2023.12.21

LIFESTYLE

リタイヤしたら将来は暮らすことも考えて建てた別荘 いま人気のエリア、目の前に海が広がる南房総 アメリカ人ビジネスマンの願いをかなえた「海辺の家の名手」の建築とは?

幾何学的な建物の形状と海辺の風景のコントラストが印象的。

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回は、千葉・房総半島の大自然の中に建てられた幾何学的なデザインの別荘。三角形をパズルのように組み合わせた個性的な屋根にも注目! おなじみのデザイン・プロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

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星が見える場所での生活に憧れて


家の魅力は、建物自体に加え周囲の環境にも大きく左右される。例えば、窓を開けると目の前に海が広がる立地と聞けば、それだけで素敵に思えるだろう。森の別荘も夜景が美しい家にも惹かれるが、海には特別な魅力が感じられるのだ。千葉県の南房総のこの別荘はその好例だろう。

目の前に太平洋が広がるロケーションの、幾何学的なこの建物。アメリカ生まれのビジネスマンで、日本での暮らしが30年を超えるMさん夫妻の別荘だ。これまでニューヨークと東京という、大都市で仕事をしてきた同氏。別荘作りを思い立ったのは、「今までの人生で叶えられなかった、星が見える場所での生活」を実現させるためである。山間部の別荘地か海辺での暮しかと迷い、そこで実際に暮らす友人たちを訪れて検討し、選んだのは海の方だ。

通りより1.4mほど下がっているため、入口は2階に設けた。敷地内は数台の駐車が可能。


そして、時間をかけて探した末にみつけたのが南房総のこの場所である。海沿いの道に接した南東向きの細長い敷地で、海までの距離はおよそ80m。海岸は岩場で、敷地との間には大きな草むらが広がっている。実はこの敷地、道路に沿って普通に長方形の建物を建てることができない。上の写真の手前の芝生で覆われたエリアは建物に使えず、ここを避けて建てる必要があった。

建築はデザインが大事

建築に関心が高く、十数年前に建てた横浜の現在の家も建築家に依頼しているMさん。今回建築家を選ぶ際、とある雑誌の表紙の、廣部剛司さんが設計した海を臨む別荘に目が留まった。小誌2020年3月号でも紹介した、幾何学的な形の別荘だ。それまで3軒の海辺の別荘を手掛け、全てが雑誌の表紙になった廣部さん。Mさんが設計を依頼した理由は、海辺の家を設計した豊富な実績に加え、周囲の風景と調和しつつも際立つ、個性的な作風だった。Mさんいわく「やはりデザインは面白くないと」。



廣部さんが設計したMさんの別荘で最も特徴的なのは、三角形の屋根だ。異なるサイズの三角形を幾つも組み合わせ、この建物は構成されている。無駄なく必要なサイズのスペースが確保されるうえ、敷地の一部が使えないことを逆手にとったことで個性的な意匠になる、なかなか優れたアイディアだ。

間取りは、階段を上がった2階が玄関で、中に入ると、ピアノ・スペース、リビング、ダイニング・キッチン、マスター・ベッドルームへと続いていく。個性的な外観の大きな別荘だが、内部はそれぞれのスペースが程よい広さで、居心地が良い。廣部さんは、「一見、複雑なプランに見えますが、生活に適したサイズを導き出しました」と話す。

1階には、ゲストルームや、デスクワークができるサロンスペース。どこからでも海が見えるが、何と言っても最高に眺めが良いのが、2階のダイニングの前のテラスだ。「ここの椅子に腰掛けて、ワイン片手に海をのんびり眺めるのは、何にも代えがたい至福の時」とMさんは語る。美しい天の川が見えるのも感動的だが、この別荘では何と言っても海なのだ。



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