2024.02.26

CARS

熟成の極み! 大型改変を受けたマツダ・ロードスターに試乗 見た目以上に進化した乗り味を実感!!

マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション

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デビューから9年目になる4代目ND型ロードスターが、これまでで一番の大型改変を受けて新型に生まれ変わった。とはいえ、見た目はほとんど変わらず。では、中身は……。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

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最大の変更点は見えない部分

2年前には顔の手直し一切なしで、走りに関する中身にだけ手を入れる常識破りの“フェイスリフト”をやってのけたマツダ・ロードスター。さすがに今回の大型改変では顔にも手を入れてきたが、とはいえ、それも指摘されなければ分からないくらいの僅かな変更にとどめている。

写真の試乗車はSレザーパッケージVセレクション。外装色はソウルレッドクリスタルメタリック、シートはナッパレザーのスポーツタン、幌はベージュだ。この試乗車にはオプションのサウンド・エンハンサーも付いていた。


ひとつは前後のライトまわりで、フロントはデイタイム・ランニング・ライトのデザインが変更されて、目元がくっきりした印象になった。リアのライトも立体的な造形になり、シャープさを格段に増している。そのほか、前後バンパー下部のデザインも変更され、これまたシャープさを増した印象だ。

インテリアでは、8.8インチの大型ディスプレイが採用されたのが目立つ。その操作スイッチ類が画面下からセンターコンソールに移動して、使いやすさが格段に増した。また、よく見ると計器類の数字と針も、これまでより細めの洗練されたものに変更されているではないか。

インテリアで目立つのは新しい8.8インチのディスプレイだが、よく観察するとメーターの文字や針など、細かいブラッシュアップが加えられている。


しかし、今回の大型改変の大型たる理由は、そうした見える部分ではもちろんなく、見えない部分にこそあるのだ、ということが、プレゼンテーションを聞いてよくわかった。

というのも、数年後に迫った既存車へのサイバーセキュリティ法施行に向けて、避けて通ることのできない電子プラットフォームの全面刷新をここで断行したのが、今回の大型改変のキモだというのだ。むろん、ロードスターのためだけにそんなコストはかけられないので、CX-60のそれを移植するカタチで進められたのだとか。その一方で、たとえば従来のものではバルブなどが使えなくなるヘッドランプを、ついでにデザインまで手直し。ナビもディスプレインのデザインも含めて専用のものに変更。フロントにはオフセットしても機能する新しいミリ波レーダーをナンバー・プレートの脇に押し込んで……という具合に、これを機に、一気に電子装備を最新型にアップデートしたというわけなのだ。

それに加えての大きな変更は、走りにダイレクトに関係する部分で、(1)加速時と減速時で異なる最適な差動制限力を発生するアシンメトリックLSDの採用、(2)ステアリング・システムの改良による電動パワーステアリングの進化、(3)国内ハイオク・ガソリン専用車にすることでのエンジン・パフォーマンスの進化、の3点がとりわけ重要なものとなる。

シートはナッパレザーのスポーツタン。



解像度が上がった走り

実際に走らせてみると、なるほど見た目がすべてにおいて少しシャープにくっきりとした印象になったのと同じように、走りもより解像度が上がり、全体の質感がアップした乗り味になっているということが、すぐに感じ取れた。なかでも電動パワステの進化はかなり効いているようで、ステアリング・フィールが格段に良くなって、微妙な操作に対しても正確に応答してくれるので、運転していてとても気持ちいいのだ。

伊豆の山道を速度を上げて走り始めると、コーナーへの進入から脱出までの一連の動きが実にスムーズで、旧型よりもずっと動きが洗練された印象になっていることに気づいた。この試乗会では途中のパーキングに旧型も用意されていたのだが、同じワインディング・ロードを乗り比べてみると、その進化ぶりは想像以上であることがわかった。後からエンジニア氏に言われて、なるほど、と頷いたのは、実はこういう山道でこそ、進化した電動パワステ以上に、新しいアシンメトリックLSDが効果を発揮して、進入から脱出までの動きをうまく手助けして、スムーズなものにしてくれているというのだ。

幌はベージュだ。


そして、もうひとつ、圧倒的に良くなったと思ったのは、エンジンのスムーズな吹け上がり感だ。出力向上はわずか4psに過ぎないが、そうは思えないくらいに伸びやかに回転数を上げていくし、微妙なアクセレレーターの操作へのツキもずいぶん良くなっているように感じられた。

さらに、改良されたサウンド・エンハンサーがもたらす音の良さも、走りの気持ち良さに大きく貢献していたと思う。スポーツカーの魅力の中で、音は欠かせない要素であることを改めて思い出させてくれた。電子プラットフォーム刷新にともない少し重量が増えたが、それでも私は新型の乗り味の進化を良しとしたい。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 3915×1735×1235mm
ホイールベース 2310mm
車両重量(車検証) 1030kg(前軸540kg:後軸490kg)
エンジン形式 直噴直列4気筒DOHC
排気量 1496cc
ボア×ストローク 74.5×85.8mm
最高出力 136ps/7000rpm
最大トルク 152Nm/4500rpm
トランスミッション 6段MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ (前)通気冷却式ディスク/(後)ディスク
タイヤ(前後) 195/50R16
車両本体価格(税込み) 361万9000円

(ENGINE2024年4月号)

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