2024.08.30

CARS

4.8リッターのV8自然吸気エンジンのカイエンGTSをマニュアルで楽しむ! 見た目も走りも超硬派【エンジン蔵出しシリーズ】

ポルシェ・カイエンGTSの6MTモデルに試乗(アーカイブ)

全ての画像を見る
ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年の7月号に掲載されたポルシェ・カイエンGTSのリポートを取り上げる。ポルシェ自ら、“飛び切りスポーティなカイエン”と謳う超硬派バージョンのGTS。ターボ・ルックのデザインに固められた足回り、パワーアップされたエンジンを持つそれはどんなSUVだったのか?

advertisement



まるでアメフトの選手みたい

東京・目黒にあるポルシェ・ジャパンが入っているビルの地下駐車場で対面した試乗車は、派手な専用色のGTSレッドに身を包んでいた。大きく口を開けたフロントのエア・インテークに、21インチの巨大なホイール&タイヤ、リアには2枚羽根の巨大なウイングまで備えたそれは、ただ停まっているだけで、すでに見る者を威圧するかのような独特の迫力をあたりに発散していた。

インパネのデザインは基本的にSと同じだが、シートはアルカンタラとレザーのコンビからなる専用スポーツ・シート。リアにもサポート部が張り出したスポーツ・シートを装備する。


ボディ同色の飾りがついたハンドルを引いてドアを開け、ストーン・グレーの内装飾を持つ専用スポーツ・シートについて、アッと驚いた。なんと試乗車はクラッチ・ペダルのついた6段マニュアル・モデルだったのである。いったい日本でカイエンのMTモデルに乗る人が何人いるのだろう、と頭の隅で考えながら、さっそく試乗開始。まだ100メートルも走らないうちに、これは男のカイエン、ハード・コア・カイエンだぁと叫びそうになった。

カイエンSより標準の金属バネ仕様で24、オプションのエア・サスペンションを装備した試乗車の場合は20低められた足まわりは、とにかくハッキリとわかるほど硬く、ちょっとした操作に対する動きのすべてが俊敏である。カイエンSの自然吸気4.8リッターV8直噴をベースに、吸気システムに改良を施して20ps増強されたエンジンは、一番下のトルクこそやや細めだが、2000回転もまわせばモリモリとトルクが沸き上がりはじめ、3000回転を超えたあたりからは、やや湿った感触を伴いながら気持ちよく吹け上がり、2.3tの巨体をグオンと押し出すように加速していく。

図体はデカイが運動神経は抜群の重量級のアスリート。まるでアメリカン・フットボールの選手みたいだ。



やがて、高速道路に上がり、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)のスイッチをノーマルからスポーツに切り替えると、車高が下がり、足はさらに硬くなって、エンジンの制御マップがよりアグレッシブな設定に変化した。すなわち、ハード・コア中のハード・コア・モデルに変身。前を行くクルマたちをいささか下品にオラオラと蹴散らしながら、怒濤のように突進していく。

跳ねこそしないものの、突き上げは極めてきつい。路面の荒れが、そのまま身体に伝わってくる感じだ。ステアリングを握る者にとっては、そんなダイレクト感が気持ち良くもあるが、同乗者にはお気の毒としかいいようがない。PASMをコンフォートにすれば、まあ許容範囲か。


曲がるのも得意科目

だが、このハード・コア・カイエンが凄いのは、決して高速道路の上だけではなかった。峠道に連れ出すと、曲がるのも得意科目のひとつであることを見せつけてくれた。ブレーキを残しながらコーナーに進入していくと、グッグッとノーズが内に入り、少しお尻を流し気味にして巨体が向きを変えていく。コーナリング中でも、アクセレレーターのオンオフで、面白いようにノーズの向きが変わる。しかも、試乗車にはアクティブ・スタビライザーを使ったオプションのPDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール・システム)が装備されていたおかげで、コーナリング中もほとんどロールすることがなかった。



最終減速比がノーマルより低められていることもあり、加速はカイエンSよりずっと鋭い。6段MTモデルの0‐100km/h加速は6.1秒。Sよりコンマ5秒も速い。

音もSとはかなり違っている。スロットルを全開にして加速していくと、5000回転を超えたあたりでブオオオオオと風が突如吹き出したかのような雄叫びを上げる。一瞬、何が起こったのかと驚くほどの音だ。

オンロード志向のSUVだなんて、いささか形容矛盾のようにも思えるが、そもそもカイエンでオフロードを楽しみたいなんて人が、いったい何人いることか。都会のジャングルを行くのにオフロード用の装備はいらない。ならば、こんなシャコタンのハード・コア・カイエンだっていいではないか。少なくとも私には、見た目でも走りでも、これがベスト・カイエンだと思えた。

文=村上 政 写真=小野一秋

■ポルシェ・カイエンGTS
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4795×1955×1675mm
ホイールベース 2855mm
車両重量 2300kg(6MT)/2350kg(6AT)
エンジン形式 アルミ製V型8気筒DOHC32バルブ
排気量 4806cc
ボア×ストローク 96×83mm
最高出力 405ps/6500rpm
最大トルク 51kgm/3000-5000rpm
トランスミッション 6段MT/6段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル(エア・スプリング)
サスペンション(後) マルチリンク/コイル(エア・スプリング)
ブレーキ (前後とも)通気冷却式ディスク/アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ (前後とも)295/35R21
車両本体価格 1020万円(6MT)/1068万円(6AT)

(ENGINE2008年7月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement