2023.07.03

LIFESTYLE

ほら、あなたの街にもあるでしょ! 身近にあるパブリックアートの奥深い世界 街を「無料の美術館」として楽しむ!!

ルイーズ・ブルジョワ《ママン》2002年(1999年)(東京・六本木)

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美術館に行かずとも、街中にもたくさんの芸術作品がある。『パブリックアート入門』を上梓した美術ライター、浦島茂世氏が教える身近にあるアートの楽しみ方。

こんな近くにあるのに……。

美術の仕事をしていると「普段、芸術作品を見る機会がなくて……」と話す方とよく出会う。そんなとき、私は「最寄りの駅前や公園に銅像を見かけませんか? あれも芸術作品ですよ」と返答している。そう、芸術作品は美術館やギャラリーだけで見るものではない。街のなかにもたくさん存在しているのだ。

駅前や公園の銅像のように、公共空間にある芸術作品を「パブリックアート」と呼ぶ。岡本太郎による《太陽の塔》や《明日の神話》は、なかでもよく知られた存在だ。けれども、日本に存在するパブリックアートの多くは影が薄い。先日、東京都立川市にある岡崎乾二郎制作のパブリックアートが設置者の商業的な都合で撤去が検討される騒ぎがあった。このときは、識者や住民が声をあげ、計画は撤回されたのだが、これは例外中の例外。全国各地のパブリックアートの多くは近隣に住む人にもあまり関心を持たれていない。自分にはそれがとても歯がゆい。素晴らしい作品が街で、無料で見られるのに……。



時代ごとに流行がある

そんなことから、私は街でパブリックアートを見かけたら同行人に勝手に解説をすることにしている。パブリックアートはどれも同じように見えるが、時代ごとに流行のスタイルがあり、それぞれに歴史があることをふまえると、どの作品にも個性があることがわかってくる。



たとえば、戦後から1970年代くらいまでの作品は、女性(理由なく裸婦である場合が多い)や子どものブロンズが多く、たいていは《平和》や《自由》といった、当時の人たちの願いが込められたタイトルがつけられている。そして、時代が進むにつれ、作品のフォルムやタイトルは抽象的になっていき、1990年代以降は《my sky hole 91 Tokyo》や《グローイング・ガーデナー》のようにカラフルでスケールの大きな作品が数多く登場するようになる。近年、六本木ヒルズの《ママン》のように、観光スポットになった作品も増えてきた。パブリックアートは街や社会の変化と連動し、どんどん変化しているのだ。そのことに気づくと、それまで意識していなかった駅前や公園にある銅像にも注意が向いてくるから面白い。

日本中にたくさんあるパブリックアート。せっかくあるのに楽しまない手はない。パブリックアートを見て歩き、街を「無料の美術館」として楽しんでみよう。


文=浦島茂世(美術ライター)

(ENGINE2023年7月号)

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