2024.01.03

CARS

1030馬力! フェラーリ史上、もっともレーシングカーに近いロードカー SF90 XXストラダーレに自動車評論家の大谷達也が聖地フィオラノで試乗!

1030馬力のモンスター・フェラーリ、SF90 XXストラダーレ。

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何よりサーキットを楽しむための特別なフェラーリ“XX”シリーズの、初となるロード・リーガルなモデル。それがSF90 XXストラダーレだ。あいにくの小雨に見舞われたフィオラノ・サーキットより、モータージャーナリストの大谷達也が報告する。

1030馬力のモンスター・フェラーリ

フェラーリのテスト・ドライバーが操る先導車を追いかけるようにして、スロットル・ペダルを床まで踏み込む。その直前までは、チョイ濡れのコースを1000psオーバーのモンスターで走る恐怖が私の心を覆っていたが、そんなことは走り始めて早々にどこかに消え去っていた。SF90XXストラダーレの国際試乗会は、こうして始まった。



SF90XXストラダーレは、V8ツインターボ・エンジンに3モーター式ハイブリッド・システムを組み合わせたSF90ストラダーレをベースに、よりサーキット走行向きとなる改良を施した限定モデル。システム出力はSF90を30ps上回る1030psだが、1995年デビューのF50以来となる独立式リア・ウイングをフェラーリのロードカーとして久しぶりに採用するなど、エアロダイナミクスの強化に特に力点を置いていることが最大の特徴。なお、公道走行が可能な初のXXモデルとされているが、それゆえ、フェラーリがサーキットで開催しているXXプログラムには原則的に参加できないことになっている。



これほど扱いやすいとは!


SF90XXストラダーレは、極めて素直で自然な反応を示すスーパースポーツカーだった。

ストレートから1コーナーに進入し、S字セクションを走り始めたころに私が抱いていた恐怖心が消え去ったのは、タイヤが滑り出す直前の黄色信号を積極的に伝えてくれるからだった。どこに限界点があるかをあらかじめ掴んでいれば、ミスを犯してスピンしたりコースオフしたりする可能性を限りなくゼロに近づけることができる。

ステアリングの反応も十分以上に機敏なのに、操舵量とノーズが曲がり込んでいく量が常に一定でリニアリティが高いため、ドライバーに恐怖心を与えることがなく、また次の動作が読みやすい。しかも、フロント・タイヤの接地状態が正確に把握できるほどインフォメーションは豊富。フェラーリで、これほど安心感の強いハンドリングを備えたモデルは、私にとって初めてといってもいいくらいだ。

シートは座面と背面が一体型のバケット・タイプのように見えるが、伸縮性のある表皮と、内部に組み込まれたメカニズムにより、角度調整が可能だ。それでいてSF90ストラダーレに比べ1.3kg軽量だという。


SF90XXストラダーレは、前輪の左右2つのモーターで駆動力制御を用いたトルクベクタリング機能が搭載されているが、これによって強引にノーズをイン側に巻き込もうとする気配も皆無。唯一、私がその存在に気づいたのはS字の中速コーナーで軽いアンダーステアに見舞われたときのことで、ここでもトルクベクタリングはじんわりと作動して本来あるべき走行ラインに押し戻してくれたのみ。ドライバーの意思を最優先する設定である。

もう1つのモーターが加勢するパワートレインも、スロットル開度と出力の関係が常に一定に保たれるために扱い易く、またレスポンスにも優れているので必要なパワーを即座に手に入れることができる。率直にいうと「本当に1000ps以上もあるの?」と感じたほどだが、これは扱い易さの裏返しだろう。いっぽうパワートレインを制御するシステムが「バッテリーのパワーをここで一気に放出すればラップタイムを短縮できる」と判断すると、エクストラ・ブーストという機能が発動され、首が後ろにのけぞるほどの猛ダッシュを示すが、そのタイミングは適切で、これが原因でコースアウトしそうになる状況にも陥らなかった。



最後に特筆しておきたいのが、SF90XXストラダーレ最大の売り物であるエアロダイナミクス。おかげで超高速域からのブレーキングでも不安を覚えなかったほか、140km/hオーバーで通過する裏ストレートのキンクでもクルマはどっしりと安定しきっていて挙動を乱さなかった。これも、私にとっては初めての経験だった。

SF90XXストラダーレはフェラーリ史上、もっともレーシングカーに近いロードカーだという。そう聞くと、扱いにくい難物を想像されるだろうが、実際にはジェントルマン・ドライバーが限界走行を満喫できるよう、コントロール性を最優先して開発されたモデルであることがわかった。SF90XXストラダーレほどサーキットで扱いやすいフェラーリは、これまでになかったといっていいくらいだ。

文=大谷達也 写真=フェラーリ


■フェラーリSF90 XXストラダーレ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4850×2000×1225mm
ホイールベース 2650mm
トレッド(前/後) 1683/1674mm
車両乾燥重量 1560kg
パワーユニット形式 水冷V型8気筒DOHC+前2後1モーター
ボア×ストローク 88×82mm
排気量 3990cc
最高出力 1030ps/7900rpm
最大トルク 804Nm/6250rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前後) カーボンセラミック通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 255/35ZRF20/315/30ZRF20
車両本体価格(税込) 9800万円~

(ENGINE2024年2・3月号)

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