2024.09.15

CARS

997型911、PDKと6MT、どっちがいい? レーシングドライバーの大井貴之氏が選んだのは?【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

997型911に乗ったレーシング・ドライバーの大井貴之さんが選んだのは、PDKか6MTか?

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PDKの問題点

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だが、PDKにも問題がないわけではない。そのひとつはシフト操作のロジックで、ステアリング上のスイッチでもセレクター・レバーでも、前に押すとアップ、引くとダウンの設定だ。これではGに逆らう方向に操作することになり、なんとも不自然。ポルシェらしくない。

もうひとつは、シフト・スケジュールの問題だ。現状のPDKはDレインジであろうがMレインジであろうがアクセルを床まで踏むとキック・ダウンしてしまう。また、回転が吹けきった時はコンピューターが走行状況を勝手に判断してシフト・アップしたりしなかったり。これでは次の動きをドライバーが予測できない。スポーツ・プラス・モードの時くらいは完全マニュアルになるプログラムが欲しいところだ。欲を言えばこれに短時間限定で作動する予約シフト機能が加われば完璧なのだが。

ただ、ポルシェによれば今回のPDKはMTの進化版ではなく、ティプトロニックSに代わるメカニズムだという。そういう前提ならPDKはほぼ完璧な出来映えといえる。

しばらくPDKを堪能した後、6MTに乗り換えるとなんだかホッとした気分になった。古い人間だからだといわれてしまいそうだが、クラッチは少しも重くないし、シフト・フィールも文句なしで、こんな楽しい作業を機械に奪われてしまって良いのか、とも考える。なかなか上手くいかないシフト・ワークを練習し、苦労するからこそ上手くいった時に最高に嬉しいわけで、そこにこそスポーツ・ドライビングの醍醐味がある。PDKはスピードや確実さと引き替えに、スポーツ・ドライビングの楽しみの範囲を減らしてしまっているのではないか。走りを楽しむアイテムとしては、いまだ6MTが勝る、というのが目下のオレの結論だ。

文=大井貴之 写真=佐藤正勝

(ENGINE2009年3月号)

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