リタイヤしたら将来は暮らすことも考えて建てた別荘　いま人気のエリア、目の前に海が広がる南房総　アメリカ人ビジネスマンの願いをかなえた「海辺の家の名手」の建築とは？

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幾何学的な建物の形状と海辺の風景のコントラストが印象的。

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絶景のキッチン

キッチンカウンター越しの眺めも素晴らしい。南房総は公共交通が充実しておらず、呼んでもタクシーを確保するのが難しい地域。移動は、クルマが基本である。本格的なワインセラーを別荘に設けるほど、日頃からワインを楽しんでいるMさん夫妻。ここでの暮らしの数少ない不満点は、自ら運転してレストランを訪れるとお酒を飲めないうえ、送迎をしてくれるお気に入りのレストランが少ないこと。別荘で自ら料理をするしか選択肢はないが、幸い近くの市場は充実している。抜群に眺めの良いキッチン・ダイニングは、日頃から料理とお酒と海を楽しむためのものである。

キッチン・カウンターからの眺め。窓は全開になるうえ、網戸、雨戸も備える。天井には木材が張られ温かな雰囲気

キッチン・カウンターからの眺め。窓は全開になるうえ、網戸、雨戸も備える。天井には木材が張られ温かな雰囲気

そんなMさんは、2台のEVカー、ポルシェ・タイカン4S（2021年製）と、BMW iX xDrive50（2022年製）を所有している。充電は、敷地の片隅に設置された太陽光パネルを利用して。それだけで暑い夏の空調とクルマ分を賄えるそうだ。「本当は海からの風だけで涼をとりたいのですが、そうも言えない暑さなので」。もっともEVカーを選んだのは、環境への配慮からではない。「試乗して気付いたのですが、この2台はポルシェ911と同じくらい速く、運転して楽しいクルマです。最大の違いは『音』でした」

オーディオ好きのMさんは、最新のフラット6よりも、タイカンやiXのような個性ある現代的な走行サウンドを気に入っている。ちなみに人生最初のクルマがBMW 1800tiだったクルマ好きのMさん。初代マツダ・ロードスターやケータハムのような、エンジンのある小さなスポーツカーで、サーキット走行を楽しむ生活にも憧れているそうだ。

1階がガレージとなったアネックス。こちらのデザインは、四角が基調。アウディQ2は奥様用。EVカーの充電はこのガレージ内で行う。2階にMさんのオフィスと運動用のジム、和室の客間がある。

南房総の別荘での暮らしが始まって2年。海での暮らしの最大の魅力は「絶えず変化するので、眺めていて飽きないこと」とMさんは話す。ワインを片手に過ごすだけでなく、変化する海を写真に収めたり（かなりの腕前）、アプリを使って目の前の海をゆく貨物船の詳細を調べるなど、海の暮らしの楽しみ方は幾つもあることを楽しそうに説明してくれた。

「今は月に3度ほど、この別荘を訪れています。将来リタイヤしたら、暮らしの中心はこちらになるかもしれません」

文＝ジョースズキ　写真＝田村浩章

構造：RC造　規模：地上2階　敷地面積：1254.11m2 建築面積：144.133m2（母屋）　延床面積：247.487m2（母屋）竣工：2021年　所在地：千葉県設計：廣部剛司建築研究所　www.hirobe.net　施工：片岡健工務店

構造：RC造　規模：地上2階　敷地面積：1254.11m2
建築面積：144.133m2（母屋）　延床面積：247.487m2（母屋）
竣工：2021年　所在地：千葉県
設計：廣部剛司建築研究所　www.hirobe.net　施工：片岡健工務店

■建築家：廣部剛司　1968年神奈川県生まれ。日本大学理工学部海洋建築工学科卒。芦原義信氏の事務所勤務後、建築を巡る世界の旅へ。旅の模様は『サイドウェイ建築への旅』として出版されている。帰国後、自身の事務所を設立。写真のヴィラ・エスカルゴと今回の別荘を含めた4軒の海辺の別荘で国際的に知られる。愛車は28年乗っている1974年型のアルファロメオ・スパイダーと、シトロエンC3（現行モデル）。近著に『世界の美しい住宅』がある。

■ジョースズキさんのYouTubeチャンネル、最高にお洒落なルームツアー「東京上手」！
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー＆マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなルームツアーは必見の価値あり。ぜひチャンネル登録を！

（ENGINE2023年11月号）

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