2024.01.11

CARS

VWゴルフRの誕生20周年記念モデルに試乗!「腕に覚えがない人は選ぶべからず」のドライブモード警告は、シャレか?本気か?

VWゴルフR 20Years

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最初のゴルフR、すなわちR32の誕生から20年、記念モデルとして最新ゴルフRに加わったのが「20 Years」だ。それに箱根で試乗する機会を得た。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

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ホットハッチの代名詞

最初のゴルフR、すなわち4代目ゴルフにR32が誕生したのは2002年。4気筒用のエンジン・ルームに3.2リッター狭角V6を押し込んだモデルは3代目ゴルフにもVR6の名前で存在したが、それはラグジュアリーな性格を与えられた高級車志向のモデルだった。



それに対して、R32はそれまでのホットハッチの代名詞だったGTIを凌ぐスポーツ・モデルと位置づけられ、いわゆる“羊の皮を被った狼”として大人の走り好きたちの熱い支持を受けることになったのだ。


それから20年、2022年に本国で発表されたのが、8代目ゴルフのRに誕生20周年記念モデルとして加わった特別仕様車の「20 Years」だ。

フロントに搭載される2リッター直4ターボは、専用チューニングにより、ベース・モデルを13ps上回る333psの最高出力を発揮(最大トルクは同じ420Nm)。7段自動MTのDSGを介して4輪を駆動する。



20年前のR32が3.2リッターの6気筒を搭載しながらも241psだったことを考えると、4気筒で333psは驚異的だ。もっとも、価格もR32の395万円から792万8000円まで高騰しているのだから、当然といえば当然か。


それはともかく、「20 Years」の外観上の特徴は黒く塗られた19ンチ・アルミホイールを持ち、リアには大型化されたスポイラーと特別にチューニングされたサウンドを奏でるチタン・エグゾースト・システムを備えることである。

さらによく見ると、前後の「R」のロゴはブルーとなり、Bピラーには「20」のエンブレムが貼られている。まったくの羊とは言えないものの、スポーツ・モデルであることをこれ見よがしに誇らない節度感を保っている点は、20年前も今も変わらないゴルフRの美点と言えそうだ。




「ドリフト」と「スペシャル」を追加


乗ってみると、その美点は乗り味にも共通していることがすぐにわかった。しっとりとしたステアリング・フィールといい、スポーツ・モデルらしく芯は硬い感じがあるものの、しなやかに動く足まわりといい、まずは乗用車としての出来映えが極めて高いことが感じられる。ドシッとした走りの安定感も抜群で、今回は走る機会がなかったが高速道路を走らせたら、矢のように突き進むに違いないと思った。

面白いのは、アダプティブ・シャシー・コントロールと連動したドライブ・モード選択の中に、コンフォート、スポーツ、レース、カスタムのほかに、専用モードとして「ドリフト」と「スペシャル」が加わっていたことだ。実は、このクルマ、スポーツまでは電子制御がもの凄く介入してきて、ステアリングに少しでも舵角が当たっているとスロットルを開けさせてくれないくらいに安定志向が強い味つけになっている。





そこで「ドリフト」を選ぼうとすると、腕に覚えがない人は選ぶべからず、という内容の警告が出るが、それを無視して選ぶと、音が一気に高まって爆音が激しくなるのは煩わしいけれど、電子制御も介入しなくなり、自由自在に気持ち良く走れるようになる。

一方、ニュルブルクリンク北コースの絵が描かれた「スペシャル」は、スロットル・レスポンスもエンジンの吹け上がり方もあまりにピーキーな印象で、私には走りにくかったけれど、サーキットを走る人にはいいのかも知れない。


というわけで、超安定から超スポーツまで併せ持つこの1台、まさに20年間の進化の集大成というべきだ。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦



(ENGINE2024年2・3月号)

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