2024.03.23

CARS

新型GRヤリスを深掘り、パワートレイン篇 新開発の8段ATはマニュアル派も頭を悩ます高機能

2024年3月21日にマイナーチェンジを受けた新型「GRヤリス」は、「RZ」と「RZ “High-performance”」のほかに、モータースポーツ参戦を想定した競技向けの「RC」も設定されている。また同時に、2台の特別仕様車、「GRヤリスRZ“High performance・Sébastien Ogier Edition」(ハイパフォーマンス・セバスチャン・オジエ・エディション)と「GRヤリスRZ“High performance Kalle Rovanperä Edition」((ハイパフォーマンス・カッレ・ロバンペラ・エディション)の予約受け付けも開始された。

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どれほどまでに進化したのか?

ここでは特別仕様車と競技向けいわゆるモータースポーツのベース車を想定したRCを除いた、販売の中心となるRZとRZハイパフォーマンスを新型とマイナーチェンジ前モデルを比較し、新型がどれほど進化したのかを探っていきたいと思う。その第1弾として深掘りするのはパワートレインだ。



速さだけでなく裾野を広げる

新型のトピックスは8段ATである「GAZOO Racing Direct Automatic Transmission」(GR-DAT)が追加されたことだ。マイナーチェンジ前のモデルでは、CVTが搭載されていた前輪駆動で1.5リッター・エンジンを積むエントリー・グレードの「RS」以外、1.6リッター直3ターボの4WDはすべて6段MTのみだった。

しかし、モリゾウこと豊田章男会長の「より多くの方に走る楽しさを提供し、モータースポーツの裾野を広げたい」という想いと、また、モータースポーツの世界ではタイムを短縮するためにセミAT(機構的にはMTと同じものを含む)など2ペダルが主流であることから、2ペダルのGRヤリスが誕生した。

GR-DATはレースでMT車と同等に戦えるポテンシャルを備えたATとして開発。2ペダルを用いることでよりステアリングやアクセレレーター、ブレーキの操作に集中できることを望むユーザーだけでなく、AT限定免許であっても本格的なスポーツ走行が楽しめるようになったことも朗報である。もちろん、6速MTも引き続き設定されていて、公道からサーキットまでシーンに応じて、意のままの変速を楽しむことが可能だ。



GRカローラと同等

2ペダルのAT追加と同時にエンジン出力とトルクの向上も行われた。こちらも2ペダル同様、モータースポーツでの競争力向上を狙ったものだ。最高出力は272ps(200kW)から304ps(224kW)へと32ps(24kW)アップ。同時に、最大トルクも370Nmから400Nmへと30Nm増強された。最高出力はGRカローラと、また最大トルクはGRカローラ・モリゾウエディションと同等だ。8段ATのGR-DATは6MTより多段であることを活かしたクロスレシオを採用することで、より美味しい回転域をキープできるようになり、タイム短縮に寄与することになる。



冷却性能にも十分配慮

また、エンジンの高出力化とGR-DAT追加設定に伴い、必要となる冷却性能を高めるために、GR-DAT搭載車にはATFクーラーが標準装備されている。さらに、モータースポーツ参戦が考慮されたサブ・ラジエーター、クール・エア・インテーク、インタークーラー・スプレーをセットにした「クーリングパッケージ」が新たなメーカーオプションとして設定された。

高出力化で気になるWLTCモード燃費(RZ)は、従来の13.6km/リッター(6段MT)から新型のGR-DAT(8段AT)は10.8km/リッター、iMTである6段MTは、12.4km/リッターといったように、パワー&トルクアップの影響を受けている。とはいえ、GRヤリスを指名するユーザーなら購入を躊躇する要素にはならないだろう。



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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