昨年10月の鈴鹿F1グランプリ開催を前に、横浜で世界初披露されたA110R。その名は“ラディカル”の“R”と豪語するシリーズ最強モデルに、ようやく試乗できる機会がやってきた。エンジン編集長のムラカミが箱根ターンパイクから報告する。
“ラディカル”の“R”
クルマの世界で“R”とつけば、それは普通“レーシング”の略称だ。ところがこれは、“ラディカル”の“R”だとメーカー自ら明言しているのだから、いったいどんな過激な走りのモデルなのかと、昨年の発表以来、ずっと気になっていた。
その試乗車がようやく日本に上陸し、箱根ターンパイクで試乗会が開かれるという案内が届いたが、そこには留意事項として、RはSより挙動がシビアな特殊なモデルなので、この手のモデルに運転経験が豊富な人に乗ってもらいたいこと、装着しているカーボンホイールは入手困難で替えがないので注意して欲しいこと、が書かれていた。それでも乗ってみたい気持ちは抑え難く、戦々恐々、出かけた次第である。
実際のところ、改めて目の当たりにしたRは、見るからに過激な別物感を釀しだしていた。ボンネット、ルーフ、リア・エンジンフードに加えて、ホイールもフルカーボン製で、さらにシートも6点式固定レーシング・ハーネスを備えたフルカーボンのモノコック・バケットになっている。そしてレーシングカーのようなスワンネックのリア・ウイングに、巨大なリア・ディフューザー。張り出したサイド・スカートの後端部には小さな垂直ウイングが付く。クルマ全体の車高はSよりも10mm低い。
このRの開発に当たり、アルピーヌが最も留意したのが、さらなる軽量化とエアロダイナミクスの最適化、そしてシャシーのチューニングにあることは、この姿カタチをみても頷ける。カーボン・パーツの多用によりエアロキットの付いたSよりも34kg軽い1090kgの車重を実現。とりわけ、デュケーヌ社と共同開発した2ピース式のフルカーボン・ホイールの採用による12.5kgのバネ下重量の低減が、走りにも大きく影響するであろうことが予想できる。
エアロダイナミクスの点では、Sのシャシー・スポールより10mm低くすることなどによりドラッグを2%低減(車高調整機能でさらに10mm下げたトラック・モード時は5%低減)したほか、時速275kmで約140kgのダウンフォースを発生するのはSと同じだが、その前後配分をリア寄りに変更し、Sの前60kg、後81kgから、Rは前30kg、後110kgにして、ハンドリング性能の向上を図っているという。そして、大幅に手を入れられたシャシーには、前後とも10%剛性を高めたアイバッハ製スプリングと、20段階減衰力調整式のZF製ダンパーを採用。さらにアンチロールバーの剛性も、前10%、後25%高められている。
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