2023.06.12

CARS

リアエンジンの和製スポーツカーの登場は衝撃的だった! 「トヨタMR2 Gリミテッド・スーパーチャージャー」 ニッポンのちょっと古いクルマはどんな味?【その2】

トヨタMR2 Gリミテッド・スーパーチャージャー(1988年型)

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近年、世界的に人気を博しているのはジャパニーズ・ヒストリックたち。おかげで高嶺の花となり、気軽に買ったり乗ったりできないのもまた事実。そんな不満を解消する旧車レンタカーがあると聞き、モータージャーナリストの藤原よしおさんとエンジン編集部のムラカミとムラヤマの3人で試乗してきた。その1のトヨタ・ソアラ2.8GTリミテッド(1982年型)に続くその2の今回は、トヨタMR2 Gリミテッド・スーパーチャージャー(1988年型)を取り上げる。

スーパーカーの擬似体験

村山 2台目はMR2。AW11といわれる初代ですね。

藤原 これはマイチェン後の後期型で1.6リッターの4A-Gにスーパーチャージャーつけて130psから145psになったやつ。

村山 新車価格は210万円でした。

シャシーアップ・レストアを行いながら、社外LSD、マフラー、ダンパーに車高調付きのスパックスを奢るなど、ファインチューンが施された試乗車。


藤原 僕的にはドンピシャ。84年デビューだけど、前年のモーターショーにSV-3って名前で展示されて、すぐにフジミから1/24のプラモデルが出た(笑)。ついに日本からリトラクタブル・ライト、リアエンジンのスポーツカーが出るんだって興奮した。村上さんはデビューした時のこと覚えてます?

村上 これでミッドシップが何か知ったくらいですよ。あのお堅いイメージのトヨタが! って衝撃はありましたね。

エクステリアや、シートやインパネなどのインテリアは基本的にオリジナルをキープしており、AW11らしさを味わえる内容である。エアコンも良く効き、実用性に不満はない。


藤原 中学生で免許もないのにホンダCR-Xにするか真剣に悩んでた(笑)。でも当時完全2シーターってハードル高かったですよね。周りのお兄さんたちが買うのも、シビックとかレビン・トレノで、MR2って田舎ではなかなか見なかった。

村上 ちょっとデザインが子供っぽいかな。若い時の方がむしろ大人っぽいものに憧れるでしょ。後に現れるユーノス・ロードスターは、若者にも大人にも刺さるスタイルだった。



村山 乗ってどう思いました?

村上 初めて乗ったんだけどさ。ボクスターを持っていて、ミッドシップの何たるかを知っているからか、申し訳ないけど、僕にはあまりピンとこなかった。

藤原 ボディ剛性が足りていない感じはあるね。この個体がどうとかじゃなく、元々弱かったんだと思う。ピラーもサイドシルも細いし。

取材車は86年にマイチェンした後期型のGリミテッドで145psの1.6リッター直4DOHC“4A-GZE”スーパーチャージャー・ユニットを搭載。変速機は5段MT。


村山 この個体は塗装を剥離してホワイトボディにして、全部やり直した1台なんです。エンジンもオーバーホールしたフルレストア車。

藤原 それでもヤワさを感じたな。コーナーの入り口と出口でハンドリングが違う、みたいな。

村上 確かにミッドシップらしいコーナーの気持ちよさは感じなかった。

藤原 ミッドシップのミズスマシ感よりも、ヒリヒリ感の方があるクルマ。危うさというか。

村山 今まで乗ったことのあるボクスター、ケイマンに比べると不安感があるっていうか。どっち行っちゃうか分からないからコーナーでアクセル踏み込めない。

藤原 ミッドシップならではの限界領域の挙動を低い次元で経験できる(笑)。無理は禁物です。



村山 あとシフトやハンドルの位置が近くて運転しやすかったです。

村上 そういうところは良くできてました。さすがトヨタ。

藤原 確かにシフト・フィールは頑張ってたね。初の国産ミッドシップで、ハンドリングは当時の開発陣としても、どういう味付けなら許されるのか、悩んだんじゃないかなあ。

村上 ミッドシップってノウハウがないとできない。どこの剛性が必要で、足をどうすればいいのか、分かっていなかったと思う。それよりカッコが大事だったんじゃない?

藤原 そう、ミッドシップ、2シーター、リトラクタブル・ヘッドライト、ウェッジ・シェイプってスーパーカーの記号を庶民がリアルに買えるようにしたものとして偉大ですよ。スーパーカーの擬似体験。

村上 ソアラやMR2が出せるって、この頃からトヨタが変わってきたんですよ。豊田章一郎さんの時代って結構攻めていたんだね。

藤原 誤解してほしくないのは、現代のミッドシップに乗る感覚でいるとちょっと面食らうだけで、個体のコンディションはすごくよかった。エンジンのレスポンスもいいし、パワーもきっちり出てる。操作系もしっかりしていてヒートもしないしクーラーも効く。機械的な不安感はいっさいない、良い個体でした。

村山 こうやってミッドシップって試行錯誤の時代があって、今につながるんだって勉強になりました。

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■MR2 G-limited Supercharger(1988)
型式 AW11
全長×全幅×全高 3950×1665×1250mm
ホイールベース 2320mm
車両重量 1100kg
乗車定員 2名
エンジン型式 水冷4気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量 1587cc
最高出力 145ps/6400rpm
最大トルク 19.0kgm/4400rpm
トランスミッション 5段MT
サスペンション(前後) ストラット
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤサイズ(前後) 205/50R15
車両本体価格(当時) 210万円(税抜)

話す人=藤原よしお(まとめも)+村上 政(ENGINE編集長)+村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正

(ENGINE2023年7月号)

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