2023.11.01

CARS

東京モーターショーあらためジャパン・モビリティ・ショー開催 すぐ先の未来の向こうに見えるものは?

10月28日~11月5日まで、現在東京ビッグサイトで一般公開中のジャパン・モビリティ・ショー2023には、どんな未来のクルマが現れたのか。その一部をここで紹介しつつ、モーターショーの未来についても考えてみた。 

モーターショーの在り方自体が問われている

数年前までは“モーターショー”と言えば自動車業界にとっては重要なイベントで、ローカルなショーも含めるとほぼ毎月と言っていい頻度で開催されていた。しかし、現在はどうか? 中国/タイなどアジア圏を除けばどれも衰退、もしくは事業形態や開催内容の変更を余儀なくされている。コロナがフックになっているのも事実だが、それに加えてモーターショーの“役割”が変化してきた事も大きいと分析する。



その1つが“情報の重要性”だ。かつてはメディアもショーに行かなければニュー・モデルの写真/情報を手に入れられなかった。それは一般来場者も同じで、現地に行った人しか“情報”をリアルに入手できなかった。しかし、現在はどうか? 現地の写真や資料は情報解禁時間が来れば即ダウンロード可能な上にライブ配信まで実施されるため、無理して現地に行く必要はない……。

もう1つは出展メーカーのモーターショーの“選択と集中”だ。主要メーカーはこれまで皆勤賞の如くどのショーにも出展していたが、最近はかなり絞っている。主な理由は費用対効果が得られないからだ。あるメーカー関係者に聞くと「海外ショーの出展料は年々増加傾向で、中堅メーカーでも最低5~10億円。しかし、投資に対する効果が出ていないのも事実」と語っている。

その証拠に現在はショー以外のクルマ系イベントへの出展や独自イベントの開催が増えている。つまり、不特定多数よりターゲット・カスタマーに向けたPRのほうが効果的という判断で、まさにモーターショーの在り方自体が問われているのである。

東京モーターショーの挑戦

そんな世界のモーターショーの中でも衰退が最も激しかったのは東京モーターショーである。来場者数は1991年の202万人をピークに減少を辿り、2017年は77万人……。輸入車ブランドが相次いで出展を取り止め、空きスペースが目立った会場を見たメディアから、「東京モーターショー衰退」、「クルマ離れは解消せず」など言われ放題だった。

ただ、ここで諦めなかったのが、東京モーターショーを主催する日本自動車工業会だ。会長である豊田章男氏は「販売促進のためのモーターショーの意味合いは薄れてきたと思っている。クルマが今までの延長線上にない未来に向かっていく中、東京モーターショーもそういう場にモデルチェンジしていかないといけない」と反省し、様々な改革を進めた。

2019年の東京モーターショーは各メーカーの車両展示だけでなく他の産業も巻き込み様々なコンテンツを多数用意した。結果は前回を大きく上回る130万人を動員。次はさらにステップアップと思っていたがコロナに直面、2021年は開催中止に……。しかしコロナ危機を乗り越え、再び日本自動車工業会では「東京モーターショーはどうあるべきか?」という議論が行なわれた。出た結論は「改革をさらに進める」、つまりモーターショーを変える“挑戦”を継続するというものだった。

その改革をざっくりいえば、クルマの枠を超えてモビリティ全体で日本の未来を世界に発信する、という。新聞・経済紙の中には「日本の製造業はオワコン」と声もあるが、日本にはまだまだ素晴らしい技術がたくさん存在する。そんな日本の“人”や“技術”をお披露目する場としてのショーへの変革。それが東京モーターショーからジャパン・モビリティ・ショーへのフルモデル・チェンジ。クルマからモビリティ、東京から日本と、ショーの目的・意義を今まで以上に大きく広くしたのである。

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その証拠に自動車メーカー以外にもモビリティに関わる400社以上の出展を予定するが、これは過去最多。また、モビリティが実現する未来や街を体感できる東京フューチャーツアーや、水素エネルギーを使ったエンタメイベント、新しいビジネス・チャンスを提供するスタートアップ企画、さらにはモータースポーツなど、前回以上に多種多様な企画が予定されている。

ただ、いくら付帯企画が充実しても主役の“クルマ”の魅力がなければ意味がない。筆者もそこが心配で直前の説明会で長田 准ジャパン・モビリティ・ショー委員長に質問したが「そこが一番重要ですので、安心していただきたい」と語ってくれた。

この記事を書いているタイミングでは各メーカーの出展概要はまちまちで、SNSなどでの反応も今ひとつな感もあるが、風の噂では当日発表のビック・サプライズが多数あると聞いている。それはクルマ好きの皆が期待しているであろう、「未来の〇〇」、「次世代〇〇」だと信じている。本当に魅力あるショーになっているのか? 現地に足を運び、自分の目で確認して判断してほしい。

文=山本シンヤ

◆モビリティ・ショーにはこんなクルマたちが公開されている!


