2023.12.13

CARS

850iも凄いが、8シリーズの白眉は840i はたしてその理由とは? 自動車ライターの渡辺敏史がBMW M850i xドライブ・クーペに試乗【3シリーズ、8シリーズ、Z4、X5にイッキ乗り/その2】

M8はいらない? M850iに試乗。

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3シリーズ・セダンに、8シリーズ・クーペ、ロードスターのZ4に、SUVのX5。これまで長らく歴史を刻んできたBMWを象徴する4台のモデルに自動車ライターの渡辺敏史があらためて試乗して感じたこととは何か。今回は、その1の3シリーズ篇に続いて、M850iをリポートする。

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ドイツ車らしからぬ存在感

ノイエクラッセのヒットからほどなく、BMWはラグジュアリー・セグメントへの移行という契機を得ることになる。65年に登場した2000C/CSは、当時BMWのデザインを統括していたヴィルヘルム・ホフマイスターが、交流のあったイタリアン・カロッツェリアのエッセンスを巧く纏わせる才に長けていたことも幸いしたのだろう、そのエレガントなフォルムと先進的なディテールの融合は、重厚なイメージのドイツ車らしからぬ存在感で、メルセデスとは一線を画するブランド・イメージの醸成に大きく寄与した。このモデルが後に直列6気筒を搭載するE9や、世界一美しいクーペと称されたE24型6シリーズへと繋がることで、BMWのラグジュアリー・ブランドとしての地位は決定的なものとなる。当然ながら現在の8シリーズはこの系譜上にあるわけだ。



そもそもスペシャリティ・クーペは、客観的には商売がかなり難しくなっているカテゴリーだ。メルセデスは直近までC~Sクラスにクーペを擁していたが、現在はCLEクーペに統合し、SLやAMG GTとのクロスオーバーでそのバランスを取ろうとしている。いわんや8シリーズのような大型級になると、その供給元はベントレーやマセラティ、アストン・マーティンやレクサスなど一部のブランドに限られるわけだ。





BMWについてはモータースポーツ活動もM4の側が大きく担っているため、8シリーズの存在意義は今やラグジュアリー的な要素が過半を占める。たとえばM8の設えも速さも余剰的な悦楽を映すもので、そこにデカダンス的なものを感じるならば8シリーズにとっては本望だろう。そうみれば幅方向に意図的なアクが込められたプロポーションも納得できなくもない。

乗ってしまえば8シリーズは至ってBMWらしい、元気の良さと上質さとを日替わりで感じさせるようなパフォーマンスをみせてくれる。もはや縦置き系アーキテクチャーではxドライブ=四駆のネガは無に等しいというのは他のモデルと同様だが、ましてやGTとしての適性がとても高いこのモデルなら、xドライブはマストといえるだろう。今回の取材車は850iだったが、個人的には動力性能と運動性能とのバランスの良さに加えて伝統との連続性が感じられる、B58型を積んだ840iが8シリーズの白眉だと思う。

◆では、Z4はどうなのか? この続きは【その3】で!

文=渡辺敏史 写真=神村聖


■M850ixドライブ・クーペ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4855×1900×1345mm
ホイールベース 2820mm
トレッド(前/後) 1635/1640mm
車両重量 1990kg
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCターボ
排気量 4394cc
最高出力 530ps/5500rpm
最大トルク 750Nm/1800-4600rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル
       (後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 275/30R20/245/35R20
車両本体価格 1826万円

(ENGINE2024年1月号)

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