2023.11.15

CARS

「1100Nmのすべてを解き放ち、宇宙にまで吸い込まれそうな絶頂感を味わう」 BMW i7シリーズに加わったM70 xDriveに島下泰久がポルトガルで試乗!

660馬力、1100Nmの超極上スポーツ・サルーン、BMW i7 M70 xDrive

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リスボンで開かれたBMWの国際試乗会には、特別なモデルが用意されていた。i7に加わったMパフォーマンス・モデルのM70xDriveだ。その走りやいかに。現地で試乗したモータージャーナリストの島下泰久がリポートする。

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期待は確信に変わった!

昨年デビューしたBMW新型7シリーズに設定された初のBEV、i7の衝撃は大きかった。電気モーター駆動らしいスムーズかつ力強い走りと高い静粛性を実現するだけではなく、BMWにとっては欠かせない、まさに打てば響くドライバビリティをも併せ持ったその走りは、7シリーズ全体の中でベストと評せる仕上がりだったからだ。



それだけにMパフォーマンス・モデルとして新たに登場したi7M70xDriveへの期待も自ずと膨らんでしまったわけだが、実際にドライブしてみて、その期待は確信に変わった。こういうクルマが出てくるならば、BEVの未来は明るい。そんな風にすら思えたのである。

各部がブラックアウトされ、いくつかの空力パーツが追加されている以外、外観はi7と大きく変わるところはない。しかしながらその中身、前後2モーターのパワートレインのスペックは強烈で、最高出力はフロントモーター258ps、リア489psの合計660ps、最大トルクは1100Nmに達する。0-100km/h加速は3.7秒という俊足ぶりだ。



プレミアムブランドの中でいち早く電動モデルに特化したBMWiを立ち上げた長年の経験から、主流の永久磁石同期モーターではなく電磁石を用いた同軸モーター(ESM)を使っているBMW。今回、リアモーターは新開発とされ、一般的な3相ではなく6相のステーターを採用することで、コンパクトな外径から圧倒的な出力を稼ぎ出すことを可能にしている。文句なしにBMW最強の電気モーターである。

この途方もない出力を路面に余さず伝えるために、タイヤサイズは21インチが標準に。ボディはバルクヘッドとストラットタワーの間に補強パネルを追加するなどして剛性を高めている。シャシーも前後エアサスペンション、電子制御ダンパー、4輪操舵のインテグラルアクティブステアリング、更にはアクティブロールスタビリゼーションなど、電子デバイスが総動員された。

標準で21インチのタイヤを履くにもかかわらず、乗り心地は快適そのもの。足は前後ともエアサスペンションで、後輪操舵も標準装備する。

吸い込まれていきそうな絶頂感


リスボンの街中を抜け、高速道路に入り、アルマダへ向けて4月25日橋へ。ここで唸らされたのが、素晴らしい快適性だ。路面からの入力をしなやかにいなしながらも姿勢は常にフラット。それでいてスタビリティもきわめて高く、リラックスして超高速巡航できる。Mパフォーマンス・モデルとは言っても、そこはBEVであり7シリーズ。静粛性も同時に乗ったi5より一枚も二枚も上手で、もはや溜め息しか出ないほどの仕上がりだったのだ。

もちろん安楽なだけではない。アクセレレーターに力を込めれば、すぐさま加速態勢に。しかも、それは一気にドーンと背後から蹴飛ばしてくるのではなく、クルマの質量も相まってのタメの効いたレスポンスがリニアリティに繋がっていて、極上の爽快感を味わうことができる。

試乗車の内外装はオーロラ・ダイアモンド・グリーンのボディカラーにレザー“メリノ”キャラメル/アトラスグレーの内装という美しい組み合わせだ。オートマチック・ドアには新たに車両に近づくだけで自動的に開く機能を設定。最高速度を90km/hに抑制するなどして航続距離を15~25%伸ばす新採用の「MAXRANGE」機能は、今後i7全車に導入されるという。




加速の快感を倍加させるのが、BMWアイコニックサウンドだ。右足に込める力の加減や速度の伸びに応じて奏でられる、エンジン音を模しているようで電子的でもある不思議なこの音は、音楽家のハンス・ジマーが手掛けたものだという。とりわけフラットアウトにした時の、ギアシフトが無いだけにまさに永遠に続くかのような駆け上がりには、そのまま宇宙にまで吸い込まれていきそうな絶頂感があり、完全にノックアウトされてしまった。

ちなみに最大トルクはスポーツ・モードに入れれば1015Nmまで引き上げられ、サウンドもより野太いものになる。更に、Mローンチ・コントロールを使うか、左側パドルを引いて起動させる10秒間限定のMスポーツブーストを用いれば、1100Nmすべてを解き放つことができる。もっとも、アウトバーンでの追い越しの時ですら、10秒間全開にし続けられることなど、そうはないはずだ。



そんな風に楽しみながら到着したワインディング・ロードでも、i7M70xDriveは大いに楽しませてくれた。操舵に対するクルマの応答は、まさに意のまま。車体の大きさ、重さからは想像できないほどのリニアな感覚で、コーナーの連続をリズミカルに駆け抜けることができる。前述の様々なデバイスが効果を発揮しているのは間違いないが、その連携は見事で、ドライバーに違和感を伝えてくることはない。

BEVならではの利点や美点をしっかり備えるのみならず、誰もがBMWに、とりわけMのバッジをつけたモデルに求めるパフォーマンス、そして情緒に訴えかける部分をも両立させたその仕上がりには、始終圧倒されっぱなしだった。電動化を進めるBMW・M社は、現在はi4M50とiXM60で1割強のBEV比率を、2030年には9割近くまで引き上げる目標を掲げている。最初に聞いた時にはまさかと思ったが、こういうクルマが出てくるなら、そんな未来もアリかもしれないと思った。

文=島下泰久 写真=BMWA.G.

■BMWi7M70xDrive
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5391×1950×1544mm
ホイールベース 3215mm
トレッド(前/後) 1662/1684mm
車両重量(EU) 2770kg
バッテリー容量 101.7kWh
走行距離(WLTP) 488-560km
最高出力(システム計) 前190+後360(660)ps
最大トルク(システム計) 前365+後650(1100)kW
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エアスプリング
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/40R21(後)285/35R21
車両本体価格(税込み) 2198万円

(ENGINE2023年12月号)

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