2024.02.28

CARS

いま最も注目されているコンパクトカー、LBXに試乗! レクサスが放った小さな高級車は、乗ってどうだったのか?

レクサスLBX(AWD)

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“プッシング・バウンダリーズ(境界を押し拡げる)”を標語に掲げるレクサスが、言葉通りの、ヒエラルキーを超えた小さな高級車をつくった。レクサス・ブレークスルー・クロスオーバー、略してLBXに横浜で試乗した。


ベースはヤリス・クロス

ファッション・ブランドの高級スニーカーのような、上質だけれどリラックスして乗れる、そんなクルマをつくりたかったのだという。ある意味、それは日本の自動車メーカーにとって、もっとも難しい課題なのかも知れない。なぜなら、そこで求められるのは、単に工業製品としてのクルマづくりの技術の高さだけでなく、それ以上に、スタイリッシュなデザインや軽いフィット感、そしてなにより、ラグジュアリーとはなにかを知る人に「ああ、こういうのいいよね」と感じさせる数値化できないセンスの良さだからだ。そういうハードルを設定して開発された日本車は、これまでになかったと思う。



今回、まずは撮影しながらLBXをじっくりと眺めて、レクサス開発陣は、よくぞここまで頭を切り換えて、まったく違う発想のデザインを作り込んだものだ、と感心させられた。というのも、このクルマのベースにあるのが、トヨタのヤリス・クロスであると私たちは知っているからだ。しかし、これを見てヤリス・クロスを思い浮かべる人は誰もいないだろう。スピンドル・グリルを発展させ、破壊した新しい台形型のグリルはどっしりとした安定感と力強さを持ち、左右が繋がったデザインを持つヘッドライトと合わさって、上級車に引けをとらない存在感を放っている。そして、張り出したボディの四隅でふんばるタイヤや、削ぎ落とされたサイドやリアのシェイプが、この小さな高級車のダイナミックな走りの良さを予感させる。

高級スニーカーに通じる上質感とリラックスを追求したのは外観や走りだけではない。ドライバーが直接触れるインテリアこそが、とりわけ大切な要素のひとつであったことを感じさせる水平基調ですっきりとまとめられたインパネ。


ひと言で言えば、見ているだけで、なんだかちょっと乗ってみたくなるよね、という気分を起こさせるクルマだ。そういう日本車は、実はこれまでそんなにはなかった。

LBXには前輪駆動と4WDの2種類のパワートレインがあり、いずれもフロントに91ps/120Nmのパワー&トルクを発生する1.5リットル直列3気筒エンジンを横置きし、それに94ps/185Nmの電気モーターを組み合わせている。4WDではさらに、リアにも6ps/52Nmの電気モーターを搭載し、主に発進時に加勢するという仕組みだ。

もうひとつ、両車の違いは足まわりで、フロントがマクファーソン式ストラットなのは同じだが、リアが前輪駆動はトーションビーム、4WDはダブルウィッシュボーンになっている。

オーダーメイドシステムにより、シート表皮やステッチ、トリム、シートベルトなどを自分好みに仕立てることができる。


すっきりと奥深い走り


それでは、その走りはどうだったのか。結論から言ってしまうと、私は4WDモデルの走りに、とても感心させられた。走り始めて10メートルも行かないうちに、ああ、これはとてもいいクルマだ、と言葉が口を付いて出て、助手席のカメラマンが思わずこちらの顔を見たくらいに、走り出しの感じが気持ち良かった。

最近、レクサスでは「すっきりと奥深い走り」を理想として掲げているけれど、もちろん、これは何よりもLSを代表とする上級サルーンに求められるものだろう。けれども、私は今回、LBXの走りに、その資質を強く感じたのだ。なんの淀みもなくスーッと前に出て、それでいながら、浮ついたところは微塵もなく、ドッシリとした安定感をもって前に進んでいく。ボディ剛性が運転していてハッキリわかるくらいに高い、と思った。一方で、最近のレクサスは「体幹を鍛える」ことの重要性を繰り返し言っている。恐らくLBXもかなり鍛えてきたに違いない。



しかし、それでは重厚感や安定感ばかりがLBXの乗り味の特徴かと言えば、そんなことはない。コーナーをスーッと曲がるときの感覚や、高速道路に乗って、アクセレレーターを踏み込んでいった時の気持ちのいい加速感は、まさにコンパクトカーならではの軽快さにあふれている。

なるほど、高級スニーカーみたいな乗り味、というのは、こんな感じを言うのかな、と考えながら、試乗の舞台となった横浜の街中や高速道路を走り回った。意外なことに、私は前輪駆動より4WDの方が軽快感が強くて楽しいと感じたのだけれど、いずれにせよ、これだけ骨格がしっかりしていることを考えると、もっとハイパワーで飛び切り軽快なものにも乗ってみたくなる。

と思ったら、なんとGRヤリスのユニットを移植したモデルを出す計画があるという。それに乗りたい!

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬



■レクサスLBX(AWD)
駆動方式 エンジン・フロント横置き+電気モーター4WD
全長×全幅×全高 4190×1825×1545mm
ホイールベース 2580mm
車両重量 1390kg
エンジン形式 直列3気筒DOHC
排気量 1490cc
最高出力 91ps/5500rpm
最大トルク 120Nm/3800-4800rpm
電気モーター (前)交流同期電動機、(後)交流誘導電動機
トランスミッション 電気式無段変速機
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ (前)通気冷却式ディスク、(後)ディスク
タイヤ(前後) 225/55R18
車両本体価格(税込み) 486万円

(ENGINE2024年4月号)

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