2024.02.09

CARS

135iクーペ対M3クーペの対決を、国沢光宏ほか11人ものモータージャーナリストが判定! M3のライバルは、なんと身内の135iクーペだった!?【『エンジン』蔵出しシリーズ/BMW篇】

M3のライバルは、なんと身内の135iクーペだった!?

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気を抜くと加速で負ける

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そんな印象は、仙台ハイランドレースウェイのハイスピード領域でも変わらない。というのも、このエンジンはM3が3900rpmで発生する40.8 kgmという最大トルクを1300rpmから5000rpmまで出し続ける。しかも直噴の緻密な燃料噴射制御によって、ターボ・エンジンでありながら10:2:1という高い圧縮比を実現しているためレスポンスが素晴らしい。だから速い! しかも扱いやすい。正直な話、サーキットを走るまでターボ・エンジンであることを忘れていたくらいだ。

贅沢な内装も最新M3の特徴。ウッド・トリムは9.1万円。テスト車は6MT。

今回は仙台ハイランドレースウェイをサーキットとしてではなく、速度無制限のフリーウェイとして走らせたが、ハンドリングの仕上がりも上々。135iクーペにはブリヂストンのポテンザRE050Aが装着されていた。これがランフラット・タイヤだったのだが、特有の乗り心地の堅さは感じられず、超高速の直進安定性も素晴らしいレベル。200km/hオーバーのコーナリング中であっても安心してブレーキを踏むことが出来る。

それに対してM3は、気を抜くと加速で135iに負ける。が、4000rpmも回っていれば負けることはないし、シャープさを較べれば2ランク上。行儀が良すぎると評判のV8エンジンは、7000rpm手前あたりでかすかな振動が感じられるが、そこからレッドゾーンが始まる8500rpmへと再び完璧なバランスで一気に吹けきる! その加速もサウンドも官能的としか言いようがない。

86年登場の初代から数えて4代目襲名のBMWレーシング・スピリットの象徴的モデル。新開発の4リッターV8は8300rpmで420psを発揮する高回転型。最大トルク40.8kgm/3900rpm。車重1630kg。アルミ製V8は先代M3の3.2リッター直6より15kg軽い。前後重量配分51:49。タイヤはミシュランPS。サイズは前245/40、後265/40の共にZR18。名人の手にかかると、パワーで自由自在。先代と異なり、サイド・ブレーキも効く。


ただ、E46型M3ほどではないものの、BMWお得意の演出、つまり電子制御スロットルのチューニングによってパワー感を出そうとしていることが、タイヤを限界まで使うサーキット走行においては、ほんの少し扱いにくさとなっている気がした。もうひとつ言わせてもらえば、オプション装備のEDC(エレクトロニック・ダンパー・コントロール)はないほうがステアリングの切り始めの反応がリニアで自然だ。これは今回の持ち込んだテスト車のなかにあったEDCなしのM3セダンと比較しての印象で、EDCにはさらに煮詰める余地がある。

135iとM3。135iのパフォーマンスは想像以上に素晴らしいものだったが、M3の進化はそれ以上。135iにこそBMWお得意の音等の演出があっても良かったと思うが、いや、135iはもっと大人のクルマと解釈すべきなのだろう。

M3は全長×全幅×全高=4620×1805×1425mm。ホイールベース2760mm。0-100km/h加速4.8秒。135iはそれぞれ4370×1750×1410mmと2660mm。0-100km/h加速5.3秒。
大井貴之の判定
135iとM3は比較の対象ではない。135iはそのスタイルからは想像できないほど速いが、M3と共に「純粋結晶2台」とまとめられる代物でもない。純粋結晶は間違いなくM3!


今回一緒に参加した他のテスターの判定

石井昌道 M3クーペ 
速さ的には135iも文句はないが、動きの質の高さは断然M3。135iは高速移動時に落ち着きのない上下動をみせ、路面の捉え方もしなやかさが今一つ。ランフラットは難しい?

国沢光宏 M3クーペ
「純粋に楽しめる」という点からすれば、やっぱりヤンチャなM3クーペを御指名したい。今やスポーツ・モデルって「安ければ良い」という時代じゃありません。

佐野弘宗 135iクーペ
ライバルとの性能競争、快適性競争にさらされてきたM3クーペは、今では良くも悪くも重厚長大。「小さく軽く速く俊敏」という往年のBMW精神は今や135iのほうに明瞭。

清水草一 135iクーペ
V8M3には、真っ白な灰になるほどの燃焼感が感じられぬ。その点135iは、オタッキーに燃え尽きることができる。コンパクトなボディと、M3よりお求めやすい価格も〇

谷口信輝 135iクーペ
正直、どっちもすごく楽しい。好き放題振り回せます。ただし、価格差約500万円。スピリットとしては135iクーペを推したい。500万円あればブーストをイジれる。

萩原秀輝 M3クーペ
ドライバーの能力に依存する度合いが強い、つまり腕の見せ所があるM3がイチオシ。エンジンの本領を引き出すには高回転域を保ち、すべての操作を最適化する必要アリなのだ。

森 慶太 135iクーペ
M3はBMWの良心。涙。でもE36M3初期型を超える衝撃なし。135iはウルトラ上等なAE86ターボつき。驚愕。サラブレッドにイマイチ燃えない裕福な走り屋諸君、これだよ。

山田弘樹 135iクーペ
乗れば確かに素晴らしいM3だが、いま登場するならば空力面でも優れた最高のFRであって欲しかった。楽しさと速さもバランスしきれてない。ピュアな楽しさは135iクーペの勝ち。

吉田匠 135iクーペ
当然、ドライビングの質としてはM3クーペの方が上ですね。しかし、コンパクトでパワフルな135iクーペを駆り立てる悦びも捨て難いので、僕はこの際そっちをとりましょう。

渡辺敏史 135iクーペ
超Dセグメント級のパフォーマンスをここまで洗練させたM3は驚愕に値する。でも、絶妙な車格、車重とそれが織りなすキレが失われたのも事実。逆にそれらを持ち合わせるのが135i。

文=大井貴之 写真=柏田芳敬

(ENGINE2008年8月号)

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