2024.05.30

CARS

アルプスでミトを走らせ、アルファ・ロメオに思いを馳せる アルファにとって一番大事なものとはなんだろう?【『エンジン』蔵出しシリーズ/アルファ・ロメオ篇】

ミトを走らせ、アルファ・ロメオについて考えた

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回の「アルファ・ロメオ篇」は、2008年12月号に掲載したミトの海外試乗記をお届けする。イタリアといえばアルファ・ロメオ。そう言って、本誌サイトーはまたもアルプスへ向かったのだった(笑)。


休日のドライブに

月曜の朝9時。ミトを受け取った。

2日間、このミトは僕のものだ。明日は夕方5時までに返さなければならないから、無理ができるのは今日だけ。これからアルプスを目指す。

ガードレールもない断崖絶壁を縫う道を、ミトでなら自信をもって駆け抜けられる。


9月29日。峻険を越える峠道は、まだ、閉鎖されてはいないはずだ。カメラマンの望月さんには長い1日になることを了解してもらってある。さっさと街を抜けて、北を目指そう。

けっして小さくない荷室に撮影機材を積み込んで、僕らはミトを走らせ始めた。ホテルは街はずれに近いところだから、南下すればすぐにタンジェンツィアーレ(環状高速)に乗れる。内回り線に合流し、そのままどんどん行けば、アルプスの麓町アオスタはすぐだ。

ここ数年で速度違反の取り締まりがひどく厳しくなったせいで、イタリアといえどもアルファやBMWでカッ飛んでいた地元の韋駄天ドライバーもすっかりおとなしくなった。追い越し車線を急ぐクルマも制限速度の130km/hをだいたい守っているし、抜かれざまに「アイツ速いな」と思うことがあっても、せいぜい140+ぐらいで、160を軽くオーバーするスピードで抜きさっていくような輩には遭遇しなくなった。

狭く険しい山岳路でも、ラインぎりぎりを狙い続けて走れる


そういう速度で走らせながら、ご自慢の新兵器、アルファDNAのスイッチをノーマルからダイナミックに切り替えようとしたら、「選択できません」という英語表記がメーターの中に出た。それならオールウェザーは? と思って試したら、これも同じ答えが返ってきた。高速道路に乗る前は何のためらいもなく切り替わったから、速度が上がると、自動制御モード・オンリーになるということなのだろう。

高速道路を巡航するような状況下にあると判断されると、あとはアルファの開発陣の詰めたプログラムに従うことになるわけだ。

それで不満があるのかといったら、答はノーだ。サスペンションのスプリング・レートは高めのそれだから、バネの反発は強い。けれどその動きを可変ダンパーが適切に締めてくれるから、うねりに遭遇したりしてもせわしい動きには直結しないし、装着タイヤがBSのRE050Aということもあって、速めの動きは出るのだけれど、そこにしっとりとした感触が加わるから、不快感はない。快適至極のクルーザーとはいえないにしても、上手いこと寸止めの利いた脚とは言えると思う。

それにしても、ゆっくりと観察できるのが嬉しい。バロッコ・テストコースの周辺一般道で短時間しかステアリングホイールを握れなかった慌ただしい国際試乗会で溜まった鬱憤も、これで晴れようというものだ。

脚だけでなく、スロットル開度特性やステアリングの操舵・保舵力についても、お任せプログラムで問題ない。とくに気になることはない。関連統合制御システムをアルファとしては初めて取り入れたクルマなのに、上手いこといったようだ。

そうこうしているうちにアオスタ・エスト(東)出口が迫ってきた。ここで高速を降りて、サン・ベルナール・トンネルを目指す。峠を越えずに、有料トンネルを使って国境を越え、スイスへ入る。風光明媚な山間を抜け、やがて視界が一気に開けて、裾野を見下ろすマルティニィの街へ入る。そこで踵を返して斜面を駆け上がり、国境を越え、今度はフランスへ入る。

アルプスの北側へ抜け、澄んだ空気のなかを駆け抜ける。


しばらくするとアルプスに抱かれたシャモニーの街へ入る。岩肌に雪を残したモン・ブランが見えてくる。近隣の峰の頂を目指して遥か天空へと上っていくロープウェイから眺める下界を想像して背中が寒くなる。

ミトは、そう、気心の知れた友人と観光ドライブをするのに使っても、煩わしさを何一つ感じさせることなく、快適に乗員を運んでくれるクルマだ。多くのひとは現実に、休日にでもなれば、クルマをそうやって使う。通勤に使い、行楽に使う。そうやって使って後悔させないクルマだ。

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