2023.11.14

CARS

「乗り心地の良さは、どんな基準をもってしても全ての日本車は勝てない!」 いまEVは買いか? それとも待ちか? 自動車評論家の国沢光宏がBYD ATTO3に乗ってみた!

赤丸急上昇中の中国、BYDのATTO3のデキに驚きました!

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いま新車購入を考えたとき、電気自動車が候補になる人も多いだろう。でも、EVはいま本当に買いなのか? あるいは買っていいのか? それとも待ちなのか? その疑問に答えを出すべく、現実的に購入対象になりそうな価格帯の輸入車EVを集めてあらためて乗ってみた。エンジンから電気へと舵を切るヨーロッパ・ブランドのボルボからはC40リチャージとフィアット500e、新興アジア・ブランドからはヒョンデのアイオニック5とBYDのATTO3の実用小型電気自動車4台をモータージャーナリストの国沢光宏がテストした。ボルボC40リチャージ、フィアット500e、ヒョンデのアイオニック5に続いて今回は、最後の一台、BYDのATTO3を取り上げる。◆1台目のボルボC40リチャージから先に読む場合はこちら!

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赤丸急上昇のBYD

最後の一台は今や評価赤丸急上昇中のBYDが世界制覇を狙うATTO3だ。全長4455mm×全幅1875mmでCセグとDセグの中間くらい。ボルボXC40リチャージとガチなクラスに属す。少しばかりポルシェに似ているデザインながら、積極的に「カッコいいね!」したい。今回試乗したモデルはフル装備で440万円とリーズナブル。塗装品質も素晴らしい!インテリアのクオリティもDセグ並みで、全てソフトパッド。リアハッチは電動開閉式。居住空間やラゲッジスペースも広く、これ1台で使ったって不満なし。



使われている電池が手強い。BYDの得意分野であるリン酸鉄である。満充電の航続距離を350kmとした場合、3000回の充放電が可能としたなら105万kmまで顕著な劣化がないということ。エンジン車以上の耐久性を持つのだから恐れ入る。充放電性能の高さを活かし、回生制動時のエネルギー回収性能が素晴らしい。最大89kWh分も電池に戻せている(121psの加速と同じ減速エネルギーを回収出来る)。普通にブレーキ踏むくらいなら100%回生出来そう。実際、実用燃費は同じクラスの三元系電池より明らかに良い。◆「リン酸鉄」と「三元系」の電池の違いと特性についてはこちらでチェック!

タイヤは優れたバランスを持つコンチネンタルのエコ・コンタクト(Dセグに近い235/50R18サイズ)。お金が掛かっている。重いバッテリーを車体中央の下側に搭載しているためハンドリングも素直で気持ち良く曲がってくれる。電気自動車、基本的にコーナリングはガソリン車を大きく凌ぐ。驚くのが乗り心地の良さで、どんな基準をもってしても全ての日本車は勝てない。直進安定性やブレーキのタッチなど技術力が必要な分野までキッチリ仕上がっていた。

 直線基調のヒョンデ・アイオニック5とは正反対の、曲線を多用したBYD ATTO3の外観は、日本車に似ている。奇をてらった造形が散見されるインテリアを見ると、中国の人は派手好きなんだなと思う。ゴム紐で作られたドアポケットはなんとギターの弦をイメージしたという。指ではじいたらボン! と音がした。



小型BEVは中・韓が優勢

ここまで読んで「電気自動車の評価は欧州車よりアジア車の方が高いのか?」と思うことだろう。正直なところ、アジア車の方が高い。欧州車は未だエンジン車のプラットフォームをベースに電気自動車を作っているし、電池も1世代古くなってしまっている。この点、日本の電気自動車も欧州車と同じ。プラットフォームと電池で勝てていない。そればかりか電池の調達コストが高いのだろう。500万円で売るクルマでいえば、日欧車は250万円が電池。中国車だと電池150万円といったイメージ。車体にお金を掛けられる。



かといって韓国車や中国車をショッピングリストの上位にするかとなれば、皆さん「いいえ」だと思う。我が国は韓国や中国の製品に対し、主として品質面で信用していない。欧州のブランドバッグが10万円で売れるのに対し、同じ使い勝手を持つ中国や韓国ブランドのバッグは1万円だって売れないだろう。クルマも同じ。補助金を使えば400万円を切る価格になったとしても、絶対的な金額で買う気にならない。韓国や中国製の電気自動車が200万円を切ってきたら、道具として購入する人も出てくるんじゃなかろうか。

そもそも論として我が国は燃費の良いハイブリッドもある。欧州のようなカンパニーカー制度(住宅手当のようなもの。通勤用のクルマが貸与される)もなし。加えて電池が寿命になると二束三文の価値しか無くなることを日産リーフが証明した。輸入車の場合、保証期間後に電池やインバーターのトラブルが出たら、中古車価格より修理コストの方が高くなりそう。もっと安価でもっと性能が高くてもっと長持ちする電気自動車が出てくるまで売れ行きは伸び悩むと思う。普及するまで5年ぐらいは掛かるだろう。

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

■BYD ATTO3
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4455×1875×1615mm
ホイールベース 2720mm
車両重量 1750kg
最高出力 204ps/5000~8000rpm
最大トルク 310Nm/0~4620rpm
バッテリー形式 リチウムイオン
バッテリー容量 58.56kWh
航続距離 470km
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション 後 トーションビーム/コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前&後 235/50R18
車両本体価格 440万円~


(ENGINE2023年12月号)

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