2024.06.14

CARS

「車線変更するだけで感じられるリニアな身のこなしに嬉しくなる」 モータージャーナリストの山田弘樹がロータス・エミーラV6ファースト・エディションほか5台の注目輸入車に試乗!

モータージャーナリストの山田弘樹さんが5台の注目輸入車に試乗

全ての画像を見る
モータージャーナリストの山田弘樹さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アウディA8 60TFSI eクワトロ、フィアット・ドブロ、ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ、ロータス・エミーラV6ファースト・エディション、プジョー408GTハイブリッドに乗った本音とは?


強い個性


なんでガイシャって、こんなに楽しいのだろう?今回ドブロにEPC会員と試乗し、道中あれやこれやと語り合った。もしイタリア人がその場を見たら、ガチの商用バンのハンドリングや乗り心地を、嬉々として語る日本人の姿はかなり滑稽に映ったに違いない。つまりガイシャには、セダンやSUVやスポーツカーやミニバンといった“ジャンル”を選ぶ前に、文化の違いを選び楽しむ深みがあるのだ。多くのメーカーがアライアンスを結びグループ化し、基本コンポーネンツを同じくするクルマが増えた。さらに言えば電動化が進んでエンジンの個性がなくなれば、走り味はどうしても似てくる。しかし、だからこそガイシャを作るメーカーは、なんとかして強い個性を打ち出そうとしてくる。「他人と同じは、絶対イヤ!」。それが国産車にはないガイシャの基本であり、そのエネルギーをもらうことで私たちは、元気になれるのだ。




アウディA8 60TFSI eクワトロ「絹の走り」

フラグシップモデルの威厳を備えたその大きなボディを、どんなシチュエーションだろうと極めてまろやかに支え続けるエアサスと、オートモードのダンピング制御にまず感服。システム出力449ps/700Nmを発揮する3.0リッター V6ターボとモーターの組み合わせはロケットのような加速こそないけれど、そのレスポンスで走りに軽やかさを与えてくれる。そして止めはクワトロAWDと後輪操舵が、制御の恩恵すら感じさせないほど自然にヨーとスタビリティをバランスさせる。ただしその走りはあまりに絹ごし過ぎて、チョイ乗りしただけだと刺激が少なすぎるとも言える。仕事でもプライベートでもいいから、一日に700kmくらいの距離を一気にぶっ飛ばしてこそ、このクルマの凄みが身に染みるのだろうと考える。だが残念ながら、日本にそうした道がない。なんてもったいないんだろう!

そういう意味ではゆっくり走らせてもインフォテインメントにエンタメ要素が強いBMWやメルセデスの方が、我々日本人にはわかりやすいかもしれない。だが、その淡麗さこそがアウディの魅力でもある。




フィアット・ドブロ「とっても楽しい!」

ステランティス・グループで基本設計を共用する商用バン・シリーズの中で、一番最後に出てきたドブロ。その走りはひとことで言うと、とっても楽しい。ショート・ホイルベース同士で比べるとアクティブ・ムーバー色が強いプジョー・リフターよりも断然乗り心地が良く、ふんわりコンシャスなシトロエン・ベルランゴよりもハンドリングが正確で直進安定性が高い。ジャーナリスト同士の会話だと「最後に出てきたから、うまくまとまっただけでは?」なんて意見もあったが、ともかく両車の中間的な味付けには非常に好感が持てた。それはまさにフィアットらしいコシのある足まわりがもたらす乗り味であり、高速道路の巡航はのんびりクルーズで幸せな気分になれる。そしてワインディング・ロードでは、予想以上の粘り腰で、高い重心を支えながら気持ち良いコーナリングを披露してくれる。1.5リッターディーゼルターボは決してパワフルではないけれど、8段ATのギア比を使ってときに懸命に、ときにトコトコ走らせていると、「これでいいかな」と思えてしまう。国産ミニバンでは得られない何かが、ドブロにはある。




ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ「クラブレーサー!」

ウラカン・テクニカの魅力は、その美しいボディにSTOと同じ640PSの5.3リッターV10エンジンを詰め込んで、リア駆動で走らせるパッケージングにある。当然そのダウンフォースはSTOよりも少ないから、見方によってはテクニカの方が過激なモデルと言えるかもしれない。しかし実際の走りは、シャシーの作りがとても真面目で、安定感が非常に高い。足まわりは決して柔らかいとは言えないが、その分操舵時の剛性感は高く、応答性がリニアだ。大排気量の自然吸気エンジンは扱いやすく、そのトルクをリアサスがガッチリと受け止めて、タイヤへのグリップを引き出してくれる。もちろんこうした理想的なミッドシップの走りの陰には、スタビリティ・コントロールやトルク・ベクタリングの助けが大きく働いているのは事実であり、安定制御を解除して臨めば操縦の難しさが顔を出してくる。しかしそれを然るべき場所で、少しずつ自分のものにして行く楽しみがそこにはある。STOほど派手な外観はしていないけれどウラカン・テクニカは、とびきりピュアなスピリットを持ったクラブレーサーだ。




ロータス・エミーラV6ファースト・エディション「とても味わい豊か」

AMGと共同開発を行った直列4気筒ターボと8段DCTの組み合わせが間に合わなかったのは残念だったが、既存の3リッターV6スーパーチャージャーと6段ATの組み合わせは、それを忘れさせてくれるほどマッチングが良かった。ご存じの通りエミーラは、アルミ製バスタブシャシーを使うロータスとしては一番ワイドで大きい。車両重量も、1500kg近くある。しかしこのワイド化によって得られた適度な室内空間の広さと、ロータスならではのしなやかな足まわりによる乗り心地の良さ、そしてV6エンジンの豊かな低速トルクをトルコンATで走らせるクルージングは、とても味わい豊かなのだ。車重の重さも良い方向へ利いているのだろう、段差をひとつ乗り越えるだけでその収まりの良さに感心し、車線変更するだけで感じられるリニアな身のこなしに嬉しくなる。そしてアクセレレーターの開度を上げて行くと、ブーストと共にスポーツカーらしさが色濃くなり出し、お楽しみの時間が始まる。タイムを狙うような走りを望むなら6段MTの方がいい。しかしV6エミーラのキャラクターには、6段ATが抜群に合うと思う。




プジョー408GTハイブリッド「Z世代の大好物」

フレームレスのグリルと牙型LEDデイライトが織りなす新世代のプジョー・フェイス。バキバキにエッジの効いたキャラクター・ラインで5ドア・ファストバックのクロスオーバーをまとめあげた姿を見て、「これはZ世代の大好物だろうな」と思った。古い世代は受け付けないかもしれないが、それでいいのだ。さらに面白いのはこのギラギラしたデザインに対して、走りがどこまでもクールなところ。1.6リッター直列4気筒ターボに1.4kWhのバッテリーとモーターを組み合わせたPHEVは、出足からとっても静か。走行中の充電ができないから電池がなくなるとエンジンは掛かるが、それでも静か。駆動用モーターの電力だけは常に確保されているから、ふとした加速も滑らかだ。この動力性能に対して、乗り心地は超フラット。ハンドルを切れば思い通りに曲がって、常用域では文句の付けようがない。ただこの乗り心地を得るためかダンパー伸び側の押さえが緩く、速度域が高くなると、バネ下のタイヤが車体をあおる。また操舵していくと、カクッと曲がり込むところがある。でもそんな走り、Z世代はしないかな。

文=山田 弘樹

(ENGINE2024年4月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement