ご先祖と同じ味つけ最初に試乗したのは、2リッターのガソリン・エンジンにプラグイン・ハイブリッドを組み合わせたE300e4マティック。他の試乗車同様、このE300eにもエア・サスペンションが搭載されていたが、その乗り心地は、高速域でのフラット感を演出しつつも、いい意味でどこかに“緩さ”を残した味つけ。この方向性は、従来型のE220dでも認められたが、それ以上に驚いたのが、戦後間もない時期に誕生した「Eクラスのご先祖様」も同様のテイストに仕上げられていたことにある。今回は試乗会のアトラクションとして、W124までの歴代Eクラス6台に試乗する機会が用意されていたのだが、ほどよいフラット感とともに、路面からのショックを軽やかにいなす優しい味つけが、Eクラスの伝統芸であることを再確認する絶好の機会となった。さらにいえば、Sクラスよりソリッドで、Cクラスより重厚感が味わえる点がEクラス独自のキャラクターといえる。
新型Eクラスは静粛性も向上していたが、これは試乗車のE300eがPHEVで、クルージング時にはエンジンが停止していたことも大きく関係していたはず。ただし、モーター走行時はキャビンがとても静かなだけに、エンジンがかかった途端、それまでの静粛さに小さな綻びが生じるのはいかにも残念。4気筒エンジンが生じるノイズは十分に小さく、やや乾いたその音色も悪くはないのだけれど、人間の聴覚は音量の絶対的な大小より、その“変化代”に対して敏感に反応するものなのだ。その点、あとで試乗したガソリンモデルのE200やディーゼルのE220dは、控えめなエンジン・ノイズが一定して聞こえる分、個人的にはむしろ快適に感じたことをご報告しておきたい。
ざっくりまとめれば、ガソリン、ディーゼル、PHEVのどれをとっても動力性能は必要にして十分。ただし、「必要十分なレベル」以上の速さを引き出そうとすれば、それなりに運転を工夫する必要が出てくる。私自身はこのパフォーマンスで十分満足だが、周囲の交通を圧倒するような速さをご所望の方は、6気筒モデルもしくはAMGの登場を待ったほうがいいかもしれない。実は、新型Eクラスの白眉は先進運転支援システム(ADAS)の完成度にあって、ナビゲーションの目的地を設定し、アダプティブ・クルーズ・コントロールを作動させたときの速度制御は実に的確かつきめ細やか。とりわけ速度制限への対応やコーナー進入時の減速感が見事なのだけれど、日本の道路環境における平均的なペースを考えると、メルセデスが多大な投資を行って開発したこのシステムも「ネコに小判」のような気がしなくもない。「そうなると、今後はADASでも日本はガラパゴス化するのか?」という軽い不安が脳裏をよぎる、新型Eクラスの国際試乗会だった。
■メルセデス・ベンツE200(E200d)駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動全長×全幅×全高 4949×1890(1880)×1468(1480)mmホイールベース 2961mmトレッド(前/後) 1634(1634)/1648(1648)mm車両重量 1825(1915)kgエンジン形式 水冷直列4気筒ターボ(ディーゼル)+モーター総排気量 1999cc(1993cc)最高出力 150kW/5800rpm(145kW/3600rpm)モーター(最高出力/最大トルク) 17kW(17kW)/205Nm(205Nm)最大トルク 320Nm/1600-4000rpm(440Nm/1800~2200rpm)トランスミッション 9段ATサスペンション(前後) マルチリンク/コイルタイヤサイズ(前後) 225/60R17(225/60R17)ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク車両本体価格 未定文=大谷達也 写真=メルセデス・ベンツ(ENGINE2023年11月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
いますぐ登録
会員の方はこちら