乗り逃げしたくなる、マセラティ・クワトロポルテ・スポーツGT S
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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年6月号に掲載されたマセラティ・クワトロポルテ・スポーツGT Sの試乗記をお届けする。オートマティック・トランスミッションとそれに合わせて仕立てられた穏やかな脚で、ひときわ魅力的なフルサイズ・ラグジュアリー・サルーンとなったクワトロポルテ。ところが、マセラティはその魅力をさらに深く引き出すことに成功してしまった。シリーズに2008年春に加わったスポーツGT Sは、ベスト・クワトロポルテである。
よく調律されたエグゾースト・ノート昨年の6月に日本へやってきたクワトロポルテ・オートマティックは、そのまま乗り逃げしてしまいたくなるようなクルマだった。
ドライ・サンプ式からウェット・サンプ式に変更されたV8エンジンは、別体タンクへオイルを吸い戻すためのスカベンジ・ポンプを排除できたことで、機械ノイズが減り、燃焼音とよく調律されたエグゾースト・ノートを、まるでバックグラウンド・ミュージックのように楽しむことができるようになった。さらに、それまでクワトロポルテでは唯一の選択肢だったロボタイズドMTベースのセミATからZF製の6段ATに置き換えられた変速機は、これ以上ない滑らかな変速マナーを実現して、乗りやすさをほとんどフールプルーフといいたいほどにまで高めていた。一所懸命運転しなくてはいけない大げさ感がすっきりとそぎ落とされたクルマになっていたのである。トルクコンバーター付きATのありがたさをこの時ほど強く感じたことはない。
それでいて、ハンドリング性能はセミATのデュオセレクトと性格こそ違えど、ほかではありえない種類の麗しいものだった。まるで巨大なミズスマシのようにアスファルトの上を泳ぐクルマではもはやなくなっていたが、反対にゆったりと深いロールを許し、しなやかに路面を舐めていくオートマティックは、僕にとってはむしろ圧倒的に好きなタイプのそれだった。フルサイズ・サルーンの理想が突然目の前に現れて、どうやっても買えない現実にため息をついたのを覚えている。
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