2023.11.05

CARS

徳利とおちょこを駐車場に持って行って盃を交わした愛車との別れに涙 俳優の川上麻衣子さんにとって、クルマはずっと相棒であり恋人だった!

俳優の川上麻衣子さん、最初の愛車はアウトビアンキA112

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ボルボのつもりだった

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初めてのマイカーとの日々は楽しいものだったが、小さなイタリア車ゆえか、路上で割り込みや煽りなどを受けることも多かったという。

「もっと大きいクルマじゃないと危ないなと思って、頑丈なボルボに乗り換えることにしたんです」

某中古車センターへ出かけると、お目当てのボルボには「売約済み」の札があり、縁がなかったと諦めた麻衣子さんに営業マンから声がかかった。「サーブならありますよ」。

麻衣子さんはサーブ900iを購入する。

「私がスウェーデンで暮らしていた頃、ボルボって農耕車のイメージがありました。スタイリッシュではないけど丈夫みたいな。一方、サーブは優雅でオシャレな感じでした。サーブはもうちょっと大人になってからと思っていたんですけど」

サーブに乗り始めると、湾曲したフロント・ウィンドウやセンター・コンソールにあるイグニッション・スイッチなど、独特のデザインが好きになっていったという。

「ベンツでもビーエムでもアウディでもない。ちょっと一癖ある感じが好きでした。あと、なんとも出足が遅いのが良かったです。落ち着いた感じで(笑)」

芸能界では俳優の柄本明さんや、かとうかず子さんもサーブに乗っていて、サーブ談義を交わしたそうだ。

すっかりサーブ党になった麻衣子さん、900iに続き9000ターボ、900カブリオレ、そして9-5エステートとサーブを4台乗り継いだ。ところが9-5エステートに乗っているときに、サーブ倒産という衝撃的なニュースが飛び込んできた。

「ちょうどクルマが白い煙を吐くようになって、どうしようと思っていたときだったんです。これから修理はどうなるんだろう? すごく不安でした。仕方がない。一度クルマから離れようと思ったんです」
 
37歳から10年ほど乗った9-5エステートとの別れは辛かったという。

「引き取られる日に洗車して、徳利とおちょこを駐車場に持って行き、別れの盃を交わしました。上げていたテールゲートがバタンと落ちて、わあ、怒ってるなと思いました」

ちなみに麻衣子さんにとって乗ってきたサーブはどれも相棒であり、恋人だったという。

「私にはちょっとやんちゃな男の子というイメージです。サブ君と呼んでいました」

サーブ9-5エステートと別れて以来、麻衣子さんはクルマを所有していない。

「東京で暮らしていると、クルマがなくて困るということがないですからね。あとお酒も飲めるし。サブ君がいたときは運転代行を頼む日々でしたから(笑)」



憧れのジャガー

さて、サーブを乗り継いできた麻衣子さんだが、60歳になったら乗りたいと思っていたクルマがある。それが今回麻衣子さんと一緒に撮影したジャガーXJ6だ。

「憧れていました。見た目がとてもエレガントでしょう? こういうクルマが似合う大人の女性になりたいとずっと思っていました。同じカタチのジャガーに俳優の古谷一行さんが乗っておられましてね、とてもカッコ良かったのを覚えています」

今回の撮影車両が私のクルマだと伝えると、「えー! ホントですかあ! すごーい。ステキ」と自分のことのように喜んでくれた。

「あと3年でこのビッグ・キャットが似合う人になれるかなあ?」と笑う麻衣子さんだが、ホンモノの猫をすでに飼っている。

「猫は人との距離感がいいんです。犬ほど人にベッタリじゃない。私は猫から多くのことを教わりました」

猫の保護活動をしているボランティアへの協力も積極的に行っている。

「スウェーデンの小物を売っている私のお店の2階で猫の譲渡会を行っていて、これまでに1000匹ちかい里親さんとのご縁がありました」

俳優業、スウェーデンの小物を売るショップ、そして猫を通じての社会活動など麻衣子さんには多くの顔がある。だから本当はひとりになれるクルマという空間があった方がいいのではないか? 

「そうですね。サブ君を運転すると気持ちが切り替わったりして、随分救われたことがありました。サーブは男の子だったけど、ジャガーは紳士かな(笑)」

麻衣子さん、あと3年。ジャガーXJ6を大事に乗りますね。

文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭 ヘアメイク=久保田春恵

川上麻衣子
スウェーデン・ストックホルム生まれ。14歳のとき、NHKドラマ人間模様『絆』でデビュー。同年TBS『3年B組金八先生』で生徒役を好演し注目される。映画『でべそ』(96年、望月六郎監督)で第6回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞受賞。映画『その男、凶暴につき』(89年)、NHK大河ドラマ『秀吉』(96年)、ドラマ『ドクターX』(2021年)、舞台『午後の遺言状』(99年)、『いつかA列車に乗って』(2021年)など映画、ドラマ、舞台に多数出演。著書に『ストックホルムからの手紙-My Swedish Style』(同朋舎)、『彼の彼女と私の538日 猫からはじまる幸せのカタチ』(竹書房)、翻訳書にペニラ・スタールフェルト『愛のほん』、『死のほん』(ともに小学館)がある。

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(ENGINE2023年11月号)

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