2023.05.19

LIFESTYLE

あなたはブルターニュ文化を知っていますか? 東京の美術展はブルターニュ地方がブーム? アートで旅するフランスの異郷

ブルターニュの厳しい自然

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フランスの北西部に位置するブルターニュ地方。独特の文化を育んできたこの地方をテーマにした美術展が偶然にも都内2カ所で開催されている。

日本人には馴染みが薄いが……


フランスの一地方、ブルターニュがアートの世界で注目されている。上野の国立西洋美術館、新宿のSOMPO美術館でこの地がテーマの展覧会が開催中だからだ。多くの日本人にとって聞き慣れないブルターニュ地方、実は芸術家にはとても魅力的な土地なのだそう。

ブルターニュ地方はフランス北西部にある半島状の地域。4~6世紀、この半島にイギリスからケルト人たちが移り住み、独自の言語、ブルトン語や女性の頭巾が印象的な民族衣装など、フランスとは異なる文化を構築、10世紀にはブルターニュ公国も建国された。この国は1532年にフランスに併合されてしまったが、彼らが作り出したブルターニュ文化は、現在もこの地域にしっかりと息づいている。



ちなみに、ブルターニュの文化は日本でも人気がある。たとえば、そば粉のクレープはこの地方のソウルフードだし、パン屋で人気のクイニー・アマンはブルトン語で「バターのお菓子」という意味を持つ。また、グッチやイブ・サンローランを擁するケリング・グループの「ケリング」はブルトン語で「我が家」を意味している。そう、気づかないうちに私たちはブルターニュの文化に慣れ親しんでいるのだ。


このような背景もあり、フランス人にとっては「元外国」であるブルターニュ地方はエキゾチックさを感じる場所。それゆえ、19世紀以降の芸術家たちは、こぞってこの地に赴き、イメージの源泉にしていた。この地方に着目した展覧会が開催されるのも納得だ。



ブルターニュを様々な視点で


現在開催中の2つの展覧会では、ブルターニュ滞在中に自身の作風を確立させたゴーギャンや、彼を慕うポン=タヴェン派の画家たちの作品が共通して展示されているものの、それ以外の展示構成はスタンスが微妙に異なっている。国立西洋美術館はイギリスの巨匠ターナーや黒田清輝なども含め、ブルターニュに憧れを持つ画家が描く「異郷として描かれたブルターニュ」に、SOMPO美術館は、この地に生まれ育った画家らを中心に「厳しい自然と、敬虔な信仰心を持つ人々のブルターニュ」に関心を寄せている。2つの展覧会を併せて見ることで、ブルターニュを様々な視点で考えることができるのだ。魅力的な展覧会を立て続けに見ると、どうしてもおなかが空いてしまう。そんなときは、クレープ店に立ち寄りそば粉のクレープを。ブルターニュ気分にさらに浸れるはずだ。



■『ブルターニュの光と風-画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉』は東京・新宿 SOMPO美術館で6月11日まで、『憧憬の地 ブルターニュ ─モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷』は、東京・上野公園 国立西洋美術館で6月11日まで開催中。開催中。

文=浦島茂世(美術ライター)

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