クルマ好きが愛してやまないブランドのクルマの2台持ちに憧れるように、時計も好きなブランドのペア持ちを楽しみたい。2024年冬の時計特集は、「アイディアル・ペア~理想の2本を探せ!~」と題して、同じブランドを贅沢に2本持ちして、着け替える楽しみを提案する。編集部が信頼するエンジン時計委員会のメンバーには、組み合わせの妙を楽しむ時計の選び方を指南してもらった。人気の18ブランドから最高の組み合わせを見つけて欲しい。
ヨットレースに因んだスポーツモデル、独立時計師が手がけた芸術的な機械式、どちらもコルムのロングセラーだ。「SPORTY」×「ELEGANCE」の個性派の2本が、このブランドの奥深さを物語る。
◆SPORTY◆
アドミラル 42 オートマティック
外洋ヨットレースの世界最高峰だった「アドミラルズカップ」に由来して名付けられ、1960年の初代モデル以来、コルムを代表するスポーツ・ウォッチ。1983年からはセーリングポートのナットを模した12角形ケースや国際海洋信号旗をモチーフにしたカラフルなインデックスを採用して個性的なデザインを展開する。そうした独特のディテールを再解釈し、ダイアル、ケース、ブレスレットにエレガントなスポーティルックを施したのが『アドミラル 42 オートマティック』。防水性を100mに高めたケースは、直径42mmながら10.3mmと薄く、オン・オフを問わず快適に着けられる。自動巻き。ステンレススティール。88万円。
◆ ELEGANCE◆
ゴールデンブリッジ クラシック
ゼンマイ、歯車、調速脱進機などの部品が縦一列に並び、従来よりも少ない部品数で作られた驚異の機械式ムーブメントを考案したのは、独立時計師ヴィンセント・カラブレーゼ。このシンプル極まりないムーブメントを主役にしてアーティスティックなスケルトンウォッチに仕立てた『ゴールデンブリッジ』を1980年に発表してコルムは一躍有名になった。今なお時計愛好家の間で絶大な人気を誇り、オリジナルの形状に近いレクタンギュラーやトノーケース(写真)を用いたモデルが注目の的だ。手巻き。ローズゴールド、ケース縦51mm×横34mm。3気圧防水。770万円。
◆エンジン時計委員が指南! これが「コルム」のペア選び◆
ヨットマンのオンとオフ
この2本を見て、誰もが同じブランドとは思わないだろう。だがそれがコルムの真骨頂でもある。片や外洋ヨットレースの世界最高峰と謳われたアドミラルズカップに由来し60年代に登場したロングセラーで、80年代には日本国内でも一大ブームを呼んだ。シンボルの国際海洋信号旗のモチーフは、ラグスポスタイルになっても継承する。それとは対照的なエッジィなデザインは、独立時計師ヴィンセント・カラブレーゼを起用し、やはり80年に誕生した。1本のブリッジに並べられた輪列はまるで時を司る黄金の塔のようでもあり、荘厳な美しさは時代を超越する。それこそ航海を楽しみ、ヨットクラブでのパーティで寛ぐ男たちの時間が伝わってくるのだ。(時計ライター・柴田 充)
気分は二重人格
全然違う! 極端にキャラの異なる2つの時計がどちらもコルムを代表するアイコンですと説明されても、多くの人は戸惑うだろう。でもそれが二重人格を演出するのにぴったりのペアに違いない。ある時はイケメンのスポーツ・ウォッチ『アドミラル』を着けて身体能力抜群のアスリートのようにふるまう。そしてある時はアートピースさながらの『ゴールデンブリッジ』を着けて高貴なセレブリティを演じる。時計のキャラによって自分に別人格が出現する、そんな妄想にふけるのも楽しいではないか。そういえば、コルムにはもっと妄想をかき立てる奇想天外な時計『バブル』もあったっけ。こちらのキャラは遊びの天才。仲間に加えれば三重人格も夢ではない。(時計ジャーナリスト・菅原 茂)
デイリーとスペシャルな2モデル
シチュエーションを問わずに着けられる『アドミラル 42オートマティック』はデイリーユースの万能時計だ。薄型のケースに落ち着いたブルー文字盤を組み合わせた3針時計のため、スーツスタイルにピッタリ。コレクションの出自や防水性能もあいまって、海辺で短パン+Tシャツのようなラフなスタイルも難なくこなせてしまう。唯一の欠点はいつでも着けられるからこそ、スペシャル感が得づらいこと。この欠点を補ってくれるのが『ゴールデンブリッジ クラシック』。ヴィンセント・カラブレーゼが手がけたオリジナル・デザインに近い佇まいはあまりに繊細。着けることすら憚れる、工芸品を扱うような気遣いが、刺激的なスパイスとなること間違いなし。(「クロノス日本版」編集部員・細田雄人)
色褪せぬ時代に触れる
まさに今企画のタイトルにふさわしい、コルムが誇る2種の王道コレクションである。区分けとするならばオンとオフ、スポーティとドレッシーなどの形容がふさわしいが、この二本を見るだけで、コルムというブランドの奥深さが実にわかるセレクトでもある。輪列と香箱を縦に配置した、1980年代発表の『ゴールデンブリッジ』に関していえば、個人的に初めて手に取ったのが、コルム50周年の際に登場したトノーモデルだ。その時と同じ感動を、時代を超えて再び味わわせてくれるという喜びが、ここにある。また、ロングセラーの『アドミラル』においても、個性的な文字盤によるモダナイズも秀逸。コルムの歴史の奥深さ、その魅力がこのペアに宿る。(時計&宝飾ジャーナリスト・野上亜紀)
問い合わせ=ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080
写真=宇田川 淳 スタイリング=小林尚史(ENGINE編集部)
(ENGINE2024年1月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
いますぐ登録
会員の方はこちら