2024.05.26

CARS

「スポーツ系以外のハッチバックで1台選べといわれたら、僕はこれ」 モータージャーナリストの嶋田智之がDS4ほか5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの嶋田智之さんが5台の輸入車に試乗!

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ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ「加減が絶妙」

うわっ!なんてサウンドなんだ……と鳥肌がたった。この独特のリズムで複雑なハーモニーを聴かせるV10サウンドはこれまで何度も耳にしているが、やたらと刺激的。官能的・扇情的に感じてしまったのは、ひさびさだったからというより、BEVやダウンサイジング系に代表される無音・静音の時代に、知らず知らず耳と心が慣らされてしまっていたからなのかも。いや、このサウンドだけでイケる。内燃エンジンばんざい!

640psの後輪駆動というのも、えらく刺激的でいい。もうこれ以上速くなくていいと思えるだけの加速力とスピード。加減を少し誤っただけで冷えた路面をあっさり見捨てそうになるパワーとトルク。けれど峠のレベルでもダウンフォースがしっかり効いて、めちゃめちゃスリリングではあるけど、過剰な怖さのようなものは微塵もない。その加減が絶妙。このうえない。だからこのうえない快感。素晴らしく楽しいのだ。

年齢から来るものなのか、いつしか速さの追求に若い頃ほど興味が持てなくなってたけど、はっきりと思い出させられた。まずいな……これは本当に楽しい。




マセラティ・グレカーレ・トロフェオ「このクルマ1台あれば」

絶品といえるGTカーを作るのが世界一巧みなのはマセラティなんじゃないか?と、SUVに試乗して感じさせられたのは、とても新鮮な体験だった。

マセラティにはその名も“グランツーリスモ”という麗しいスポーツモデルが存在するが、セダンやクーペに優れたGTカーがあるのと同様、SUVにだってグランツーリスモを体現するモデルがいくつかある。その中でピカイチを選ぶなら、僕はグレカーレだと思うのだ。とりわけネットゥーノV6を積んだ“トロフェオ”がいい。電動化の時代に突入してから開発された22年ぶりの自社設計ユニットは、加速力も高速巡航性能もスーパーカーの領域、そして何よりサウンドとフィーリングは感嘆符付きで語りたいレベルにある。それらを味わいながらのロング・ドライブが、退屈な時間になるはずもない。何せひさびさに走らせた今回の短時間試乗では、もっと走りたくて身悶えしたほどだ。

当然ながらシャシーも快適性とスポーツ性を見事に併せ持っている。このクルマ1台あれば、人生という長い旅路が間違いなく歓びに満ちたものになるはずだ。




メルセデスAMG EQE53 4マチック・プラス SUV「間違いなく堕落する」

メルセデスはどこまで行ってもメルセデス、BEVになってもメルセデス。そこだよな、とあらためて感服させられた。その一貫性というか、クルマ作りの中心軸にある哲学の強大な存在感。それがすべてを支えてるのであり、そこにユーザーは惹かれるのだな、と。

メルセデスの“らしさ”とは、いかなるときもじんわり“いいクルマだな”と感じさせて、乗り手をいい意味で“いい気”にさせること。僕はそう感じてる。原動機が何であっても、そこに相違はいっさいない。

このクルマもシステム最大で750Nmもあるのに、それを怖いほどの加速にはやればできるくせに結びつけず、すさまじく滑らかでキメの細かい洗練された走りとして表現している。いつしか原動機が何かなど頭から消え去って、低速域ではふんわりと優しく高速域では重厚にして安定感抜群の快適な乗り心地、それにいかなるときも思いどおりに動いてくれる走りの忠実さに、思わず“いいクルマだなぁ”と口元が弛んでる。

こういうクルマに日々乗ると人間は間違いなく堕落する。僕も内心、このクルマで堕落したいと感じてる。

文=嶋田 智之

(ENGINE2024年4月号)

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