2024.02.03

CARS

SL63AMGは異次元に素晴らしい! 【『エンジン』蔵出しシリーズ/メルセデス・ベンツ篇】

中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は2008年8月号のSL&SLKの試乗会リポートをお送りする。フェイスリフトを受けて再デビューしたSLに、エンジンに改良を受けたSLKとともに試乗した。


生活にゆとりある方々

SLとSLK、メルセデス・ロードスターズの新型の試乗会が福島県の裏磐梯で開かれた。用意されたテスト車は、SLが63AMGと350、SLKが350と200コンプレッサーのそれぞれ2台である。

SLK350のAMG仕様。一方、04年発表のSLKクラスは国内発売以来5500台を販売。外観の変更は少ないが、操舵角に応じてステアリング・ギア比を機械的に変化させる“ダイレクト・ステアリング”を採用したのが新基軸。SLK200コンプレッサーの1.8リッター直4スーパーチャージャーは20psと1kgmプラスで、燃費は7%向上。3.5リッターV6はSL同様305psにアップ。4110×1810×1300mm。ホイールベース2430mm


まず、メルセデスの至高のロードスター、SLから。目玉商品は、AMG6.3エンジンを搭載したSL63AMGである。なにしろ試乗会の時点で188台抱えている受注のうち83台がこの63AMGだという。1910万円もするのに。至高のロードスター内においても所得格差がおきている? ちなみにSLの顧客プロファイルは40~50代の男性が約90%、会社経営者、あるいは医者、弁護士などの専門職で、SL、あるいはほかのメルセデスからの買い替えが約半数とブランド・ロイヤリティが高い。年収3000万円以上で、生活にゆとりのある方々だそう。そういうものでしょう。

で、63AMG。最高出力525ps/6800rpm、最大トルク64.3kgm/5200rpmを発生する6208ccのV8搭載と同時に、AMGスピードMCTと名づけられた新型7段ギアボックスが新登場。7Gトロニックのトルクコンバーターに代えて、電子制御の湿式多板クラッチを採用したこれは、ダイレクトかつ俊敏、それでいてトルコンAT並みのスムーズな変速を実現。音のチューニングにより、ブリッピング機構は7Gトロニックよりスポーティなシフトダウンが可能。走行モードは、C(コンフォート)、S(スポーツ)、S+(スポーツ・プラス)、M(マニュアル)の4つあり、MはCの半分の速度でギアチェンジを完了する。RS(レース・スタート)と名づけられたロンチ・コントロールも装備。

3本スポークになったSLクラスのステアリング・ホイール。ヘッドレストから温風が吹き出る“エアスカーフ”を新採用。


もっと行ける

このまま63AMGのインプレに突入すると、V8は野生むき出しではなくて、エレガント方面に調教された。知性的になった、と思える。たとえばステアリングを切ってアクセルを踏み込むと、リア・タイヤがキュキュキュッと悲鳴をあげるけれど、C63AMGみたいにド派手ではない。リア荷重が重いせいもあるだろう。8000rpmまで軽やかに回るが、なによりサウンドが上品になった。もちろんメチャクチャ速い。山道ではコーナーがすぐ来てしまう。ブレーキはシューッと効く。車重が2トンあるクルマとは思えない。

350を除くSLにはすべてABC(アクティブ・ボディ・コントロール)なる電子制御サスペンションがついていて、AMGも例外ではない。01年に現行型SLが登場したとき、ABCは驚愕モノのメカボーグ感覚あふれるシステムだったが、SL63AMGの場合、じつにごくごく自然にロールが抑えられている。だから速さが感じられないともいえる。もっと行ける、もっと行かなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ、と思ってしまう。乗り心地は素晴らしい。走る路面にはすべてフェルトのカーペットが敷いてある。あとから同じ路面をSLK350で走ったら驚いた。路面は凸凹凸凹だったのだ。SLK350はステアリングも重いし、ブレーキもSLの後だと効かないみたいに思えた。SL63AMGは別次元であった。

ワンマン・ワンエンジンのAMG製V8。美女(SL)と野獣(AMG)の結婚で、野獣がちょっぴり紳士的に。


AMGスピードシフトMCTもスゴイ。変速時間は一瞬目の前から目標物がいなくなったときみたいな感覚で速い。デュアル・クラッチと同じぐらい。それでいて低速でギクシャクすることがない。SLK350の7Gトロニックは、これに較べると変速しないのか、と思ったぐらい差がある。

SL350にも乗りました。最高出力が44psばかり上がっても、相手が525psでは話にならん。と書きつつ、実際に自分で買うのならSL350で十分、と思ったりもするSL63AMGは異次元に素晴らしい。でも別にそこまでよくなくてもいいや、とも思える。SL350は1190万円だ。う~ん。やっぱり私はいいです、SLK200コンプレッサーで。563万円。これだって気恥ずかしいくらいハレのクルマだ。

文=今尾直樹(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

(ENGINE2008年8月号)

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