2024.03.10

CARS

8段ATも加わった進化型GRヤリス・プロトタイプにクローズド・コースで試乗!!「間違いなく私はATで走った方が数段速いし楽しい!」

8段ATも加わった進化型GRヤリス・プロトタイプ

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2020年1月のデビューから4年、GRヤリスの“進化型”が東京オートサロンで発表された。8段ATも追加されたそのプロトタイプに、袖ヶ浦のサーキットとダートで試乗。エンジン編集長のムラカミがリポートする。


競技に鍛えられたクルマ

WRC参戦車両のベース車としてデビューして以来、市販するだけでなく、実際にスーパー耐久や全日本ラリー選手権にワークス参戦して、文字通り「鍛えて、壊して、直して」を繰り返してきたGRヤリス。その積み重ねが今回の“進化型”に結実したと、開発陣は胸を張る。



なるほど、その片鱗は外観の至る所に見て取ることができる。上のサーキットを走る車両が新型、下のダートを走る車両は中身は新型ながら外観は旧型なのだが、たとえばロアーグリルに注目して欲しい。サイド部分のライトを取り除き、開口部を大幅に拡げて冷却性能を強化。さらにバンパーサイドにアウトレットを設けて熱を放出するようにしていることが見て取れる。

また、写真では分かりにくいかも知れないが、中央部分のメッシュも、ラリーでの経験を踏まえて軽量化と強度を両立するスチール製のものに変更してある。加えて、左右のロアースポイラーが分割構造に変更されているのは、なんと石などの飛来物によって損傷した時の修復作業を容易にし、費用も抑えるためだというから、これは本当に競技に使ってみなければ出てこない発想だと恐れ入った。



しかし、見た目の進化度合いがもっと大きいのは内装である。写真でご覧の通り、もはやフツーのヤリスとはまるで異なる、競技車両さながらのコクピットとなっている。ドライバー側へ15度傾けられた操作パネル・ディスプレイから、25mm下げられたドライビング・ポジション、それに合わせて調整されたステアリング位置に至るまで、すべてが競技に使って得られた知見に基づいて再設計されているというのである。

そして、今回の進化型でもっとも注目されるのは、1.6リッター直3ターボを搭載するRZに、これまでの6段MTに加えて、新開発の8段ATが追加設定されたことだ。「モータースポーツの裾野を拡げたい」というモリゾウこと豊田章男会長の想いを受けて、レーシング・ドライバーたちが実際にスーパー耐久などに参戦しながら作り込んできたというから、その出来映えに興味津々だ。




私なら断然ATが速い!

まずは袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースを6段MTの旧型と新型で乗り比べた。コースインして最初のコーナーを曲がればすぐに分かるくらいに、新型は車両の剛性感が増している。その一方で、ハンドリングもよりシャープな設定になっているようだったが、操縦安定性が高く、フツーに走っている限りは何事も起こらないという安心感がある。

とはいえ、この日はあいにくの雨で路面はセミウェット。ちょっと攻めた走りをすれば、すぐにリアが滑り出す素振りを見せることもよく分かった。雨のサーキットを走る時には、本当にすべてに神経を尖らせていないと痛い目に遭うと、これまでの経験でよく分かっている。

今回、外観以上に大きく変更されたのが内装だ。これまでヤリスと基本は共通だったインパネが、まるで競技車両のようなドライバー中心の専用コクピットになった。スイッチ類の配置も含めて視認性や操作性を徹底的に追求。


ドライビング・ポジションも25mm下げてあるほか、写真のATモデルでは現行のCVTモデルであるRSに比べてシフト・レバーを75mm上昇させて、操作性の向上を図っている。

正直なところ、この日、8段ATモデルに乗り換えた時には、思っていなかったくらい緊張感から解き放たれ、肩の荷が下りた気分になったのに自分でも驚いた。シフト操作が減るだけで、こんなに運転がラクになるとは。その分ほかの操作に集中できる上に、そのATのデキが素晴しく、Dレンジに入れたままでもサーキットでなんら不満を感じないくらいにシフトが巧みなのだから、私は断然ATを推したいと思った。

そしてその思いは、この後ダートで決定的になった。正直なところ、MTでは忙しすぎてとてもじゃないけど思うようになど走れない。間違いなく私はATで走った方が数段速いし楽しい。自慢じゃないけど……。

文=村上政(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦



(ENGINE2024年4月号)

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