2023.12.12

CARS

内燃機関の3シリーズは無くならない! 自動車ライターの渡辺敏史がBMW M340iに試乗【3シリーズ、8シリーズ、Z4、X5にイッキ乗り/その1】

3シリーズのトップモデル、M340i xDrive。

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3シリーズ・セダンに、8シリーズ・クーペ、ロードスターのZ4に、SUVのX5。これまで長らく歴史を刻んできたBMWを象徴する4台のモデルに自動車ライターの渡辺敏史があらためて試乗して感じたこととは何か。今回はその1として、3シリーズのトップモデル、M340iをリポートする。

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直列6気筒を搭載するM340i

日本で第二次大戦後の復興にも乗じて拡大を続けた数多の二輪・四輪メーカーは、1950~60年代に産業保護の名の下に淘汰されていった。それはほかの国でも同じである。イギリスはオースチンやモーリス等のブランドが合併しBMCが発足、西ドイツもまた合従連衡の波の中、アウトウニオンがダイムラーからVWに譲渡されアウディとしてリスタートするなど、同様の話は欧州、そしてアメリカでもみられた。

青と黒のデュオ・トーンとなるシートと、各部にアルミ素材の装飾が施されたインテリアはBMWインディビデュアルによるカスタマイズ・オプション。


そんな中、利ざやの少ない小型車や二輪車を主力としてきたがゆえに財政面でも苦戦していたBMWが放った起死回生の一作が61年、ノイエクラッセ=新しいクラスと銘打った1500ccの4ドア・セダンだ。モータリゼーションの益が中産階級にも及ぶ中、デザインや装備、性能のあらゆる面でマイカーへの憧れの受け皿となったこのモデルによってBMWは独立して新しい時代を切り開く礎を得た。

ノイエクラッセから派生した02シリーズの後を継いだ3シリーズ、E21型の登場から半世紀近くの時が経つ現在、最新のG20型は数えて7代目ということになる。シリーズとして一貫している要素の1つは、320/6以来、直列6気筒を搭載したグレードが用意されているということだ。それはマルチシリンダー・ユニットがプレミアムと化した現在でも変わらず、今回のM340iがそれに該当する。



パッケージングや生産面での合理性から世の趨勢がFFへと移行し始めた70年代以降も、3シリーズはエンジン縦置きのFRレイアウトに拘り続けてきた。80年代にはメルセデスが送り込んだライバルを迎え撃つにも至り、プレミアムDセグメントが構築されることになる。現在はそこに英米日のブランドもタマを置いているが、3シリーズは動的なベンチマークとして君臨し続けてきた。終始一貫しているのは、いかに走りのレベルを高めるかという姿勢だ。それをもってスポーツセダンの雄とみる向きも多いだろう。

実際、M340iはもはや自分を含めた多くの人にとってはM3いらずというほどに気持ちを昂らせてくれるモデルだ。単純に動力性能もさておき、適度に排気音が抑えられたぶんメカノイズが引き立つサウンドも、直6を回す心地よさをより低回転側の領域から味わわせてくれる。加えて回りの軽やかさはとても既製品的なものとは思えない。スポーツカーとしての純度も問われるZ4やスープラがこれと同じB58型を搭載すると知れば、BMWが今だ内燃機にかなりの軸足を置いた開発体制であるかを思い知る。



数年後に現実化されるだろうBEVによるノイエクラッセの再定義が3シリーズをどのような立ち位置に向かわせるかは定かではない。が、3シリーズは少なくとも向こう10年は、変わらず内燃機を主軸としたドライビング・プレジャーを提供し続けるのではないだろうか。個人的には「駆けぬける歓び」というスローガンを独善的ではなく、最も多くの人々にバランスよく知らしめてきたBMWの中核的存在が、そう簡単に揺らぐとはどうにも考えづらい。

◆M850iクーペの試乗に続く!

文=渡辺敏史 写真=神村聖

■M340ixドライブ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4725×1825×1440mm
ホイールベース 2850mm
トレッド(前/後) 1580/1570mm
車両重量 1730kg
エンジン形式 水冷直列6気筒DOHCターボ
排気量 2997cc
最高出力 387ps/5800rpm
最大トルク 500Nm/1800-5000rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルジョイントスプリング・ストラット+コイル
       (後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 275/40R19/235/35R19
車両本体価格 1040万円

(ENGINE2024年1月号)

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