2023.07.15

LIFESTYLE

木材価格の高騰に職人の賃金上昇 設計を見直してコスト削減してもまだ足りない! かつてない難題を若い建築家と施主はどう乗り越えたのか!?

このエンジ色の天井の中に階段も……

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ウッドショックの荒波

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もっとも山下邸の設計・施工の時期は、材木の価格が何倍にも高騰したウッドショックが大きな問題に。そのうえ半導体不足や職人の賃金上昇などもあって建築費は高騰し、予算は当初の計画を大幅に上回ってしまう。そこで2階は壁を設けず、巨大なワンルームをカーテンで仕切って寝室や収納にする大胆なコスト削減策を採用したがそれでも足りない。若い建築事務所は、かってない難題に直面することとなった。



実は、新居完成時にクルマを乗り替えるつもりでいた山下さん。若い頃は、「デザインがいいから」と、リンカーン・ナビゲーターに乗っていたクルマ好きである。次にお子さんが生まれたタイミングで、今のスバルXV(2013年製)に乗り換えた。新車時のキャンペーン・デモカーを街で見かけての一目惚れだ。そして、「10年乗ったので、ジープ・ラングラーに乗り換えたいと考えていましたが、建築費の高騰を受け、今のクルマを大切に乗ることにしました」と、対応策を大阪人らしく笑いとばす。


もっとも当時を振り返ると、「本当に悩み、夫婦で随分と話し合いました。畠山さん、吉野さんのアーキペラゴの面々に才能があるのは分かっていますが、それだけで決断できるものではありません。決め手になったのは施工会社の社長さんのお人柄。安心感のある方で、最後はお任せしました」と、山下さん。



凡庸なローコスト住宅で妥協することはしなかった。それでもさらにコストを下げるため、建築家の大学時代の友人や、レクチャーを受けた大学の生徒たちが施工を手伝うことも。エンジ色の部分は既成のPタイルを使用し、アーキペラゴの所員総動員で貼った。こうした汗と涙の積み重ねで、若い建築事務所ならではの瑞々しさが感じられる家が完成したのである。山下さんが話す。


「自分の家は愛着が違いますね。長く住めるよう、率先して掃除やメンテナンスを行っています。段々家が趣味になってきた、というのは言い過ぎでしょうか。ともあれ、家作りを通して多くのことを学びました。家は沢山の人たちの協力があってはじめて完成するのだと。彼らの頑張りを考えると、この家のことをより多くの方に知ってもらえたらと思います」

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=田村浩章







■アーキペラゴアーキテクツスタジオ:処女作である「河童の家」で大きな注目を集める若い建築事務所。2017年に畠山鉄生によって設立。2年後に吉野太基が加わり共同代表に。2人は武蔵野美術大学時代の同期。畠山鉄生:1986年富山県生まれ、武蔵野美術大学大学院修了後、増田信吾+大坪克亘の事務所を経てアーキペラゴ設立。吉野太基:1988年熊本県生まれ、東京藝術大学大学院を修了後、長谷川豪の事務所を経て参画。

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(ENGINE2023年7月号)

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