《ブガッティ タイプ52(ベイビー)》1920年代後半―1930年代前半 トヨタ博物館
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                    今から100年前、工業の発展に伴い、機械の幾何学的な造形美を取り入れた芸術やデザインが流行した。そんなマシン・エイジの作品に注目した展覧会が箱根のポーラ美術館で5月19日まで開催されている。マシン・エイジのはじまりチャールズ・チャップリン演じる主人公が、工場の歯車に巻き込まれるシーンで有名な映画『モダン・タイムス』。1936年に作られたこの作品は、第一次世界大戦後の復興に伴う工業化を風刺した傑作として知られている。社会のダイナミックな変化はもちろんアメリカだけでなくヨーロッパにも押し寄せた。1920年代から30年代にかけての、機械時代(マシン・エイジ)のはじまりである。ポーラ美術館で始まった『モダン・タイムス・イン・パリ 1925―機械時代のアートとデザイン』は、この時代のアートとデザインの変貌ぶりに着目した意欲的な展覧会である。その軸となるのが1925年に開催されたパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)だ。
クルマのデザインも変化この時代に流行したデザイン様式、アール・デコは、曲線や装飾を多用したそれまでのアール・ヌーヴォーとは異なり、機能や実用性を感じさせる幾何学的な造形を特徴とする。芸術家やデザイナーも機械の進化こそが新たなユートピアを作り出すと信じ、フェルナン・レジェのような、機械をモチーフにした画家も現れた。また、ガラス工芸作家のルネ・ラリックは、幾何学的な建築空間にあわせた室内装飾や香水瓶などを発表。グラフィック・デザイナーのA.M.カッサンドルは、単純化した造形と大胆なグラデーションを活かした豪華客船や鉄道のポスターを手掛けている。そういった変化はクルマのデザインにも表れた。人々はクルマに利便性以上の価値を求めるようになり、欧米各国の自動車メーカーが、工芸品としての造形美をあわせもった高級車、高性能車を競うようにして開発し始めたのだ。展覧会の内容は、さらに機械時代への反発を唱えた芸術家たちの作品、日本におけるアール・デコの受容と発展など、多岐にわたるが、本展で興味深いのはロボットやデジタルをテーマにした現代作家の作品も取り上げていることだ。新たな機械時代に生きる我々は、まさに100年前の人々が感じたような期待と不安を感じているのではないか。そんな現代の“モダン・タイムス”を考えるきっかけにもなる展覧会である。
■「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」は2024年5月19日(日)までポーラ美術館(神奈川県箱根町)で開催中
文=永野正雄(ENGINE編集部)(ENGINE2024年2・3月号)
                    
                    
                    
                                                                
                    
                 
             
            
            
            
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