2024.10.03

CARS

これぞ完全無欠のフェラーリ GTC4ルッソは、どんなスポーツカーだったのか?【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

フル4シーターのフェラーリ、FF改めGTC4ルッソに試乗!

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【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2016年9月号に掲載されたフェラーリのGTC4ルッソのリポートを取り上げる。ロング・ルーフ・デザインやフェラーリ初の4WDを採用したフル4座の意欲作FFがフェイスリフト。車名もGTC4ルッソと改められた。試乗場所はイタリア北部のバカンスが始まったばかりのアルプスの山々だ。

ロング・ルーフ・スタイル


GTC4ルッソの前身であるフェラーリFFを初めて見たのはデビューした2011年のジュネーブ・モーターショウのときだった。その特徴的なスタイリングに衝撃を受けたことをいまでも覚えている。

骨格はFFと同じだが、外板はほぼすべて刷新し、よりクーペらしいフォルムが与えられた。1960年代後半に登場した330GTCを彷彿させるフロント・フェンダーのエア・アウトレットや丸4灯型テール・ライトなど、ひと目でフェラーリとわかるディテールを追加。


612スカリエッティからバトンを受けたFFは、456GT以来、20年に亘って4シーターに用いられてきたファストバック・スタイルを捨て、1962年に登場したブレッド・バンと呼ばれる250GTのレーシング・カーを彷彿させるかのようなロング・ルーフ・スタイルで登場した。もちろんそれは、フル4座のGTカーとして実用性を高めるために他ならない。その甲斐あって、後部に乗降用のドアがないこと以外、ポルシェ・パナメーラにも勝るとも劣らぬ居住空間と荷室の広さを手に入れることに成功する。

フェラーリとしては初めて4WDを採用したのもトピックだった。PTU(パワー・トランスファー・ユニット)と呼ばれる軽量であることを主眼として開発された4WDシステムは、エンジンの出力をトランスファーを介して前後輪に振り分けるという有り体なものではなく、前輪の駆動力はエンジン前方から後輪用とは別に取り出すという、これまでにはない独創的な機構だったのである。



アンヴェールされたFFを見て、フェラーリが採った攻めの姿勢に感銘を受けた。しかしその一方で、いろいろな要件を盛り込みすぎると逆にコンセプトがブレてしまい、クルマの良さが発揮されないことが多々あること、そして、ここまでの万能さを求めるなら、いっそ清水の舞台から飛び降りてSUVにしてしまってもよかったのではないかという思いが頭をよぎった。もちろん、SUVはおろか、4ドアすら作らないとフェラーリが公言しているのは知っているが、もしかしたら、顧客もそう望んでいるのではないかと。

あれから5年、その間、残念ながらFFに乗る機会に恵まれず、モヤモヤとした思いは晴れることがなかった。そして今回の試乗会を迎えたのである。

エンツォ・フェラーリを上回る

GTC4ルッソのステアリングを握り、ブルニコの街を抜けて最初に感じたのはクルマが小さく思えたことだ。基本的な骨格を共有するFF同様、全長4.9m、全幅2mと、けっこう大柄だから、道幅の狭い道で対向車とすれ違うときなどにはそれなりに気は使う。しかし、そういった状況以外では、大きさを持て余すことはない。逆に、大きなことを忘れて、想像以上にコーナーのインに着き過ぎてヒヤッとすることが少なくなかった。



取材当日はすでに7月に入っていたため、バカンスに訪れた観光客で交通量は驚くほど多く、またサイクリングを楽しむ自転車乗りたちの影響で、流れもゆっくり。ところどころで渋滞もあった。イタリアに来てまで渋滞かよと人間の方はグズりそうになったが、GTC4ルッソはまったくグズるそぶりをみせない。6.3リッターV12はエンツォ・フェラーリを上回る690馬力を発生。そんな高出力ユニットにもかかわらず、アクセレレーターの微妙な操作に対してもギクシャクすることはない。同じく躾のいいデュアル・クラッチを介して、1km/h、2km/hといった細かい速度調整を行うことも可能だ。

試乗会場の周辺はスキー・リゾートとしても有名で、2000mを超える山々にはゲレンデとリフトがあちらこちらに散在する。冬季に降る雪の影響なのか、路面の状況はあまり良くない。しかし、GTC4は荒れた道を難なくクリアしていく。スポーツカー相応の硬さはあるものの、路面からの入力はその大小にかかわらず角が丸められており、不快な印象は受けない。クルマの姿勢も終始フラットだ。



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