2024.05.22

CARS

「弾ける痛快さと実用性を両立したホットハッチの記念碑」 モータージャーナリストの高平高輝がルノー・メガーヌR.S.ウルティムほか5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの高平高輝さんが5台の輸入車に試乗!

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シボレー・コルベット「世界一売れている」

世界一のご長寿スポーツカーであるコルベット(初代のデビューは1953年!)が現行C8シリーズでミドシップに生まれ変わった時には本当に驚いた。でも伝統的なFRコルベットのファンは受け入れるのか?と心配したが、依然として新型も世界一売れているスーパースポーツカーである。C8コルベットはミドシップされる6.2リッター V8エンジン以外、オール・アルミ・ボディもサスペンションも8段DCTもすべて新開発で、さらに史上初めて最初から右ハンドル仕様も用意されている。すでによりワイドなボディに自然吸気5.5リッターDOHCV8を積む高性能版Z06も登場済みだが、スタンダード・モデルでもその実力は世界レベルである。大排気量V8の余裕は街乗りでも明らかで、絞り出すのではなく知らないうちにパワーが滑らかにあふれ出す感覚は独特で、いっぽう回せば緻密にリニアに盛り上がっていくのは自然吸気ならでは、である。いささか劇画的なスタイルやインテリアには好き嫌いがあろうが、ゆっくり流しても飛ばしても洗練されている。きっとスポーツカーの歴史に残る一台となるだろう。シボレーの、米国の底力を体感してほしい。




フェラーリ296GTS「フェラーリにしかできない」

ステアリングに一切のスイッチを付けないのがマクラーレン流だとしたら、最初から最後までステアリングを握ったままで操作できるのがフェラーリ、いやF1流というべきか。無数のモード切り替えスイッチだけでなく(それにしてもちょっと煩雑ではないか)、今や始動ボタンさえスポーク上のタッチ・スイッチに置き換えられているのだから、かつてステアリングやペダルの位置関係が不自然とこぼしていた昭和オヤジは、ずいぶん遠くにきたもんだ、と感慨にふけること暫し。これまでのV8ミドシップ・シリーズに代わるPHEVの新世代モデルが296、GTSは巧妙なリトラクタブル・ハードトップを備えたスパイダー版である。時代の要求とはいえ、モーターと電池の搭載を考慮してコンパクトさを重視した3リッター 120°V6ツインターボをいちから起こすなんてフェラーリにしかできない芸当だ。296GTBはF8トリブートより140kg、このGTSはさらに70kg重いというが、システム最高出力830psは伊達ではなく0-100km/h2.9秒と不変。そしてもちろん切れ味抜群、しかも強さとしなやかさも併せ持つ名刀である。




ルノー・メガーヌR.S.ウルティム「有終の美」

みんな大好きルノー・スポール(R.S.)がアルピーヌに統合される形で幕を閉じることはすでにご存知の通り。最後の正統派ホットハッチとも言うべきメガーヌR.S.もスタンダード・モデルは既に終了。有終の美を飾るのが正真正銘、最終特別モデルのメガーヌR.S.たる、その名も“ウルティム”である。ベース・モデルはR.S.トロフィーで、ほぼ一年前に国内導入が発表された。R.S.の設立年にちなんで世界で1976台の限定モデルである。内外装の特別仕立てを除けば中身はトロフィーとほぼ同じ。サスペンションは硬派な方のシャシー・カップで、エンジンはこれまで通りの1.8リッター 4気筒ターボ、後輪操舵の4コントロールとHCC付きダンパーも同様。ただし19インチ・ホイールはさらに軽量のフジライトとなり、タイヤはブリヂストン・ポテンザS007を装着。ニュルブルクリンク北コースでFF最速タイムを何度も書き換えたロラン・ウルゴンのサイン入り記念プレートも付く。弾ける痛快さと実用性を両立したホットハッチの記念碑だ。

文=高平 高輝

(ENGINE2024年4月号)

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