に試作ができた時には、ここまでできたのか、と嬉しくなりました。僕はただスタイリングをこうしたいという思いがあっただけですが、それを乗り心地や燃費、使い勝手などお客様に我慢させることなく実現できて、本当にやりきったという感じがしています」

ちらほら街で見掛けるようになってきた新型クラウン・クロスオーバー。今後その数がますます増えていけば、あるいは日本の景色はじわりと変わってくるかもしれない。いや日本だけじゃない。新型クラウンは初めてグローバルで販売されることが決まっているのである。チーフ・デザイナー自身が「やりきった」と言うクルマが、これから世界の街並みをどのように彩っていくことになるのか。こちらも楽しみにしたい。

文＝島下泰久　写真＝阿部昌也　協力＝トヨタ自動車#3TOYOTA

（ENGINE2023年1月号）

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