MERCEDES-BENZ
エレキのゲレンデがやって来る
メルセデス・ベンツEQG
世界初公開モデルはないが、2台のジャパン・プレミア・モデルを用意する。コンセプトEQGは日本でも人気の高いGクラスのBEVモデル、C63 S EパフォーマンスはF1譲りのハイブリッドを搭載したモンスター・セダンだ。他にも電動化モデルを中心に展示が行なわれるが、オン/オフ究極の電動化モデルを持ち込む意義は、全方位での電動化への挑戦だと思っている。

BMW
これからのBMWサルーンとクーペSUV
BMWX2&iX2
久々となる東京での輸入車ワールド・プレミアは、クロスオーバー・クーペのX2と、その電動車iX2だ。先代はX1のクーペ版というイメージだったが、新型はより独自となる個性的なデザインが特徴。パワートレインはガソリン/ディーゼル/BEVと日本車と同じくマルチパスウェイの戦略を採る。まだまだ日本市場を諦めていないBMWらしい部分だ。さらに次世代のBMWを表現したコンセプトカー、ビジョン・ノイエ・クラッセも日本初披露。

LEXUS
電動化にさらに突き進むか!
レクサスLF-ZC
レクサスが用意する2台のコンセプト・モデルは、4月のトヨタ新体制方針説明会で発表した、バッテリーやプラットフォーム、クルマの作り方など、すべてをBEV最適で考えた「次世代BEV」なのは間違いなし。1台はすでにフロント・ビューが公開済みのセダン・タイプだが、もう1台はクロスオーバーか!? レクサスBEV/FCEV100%への挑戦がここから始まる。

MITSUBISHI
次期型デリカのデザイン・スタディ?
MITSUBISHI  D:X Concept
注目は「電動クロスオーバーMPV」。SUVの走破性と、MPVの居住性と快適性・使い勝手を兼ね備えた電動車ということで推測すると、デリカD5の後継!? アウトランダー/デリカD2に続く「三菱らしさ」復権のカンフル剤となりそうだ。新型トライトンやスタートアップ企業とコラボした小型モビリティも展示。

HONDA
ホンダ・シティ&モトコンポも再定義
ホンダ・サスティナCコンセプト
出展テーマ「HONDA DREAM LOOP」に合わせホンダの夢を表現したモデルを用意。資源の循環利用、ラストワンマイル、自律移動など、人を助ける電動モビリティ中心だが、注目は現時点では非公開の“ホンダ・スペシャリティ・スポーツ・コンセプト”。電動化時代でも操る喜びと際立つ個性を備えるというが、果たしてS2000後継? それともプレリュード後継?

NISSAN
実車とバーチャル、両方のコンセプト
ニッサン・ハイパー・パンク
BEVコンセプトカー“シリーズ”をお披露目する日産。ハイパー・アーバンはアクティブユーザー向け、実車ではなくデジタル展示となるハイパー・アドベンチャーはアウトドア志向のBEVと、用途や嗜好に合わせたBEVの提案となる。他にもサプライズ発表があるそうだが、風の噂では日産を象徴するあのモデルだという情報も!? 市販車では複数の創立90周年記念の特別仕様車の展示も行なわれる。

MAZDA
クルマ好きの考える未来のロードスター
MAZDA ICONIC SP
注目は出展テーマ「クルマ好きがつくる未来」を象徴とするコンセプトだ。現時点では後ろ姿のみ公開。丸ランプとMAZDAロゴの下の2本の縦フィンは何を意味する? 次期ロードスター? 2015年のRXビジョン以来となるロータリー搭載の旗艦スポーツ? ちなみにほかの展示はロードスター推しである。

SUBARU
電動化時代のスバルの旗艦クーペ?
SUBARU SPORT MOBILITY Concept
2台のコンセプトを用意。空飛ぶクルマ、エアモビリティ・コンセプトは航空機メーカーが起源のスバルらしい提案。絵に描いた餅ではなくすでに走行実験中だとか。スポーツ・モビリティ・コンセプトは水平対向エンジンを搭載せずスバルらしさを表現するBEVクーペ。どちらもこれまでのスバルには無かった挑戦を感じるモデル。

DAIHATSU
この近未来はアリです

ダイハツはサスティナブルな存在の「小さなクルマ」で豊かなモビリティ・ライフの提案。注目は縦置きFRレイアウト、サイズアップ、1.3リッターエンジンと軽自動車の枠を超える挑戦を行なったビジョン・コペン。あくまでも提案ながらもメカニズムが現実的なのは!? BEVの提案はミーモやユニフォーム・トラック&カーゴ、オサンポを用意。パッケージはもちろん、軽自動車の概念を変えるデザインにも注目。

SUZUKI
より実直に、より手頃に
スズキeVX
4輪、2輪、小型モビリティと多彩な出展を行なうスズキ。BEVは世界戦略車第1弾のeVXと次期ハスラーと噂されるeWX、商用軽バンのeエブリイ・コンセプトを展示。またスイフトとスペーシア/カスタムの次期型の提案も。2輪は電動のみならず水素エンジンも!! 小型モビリティも用途に合わせて様々なタイプを用意。どれもワクワクするモデルばかり。

(ENGINE2023年12月号)

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