2023.06.27

LIFESTYLE

主演女優がアカデミー賞で物議 映画『To Leslie トゥ・レスリー』の“アル中”芝居の凄まじきリアル度

酒で人生を狂わせたヒロインを熱演

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アルコール中毒ですべてを失ったシングルマザーの主人公を演じるアンドレア・ライズボローのリアルな芝居が注目を集める問題作。

ハリウッドの有名女優たちが支援


今年のアカデミー賞ではひとりの女優をめぐる”問題”が物議を醸した。『To Leslie トゥ・レスリー』で主演女優賞にノミネートされた英国出身のアンドレア・ライズボロー。監督やスタッフの売り込みにより作品を観たケイト・ウィンスレットやグウィネス・パルトローといった有名女優たちが、彼女の演技をSNSや個人的に開いた上映会などで絶賛。結果、それまでの賞レースではノーマークだった彼女がオスカー候補となったのだが、そのキャンペーン手法が公平なルールに抵触するのではないかとアカデミー賞側が問題視し、調査が行われたのだ(結局、彼女のノミネートが取り消されることはなかった)。



本作でライズボローが演じたのは19万ドル(約2500万円)の宝くじに当選したものの、数年で酒に使い果たしてしまったヒロイン。作品を観ると、アルコールに溺れ、どん底まで落ちた主人公を演じる彼女のリアルな芝居が凄まじく、アカデミー賞以外の映画賞でほとんど無視されたのが逆に不思議なくらいだ。孤独なモーテル従業員との出会いを通し、自らの破綻した人生を立て直そうと奮闘するその姿にも胸を打たれる。

低予算で潤沢な広告費がなくとも、優れた作品は存在する。アカデミー賞の一件は、そんな作品を見落としてしまいがちな賞レースのあり方に一石を投じたものでもある。

■レスリー役を演じたアンドレア・ライズボローは1981年イギリス生まれ。カズオ・イシグロ原作の『わたしを離さないで』(10)などに出演した後、トム・クルーズ主演のSF映画『オブリビオン』でハリウッド・デビューを飾り、国際的な注目を集めた。本作ではアルコールに溺れてどん底まで落ちたヒロインが、自らの人生を取り戻していく姿を、劇映画とは思えぬリアルさで熱演。まさかのアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、大きな話題を呼んだ。同じくイギリス出身の監督、マイケル・モリスは、本作で長編映画デビューを飾った。119分。6月23日(金) 全国ロードショー。配給:KADOKAWA

(C)2022 To Leslie Productions, Inc. All rights reserved.

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE 2023年7月号)

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