今回盗難にあった日本にたった1台しかないレクサスGS F
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近年、増加傾向にあるクルマの盗難被害。リレーアタックにCANインベーダーと手口も進化する中、どのような対策を講じればいいのか?
警察顔負けの捜査力で さる2月下旬、” 日本に1台しかない「レクサス」を盗まれた男性の告白”というデイリー新潮の記事がネット配信され、大きな反響を呼んだ。内容はこうである……。今年1月18日、大阪在住の実業家が所有する、日本に一台しかない仕様のレクサスGS F(約1000万円)が、自宅駐車場から姿を消した。防犯カメラには、夜中にクルマで現れた男が、瞬時にクルマを盗み出す姿が記録されていた。スマート・キーが発する微弱な電波をキャッチし、増幅させることでドアロックを解除させる、リレーアタックという手口を使った犯行である。
大抵の場合、クルマは行方知れずのまま終わるところだが、ここで活躍したのが被害者の知人でIT系の会社を経営するSさん。このレクサスが珍しい限定車だったことから、特徴的なパーツがオークション・サイトに出品されていることを発見、ヘッドライトに映り込んでいた背景の建物から撮影場所を割り出し、そこが三重県の解体業者であることを突き止めたのだ。まさに警察顔負けの捜査力だが、当の解体業者はクルマは大阪の業者から40万円で購入したもので、盗難車とは知らなかったと説明(車体番号を削り取ろうとした跡があるにもかかわらず)。解体されたクルマのパーツは警察で保管されているが、3月12日時点で窃盗犯の発見、逮捕には至っていない。 面倒くさいと思わせる2022年の自動車盗難件数は5734件で、前年同期比で1割以上増加した。そんな危ない状況の中、たとえば先のリレーアタックから愛車を守るにはどうすればいいのか?「スマート・キーは玄関近くに置かないこと。キーが発する微弱電波は、家の外からもキャッチできるからです。自宅に置いておく時は、アルミかブリキの缶に入れておくことを勧めます」と、話すのは自動車評論家の国沢光宏さん。スマート・キーを持ち歩く際も、電波を遮断する特別なケースに入れる、あるいはアルミホイルでくるんでおくのがいいと言う。だがリレーアタックより厄介なのが近年、増加しているCANインベーダーという手口だ。これはクルマの動作を制御する車載ネットワーク「CAN」につながる配線に特殊な機器を割り込ませ、ドアロックの開閉やエンジンの始動を行ってしまうもの。この配線には、フロント・バンパーをとめているボルトを外せば外から簡単にアクセスできるので、防ぐのが困難である。「クルマの置き場所を考えるしかない、というのが正直なところですが、リスクは減らせます。クルマに触れなければ配線にアクセスできないので、振動に反応する防犯ブザーをつけるのも有効ですね。さらにハンドル・ロックやタイヤ・ロックなど、複数の盗難対策を組み合わせるのが効果的です」(国沢さん)とにかく窃盗犯にこのクルマを盗むのは面倒くさい、と思わせるのが重要だという。
一方で、クルマを複数台所有している先のSさんは、「大切な愛車はできるだけ人目につかないよう気をつけること。それに尽きると思います」と話す。シャッター付きのガレージや機械式のガレージなら安心だが、そうでなければクルマには必ずカバーをかけること。窃盗犯にとってカバーを外すこと自体、覚悟が必要な行為だからだ。また高級車が目をつけられやすい場所のひとつに空港がある。空港の駐車場で窃盗犯にGPSトラッカーを貼り付けられ、後日、自宅を特定されてクルマを盗まれる被害が報告されているが、「危ない場所には特別なクルマで行かないこと。私は安いミニバンを使います」(Sさん)それでもクルマを盗まれてしまった時のために、トランクのカーペットの下など、見つかりにくい場所にGPSトラッカーを仕込んでおく必要はある。だがある保険会社の調査によれば、盗難車が発見される確率はたったの2割強だという。やはり日頃からしっかりとした盗難対策を講じることが肝要なのだ。
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE 2023年5月号)
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