2023.07.10

CARS

「Vintage Club by KINTO」とはいったい何か? きっかけは、トヨタ関連会社の有志たちが上げた「クルマの国宝を守りたい!」という声だった!!

旧車に乗ってみたいと思っても「運転が難しい」「扱いが面倒」「壊れる」「高い」と二の足を踏んでいる方も多いのではないだろうか? そんな不安をすべて解決するのが旧車を楽しむコミュニティ「Vintage Club by KINTO」が始めた特選旧車レンタカーである。この手があったか! 旧車好きでなくとも思わずグッとくるレンタカー。クルマ好きの輪は広がるのか? モータージャーナリストの藤原よしおがリポートする。

すべてはソアラから

KINTOといえば、保険代や自動車税などの諸経費も含めた定額で乗れる新車のサブスク……という認識はあったものの、旧車のレンタル・サービスがあるとは、今回の取材まで知らなかった。



この旧車レンタルは「Vintage Club by KINTO」という名前の、KINTOの旧車コミュニティのコンテンツとして行われているものだ。しかし、クラブと言っても入会金など煩わしい手続きはなく、インスタグラムやフェイスブックをフォローするだけ。しかもレンタカー自体は、クラブ員でなくても、ホームページから専用フォームを使って申し込みをするだけで、例えば取材した初代ソアラであれば、8時間3万円、24時間3万5千円で借りられる、実にシンプルなものだ。

SOARER 2.8GT-Limited (1982)1981年登場の国産スペシャリティGT。エンジンは2.8ℓ直6DOHCで、専用の本革バケットシートやテクニクス製オーディオを装備して、82年3月に追加された最上級グレード。8時間3万円から。

なぜこのようなサービスを始め、何を目的とし、今後どのように展開していこうとしているのか? このプロジェクトに関わるキーマンの皆さんに話を伺った。

「今回乗っていただいたソアラがきっかけになったと言っても過言ではないと思います」

と話すのはKINTO総合企画部の布川康之さんだ。そもそも、件のソアラは、別の企画で依頼され、トヨタ博物館の所蔵車のレストアなども手掛ける新明工業で徹底したフルレストアを施した個体なのだそうだ。その後、オーナーが手放すことになり「旧車で何か面白いことをしたい」と思っていたKINTOで引き取ることとなった。

それとほぼ時を同じくしてトヨタ自動車パワートレインカンパニーの土屋和也さんたちも、こんなことを考えていたという。

土屋 和也さん(トヨタ自動車 パワートレーンカンパニー 電動パワトレ開発統括部 主査)

「我々はトヨタの量産車のパワートレインのシステムを決める部署なのですが、その一方で80~90年代の国産車が廃車になったり、海外に流出するのを見て、もったいない、国宝みたいなものだから守りたいと、我々の技術を活かした旧車サービスの企画を内外に出していたんです」

その時土屋さんたちの元には、ボロボロの状態で引き取りフルレストアを行う予定のMR2があった。そこで両者が手を組むこととなり、ソアラとMR2を使って始めようと立ち上がったのが、Vintage Clubだったのだ。

MR2 G-Limited Supercharger (1988) シャシーアップ・レストアを行いながら、社外LSD、マフラー、ダンパーに車高調付きのスパックスを奢るなど、ファインチューンが施されている。1986年にマイチェンを行った後期型のGリミテッドで145psの1.6ℓ直4DOHC“4A-GZE”スーパーチャージャー・ユニットを搭載。8時間2万5000円から。

そこから昨年の4月にスタートするまで、約1年半にわたり準備を続け、布川さんたちがTE27レビンを、土屋さんたちがセリカLBを探し出し、4台が揃うことになった。

これらのクルマの整備を手がけるのは、主な貸し出しの拠点にもなっている、豊田市の新明工業である。

「最初に話が来た時には、トヨタ、KINTOで用意したクルマを我々が整備、運用する流れだったのですが、昨年の秋くらいから我々がレストアしたクルマを使いませんか? という提案も行っています」

野村 久司さん(新明工業 自動車事業本部 特装部)

と話すのは新明工業特装部の野村久司さん。このたび加わったセリカGT-FOURは、まさにそうして採用された1台だそうだ。

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